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05 アヴリルの手記




異世界 十日目


 数え間違えてなければ、多分十日目。

 いきなりみんなで、ダンジョンってところに行かされた。

 私はリヒト、ミユキ、カオリ、チサトの四人と一緒のパーティに。他の六人の勇者がもう一つのパーティを組んで、別々でダンジョンを攻略させられた。


 魔物との命のやり取りは、みんなのストレスになったみたい。帰ってきてけっこう時間は経ったけど、まだ調子が悪そうにしている。

 真の勇者の私が、みんなを引っ張っていかなくちゃ!


 そういえば、ダンジョンでは急に倒れ込んで押しつぶそうとしてくる壁の魔物がいた。ひっそりと周囲の音を訊いて、近づいてきた人に向かって倒れ込む魔物なのよ?

 これって、コトワザの『ウォールにミミアリ』ってことじゃない?


 だからジョージとメアリーも居るんじゃないかって思って、リヒトに訊いたの。ウォールにミミアリが居るなら、ジョージにメアリーはどこにいるの? って。


 なんでか分からないけど、笑われちゃったわ。『ジョージにメアリー』じゃなくて、『障子に目あり』だって

 ジャパニーズモンスター、ヨーカイに障子に目がついたやつなんかいたかしら?

 人を押しつぶす壁のヨーカイが居るのは知ってるんだけど。


 それで、私たちの話を訊いていた教導役の騎士さんが『勇者様の世界では、このような魔物をウォールミミアリィと呼ぶのですか』なんて言ってたから、その通りって教えてあげた。

 特に決まった名前の無い雑魚魔物らしいから、これからは騎士さん達の間ではウォールミミアリィって呼ばれるようになるのかもね。




異世界 十一日目


 ダンジョンで実戦を経験したから、もう魔王軍と戦いに行かなきゃいけないみたい。

 何でも、今の魔王軍を率いる魔王は、歴代でも最強の魔王って言われているらしいの。

 チートスキルみたいなレベルの魔法を幾つも使いこなす、マジでヤバい魔王なんだって。


 猶予が無いから、前線に行く道中で野生の魔物を倒してレベルアップ。そのまま魔王軍と戦ってレベルアップ。魔王からは逃げて、とにかく魔王軍を倒しまくってレベルを上げるのが私たちの仕事。




異世界 十三日目


 前線を目指しながらの魔物狩りをする旅。その途中で、ウェインズヴェールっていう街に立ち寄った。

 腐った豆みたいなものを食べてて、これって日本食の豆腐ってやつだよね? って思って、つい街の人に話しかけちゃった。


 日本食の話をたくさんしてたら、すっかり気に入られちゃって、豆腐を作っている人のお家に泊めてくれることになった。

 もちろん仲間の四人も一緒。


 で、なぜかリヒトに怒られちゃった。これは豆腐じゃないって。なんで? 豆が腐ってる食べ物だから豆腐でしょ? 漢字の通りじゃん。

 その後も、リヒトがプリプリ怒りながら色々言ってきたけど、難しくて半分も分からなかった。

 でも、ナットーって食べ物がコソーキンっていう人の発明品だってことは分かったわ!




異世界 十四日目


 私が日本食のことを教えてあげたはずなのに!

 街の人が、みんなリヒトに質問するの! もう!


 豆腐用の豆のことや、他の農作物のこと。それらを使った食文化のこと。

 色んな話をリヒトとしていたわ。


 これからウェインズヴェールは、勇者様から授かった知識で発展していくんだ、って街の人が言ってた。


 知識チートってやつだわ!

 私がやろうとしてたのに、リヒトに横から掠め取られた! くやしい!


 って、私がリヒトに文句を言ってたら、豆腐みたいな食べ物の名前を決める権利をくれたの。もちろん、腐った豆なんだから豆腐って名付けたわ!




異世界 二十四日目


 先に行っていた、六人の勇者の中の一人が死んだ。

 騎士さまの予想に反して、魔王が現れたんだって。

 死んだ一人は、他の五人を逃がすために犠牲になった。


 ジャパニーズヤンキーって感じで、ちょっといけ好かないやつだったけど、でも、死んでほしくなんてなかった。


 私は、真の勇者なんだ。

 もう、誰も死なせたくない。




異世界 三十日目


 誰にも死んでほしくないから、魔王軍と戦ってレベルを上げる毎日。

 一人が死んでから、明らかにみんなの動きが悪くなってる。


 危ないからフォローしてるうちに、私のレベルが一番高くなっちゃった。


 そういえば、当たり前すぎて書いてなかったけど、私のスキルはアレンジ。敵味方関係なく、スキルの効果をアレンジして発揮できる能力。

 最初は、味方のスキルを強化したり、有効な形に変化させたりして戦ってた。


 でも途中で気づいたわ。このアレンジってスキル、元になるスキルを持って無くても、私が知識として知ってるだけで再現出来るんだって。


 もちろん、アレンジで発動できる効果は一つだけだから、無限にスキルを重ねがけ出来るわけじゃない。

 でも、状況に応じて色んなスキルを使えるのはとても強い。


 リヒトの鑑定も、ミユキのイラストレーションも、カオリのアイテム召喚も。チサトの拳帝だって、アレンジしたものだけど自由に使える。

 死んじゃった勇者が使っていたスキル『鉄壁』も使える。


 みんなの力を借りて、私はみんなを守る。

 だって、私が真の勇者なんだもの。

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