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05 家族関係




 シャーリーさんの部屋で二人きりになると、私はさっそく本題を切り出します。


「聞きたいのは、シャーリーさんの家族との関係についてです」

「そう、ですか」


 言うと、シャーリーさんは少しだけ躊躇うような様子を見せました。


「まずは、サヴァンさんとの関係についてです。親子関係は良好と言える状態でしょうか?」

「どうなんでしょう。お父さんは、あんまり私に興味を持ってくれないので」


 悲しげに、シャーリーさんは言います。


「昔からそうなんです。時々、簡単な質問はされるんですけど。それを聞いて、何か言ってくれることは無くて。叱られることも、文句を言われることもあまりないけど、褒められた記憶も無いんです。会話が続いたこともあんまりなくて。少しだけ、言いたいことを言ったらもう関係ない、って感じで。私は、お父さんがどう思ってるのかわからないんです」


 だから関係の良し悪しは判断できませんね、と、ごまかすように呟くシャーリーさん。

 その悲しげな様子に、こちらまで悲しい気持ちが伝染するかのようです。


 これ以上サヴァンさんとの関係を掘り下げるのもシャーリーさんには辛い話になりそうなので、次の話題に移ります。


「ではシエラさんとの関係は?」

「お母さんは、いつでも私に優しくしてくれました。里の誰よりもすごい、特別な才能を持って生まれたんだって」


 言葉は前向きなものでしたが、声色はどこか暗く、あまり良い感情を抱いていない様子。


「それに対して、シャーリーさんはどう思っていたんですか?」


 私が問うと、一息吐いてからシャーリーさんは答えます。


「私は、巫女のなり損ないなので。いつも励ましてくれるお母さんの期待に答えられないのが、ずっと辛かった」


 泣きそうな声で、シャーリーさんは言います。


「本当に私に、そんな特別な力があるなら。もっといろいろなことを上手にできて。巫女として認められたかもしれないのに。それが出来ないのが、なんだか、私がダメだから、優しいお母さんを裏切っているみたいで、ずっと苦しかったんです」


 一際悲しげに語るシャーリーさんの肩を抱き寄せ、背中を擦ります。


「辛かったんですね」

「はい。どうして私は、お母さんに何も返せないんだろう。大好きなのに。それが言葉だけ、形だけになったみたいで。私は本当は、お母さんのことを大事に思ってないんじゃないかって。いつも後悔と、自省ばかりで。悲しかった。そんな自分が、嫌だった」


 涙を流すシャーリーさん。

 その涙を拭いながら、私は考えます。


 きっと、いいや間違いなく。シャーリーさんとご両親は、お互いを愛し合っている。それなのにこんなすれ違いで悲しい思いをしなければいけないなんて。

 そんなのって無いでしょう。


 どうにか、シャーリーさんにご両親の思いを伝えられないでしょうか。

 表面的な言葉だけでなく。本心から愛しているのだと、シャーリーさんが信じられる何かが無いか。


 そんなことを、つい考え込んでしまいます。


 このまま何も知らないフリをして、龍神と対話してそれっきりというのは良くないでしょう。

 私は、シャーリーさんとご両親の思いを仲介する決意を固めました。

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