表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
326/366

13 帰り道




 龍神との対話を終えた私たちは、龍神洞を後にしました。


 里に戻ると、姫巫女は訝しむような視線と共に、どうせ龍神様にお会い出来なかったのだろう、と言って、嫌味をつらつらと並べ立てました。


 しかし、シャーリーさんはそれにはっきりと言い返します。


「だったら、何なんですか。貴女に何か関係ありますか?」


 言い返されることを想定していなかったのか。姫巫女は何も言い返せず、口を噤みました。


 その後は里長の下へと向かい、龍神と対話出来たことを報告しました。

 こうして里での用事を終え、帰る時が来ました。


 里長の家を出ると、サヴァンさんが待っていました。


「シャーリー。話がしたい」


 その言葉に困惑しながらも、シャーリーさんは私の方を一度見てから頷きます。


 そのままサヴァンさんに連れられて、シャーリーさんは実家へと一度帰りました。

 私はしばらくの間、シャーリーさんの実家の前で用事が終わるのを待ちます。




 小一時間ほど経った頃、ついにシャーリーさんは家から姿を見せました。

 その顔にはうっすらと涙の跡が残っており、しかし笑顔を浮かべていました。


 また、シャーリーさんを見送る為なのか、サヴァンさんとシエラさんが一緒に家から出てきます。

 三人は互いに、何かを確認するかのようにじっくりと抱きしめ合います。


 そこに言葉はありませんでしたが、シャーリーさんにとっては十分なようでした。

 晴れやかな様子で、家族から離れるシャーリーさん。


「お父さん、お母さん! 行ってきます!」


 笑顔のシャーリーさんを、二人もまた笑顔を浮かべて見送ります。


 三人が、家でどのような会話をしたのかまでは分かりません。

 ただ、少なくともこれまでのすれ違いは解消されたのだろう、と安心出来る笑顔でした。




 里を出て、二人で乙木商事の輸送車両を残した場所へと向かいます。

 その道中、シャーリーさんから提案がありました。


「雄一さん。お互いに、敬語を使うのを止めてみませんか?」


 思わぬ提案の理由を、シャーリーさんは続けて語ります。


「私、気づいたんです。無意識のうちに、誰とも距離を取ろうとしてることに。踏み込むこと、踏み込まれることが怖かった」


 シャーリーさんの言葉に、私も気付かされます。

 私も同じなのでしょう。癖付いたから、という部分もありますが、元をたどれば他人と深く関わり合うことが怖かったからだったのだと思います。


「でも、お父さんとお母さん。それに龍神様とお話をして、変わりたい、変えたいって思いました。ちゃんと話をして、心の深い所まで知ってもらって。それが嬉しく思える人とは、もっと距離を詰めたいって思ったんです」


 シャーリーさんは言って、私の手を握ります。


「ねえ、雄一。よかったら、私のこと、有咲ちゃんみたいに呼び捨てにしてほしいな」


 私は、これまでの自分が恥ずかしい。


 大切な人だと言いながら、今まで通りという言い訳めいた惰性で、距離を詰める努力やお互いを分かり合う努力を放棄してきた。


 シャーリーさんが、いや。シャーリーが勇気を出して自分を変えたのなら。


 俺も、今、変わるべきなのだろう。


「そう、だな」


 俺は、シャーリーに意思を伝える。


「俺も、君を大切にしたい。今まで以上に。だから、シャーリー。これからも、よろしく」


 俺の言葉に、シャーリーは満面の笑みを浮かべた。


「うんっ!」


 この笑顔が、変わらぬように。

 俺もシャーリーのように、変わっていこうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マンガよもんが様にてコミカライズ連載中!
6mhv82sb21f83lsdkkow3af4fucd_1bmn_28e_35p_nrgt.jpg

マンガよもんが様へのリンクはこちら

小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナーcont_access.php?citi_cont_id=602222539&s


☆Narrative Worksの新連載!☆

異世界チーレム転生できたけど、ヒロインが全員ギャグ漫画の世界の登場人物なんだが?
著者:亦塗☆さくらんぼ



☆Narrative Worksの連載作品一覧☆

無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する-仕事が回らないから戻れと言われても今更もう遅い、SSS級冒険者として自由に生きていきます-
著者:桜霧琥珀

クラス転移に巻き込まれたコンビニ店員のおっさん、勇者には必要なかった余り物スキルを駆使して最強となるようです。
著者:日浦あやせ

盾持ち令嬢の英雄譚
著者:雨降波近

蒼炎の英雄-異世界に勇者召喚された少年は、スキル『火傷耐性』を駆使して成り上がる-
著者:稲枝遊士

吸血鬼な悪役令嬢に転生した私がSSS級国際指名手配犯となり最強チートスキルで婚約破棄王子や元クラスメイトの勇者などを倒していくお話
著者:稲枝遊士

ツルギの剣
著者:稲枝遊士

ゴブリン・コンバット-異世界のゴブリンに転生したので、地上最強の生物を目指してみようと思う-
著者:殿海黎

池袋ボーイズ(大嘘)
著者:亦塗☆さくらんぼ
― 新着の感想 ―
[一言] 今回のお話は何だか身につまされる話しでしたね。 自分も反省しました。 ありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ