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06 父の後悔




 シャーリーさんとの話を終えた私は、まずはサヴァンさんと話をしに向かいました。

 どうやら家の裏手で剣術の自主訓練をしている様子で、今は素振りをしているところでした。


「サヴァンさん」


 私は、サヴァンさんに呼び掛けます。

 すると素振りを中断し、こちらを向いたサヴァンさん。


「どうなされた、雄一殿」

「少し、お手合わせ願えませんか?」


 言いながら、私はそこらに置いてある訓練用の木刀のうち、普段自分が使うカランビットナイフに近いサイズのものを両手にとって構えます。


「ほう。雄一殿も戦いを?」

「ええ、まあ。スキルを使った搦め手が得意なので、剣術自体はそれほどでもないのですが」

「ご謙遜を。構えが堂に入っています」


 サヴァンさんも興味を示したようで、木刀の切っ先を上げて構えます。


「一手、宜しく頼みます」

「ええ、こちらこそ」


 こうして、私とサヴァンさんのスパーリングのようなものが始まりました。




 高すぎる私のステータスを大きく制限し、有咲から借りている『カルキュレイター』の力も最低限に制限して、それで私とサヴァンさんの立ち会いは五分か、少し私が有利なぐらいでした。

 今の制限付きでも私はSランク冒険者並みに戦えると自負しておりますので、おそらくサヴァンさんもそれぐらいの実力者なのでしょう。


 里の戦士のリーダーのような立場にあるのも納得です。


 やがてどちらからともなく剣を止め、立ち会いを終えます。


「ありがとうございました、雄一殿」

「いえ、こちらこそ良い運動になりました」

「娘は、良い戦士に嫁ぐことが出来たようですな」


 納得、あるいは安堵したようにサヴァンさんは言います。

 それを見て、私は一つ聞いてみることにしました。


「シャーリーさんを、とても大切に思っているのですね」

「ええ。可愛い一人娘です。幸せになってもらいたい」


 その言葉に、私は安堵します。

 やはり、サヴァンさんはシャーリーさんを愛している。


「直接、伝えてあげないのですか?」


 私が問い掛けると、難しい顔をしてサヴァンさんは答えます。


「私は、良い父親になれなかった。今更、そのような態度で接するわけにもいきません」


 やはり、すれ違いを起こしているようですね。


「私のような若造が口を出すのもどうかと思いましたが、一つだけいいでしょうか」

「む」


 顔を顰めるサヴァンさんに、続けて言います。


「それは、シャーリーさんから直接言われたのですか? 悪い父親だと。あるいは、今更構わないでくれと」

「いえ。ですが、あの子は私との会話を避けているようなので」

「直接聞いたわけではないんですね?」


 重ねて問われ、サヴァンさんは渋々認めるように頷きます。


「対話は、言いたいことを言い終えれば成り立つというものでも無いと思います。まずは、シャーリーさんに聞いてみてはどうでしょうか」

「聞く、ですか」

「シャーリーさんが何を、どのように思っているのか。サヴァンさんの想像ではなく、本人から直接聞かなければ分からないことも多いでしょう」


 きっと、言葉が足りなかったのでしょう。伝えるべきことは伝えたつもりだったのでしょう。

 例えば、今日のこと。


『外の暮らしはどうだ』


 あの質問が、サヴァンさんにとっては娘のことを心配している意思表示のつもりだったのでしょう。でなければ、こんな質問はしない、という理由で。


『そうか』


 あの返答も、サヴァンさんにとっては最大限娘を尊重したつもりで発した言葉なのでしょう。


 ですが、伝わっているかどうか。それは相手の話を聞かなければ分からないことです。


「サヴァンさんは、まずはシャーリーさんの思いをしっかりと聞き出して、ズレを修正するところから始めるのが良いんじゃないでしょうか」


 私の言葉に、サヴァンさんは答えを返しません。

 ですが思う所はあったのか、考え込む様子は見せてくれました。


 少しでも、いい方向に変わることを祈りましょう。

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