05 家族との休息
一通りの視察も終わり、私の家族が住まう為に建てられた屋敷へと帰ってきます。
ルーンガルド王国に本拠地があった頃は、コンクリート製の現代建築風の自宅でしたが、立地が大森林自治区というのもあり、今の屋敷は木材を使った日本家屋風の屋敷になっています。
妻たちにも異国情緒がありつつ落ち着ける雰囲気が良いと好評の新しい屋敷です。
「おかえりなさい、雄一」
私が帰ってくると、最初に出迎えてくれるのは有咲。
妻たちの中で決まり事でもあるのか、必ず出迎えは有咲が行ってくれます。
「ただいま、有咲」
「視察、どうだった?」
「どこも順調そうだったよ」
その後、有咲に視察した状況について話します。
有咲のスキル『カルキュレイター』は既に私の想像を絶するレベルで成長しており、私の報告も含め、様々な情報を仕入れては各所に正確な指示を出してくれます。
互いにスキルを共有する魔法陣を刻んでいるため、一応は私も同じスキルを使えるのですが。負担があるために常用は出来ないのと、その影響で慣れに違いがあるため、使いこなすことは出来ていません。
なので近頃の乙木商事の発展は、有咲の活躍無しではあり得なかったと言えるでしょう。
話しながら屋敷の居間に向かうと――まだ仕事中であるジョアンさんと沙織さん以外の、私の家族が全員揃っていました。
妻であるマルクリーヌさん、シャーリーさん、マリアさん、八色さん。なんやかんやあり、婚約状態の魔王ヴラドガリアさん。義理の息子と娘であるティオ君とティアナさん。養子となったローサさん。
そして一人、部外者ながらヴラドガリアさんに意地でも付きそうサティーラさんが居ます。
「皆さん、ただいま帰りました」
「おかえり、雄一殿」
マルクリーヌさんが最初に返事をしてくれます。
「雄一様、どうしたんですか? 少し表情が優れないみたいですが」
そして、マリアさんが私の様子を気遣ってくれます。
「涼野さんの冒険者パーティが、全員復帰するという話をしまして。難しいものだな、と」
私は今日あったことを簡単に要約して告げます。
彼女達は全員が自分の意思で復帰するのです。止める権利はありません。
ですが可能なら、冒険者をせずとも済むようにしたかった、という気持ちもあります。
「相変わらず、誰かの為のことで悩んでいるんですね」
シャーリーさんが寄ってきて、よしよし、と私の頭を撫でてくれます。
「パパ、がんばってる」
「パパ、優しい」
そしてティオ君とティアナさんが左右から私に抱きついて来ます。
それを受け止めると、ローサさんが続きたそうにこちらを見ているのに気付きました。
「ローサさんも、こちらにどうぞ」
「う、うんっ!」
私が呼ぶと、ローサさんも嬉しそうにこちらへ近寄ってきて、正面から抱き着きます。
三人を抱きしめていると、ヴラドガリアさんがそれを見て口を開きます。
「うむうむ。仲良きことは良いことじゃ」
「そうですか? 何だか邪な気配を感じますが」
ヴラドガリアさんの言葉を、サティーラさんが訝しみます。
まあ、確かにティオ君とティアナさんは私のお嫁さんになりたいと度々発言しているので、間違いではないでしょう。
その後、雑談をしているうちに風呂の準備が出来たということで、入浴に向かいます。
私と一緒に風呂に入る担当を妻たちでローテーションしているらしく、今日は八色さんが担当です。
屋敷の雰囲気に合わせて作った、木組みの立派な湯船に浸かっていると、後から八色さんが入ってきます。
「旦那様、お背中流しますっ!」
「はい。よろしくお願いします」
最初はこうして背中を流されることにも慣れませんでしたが、今ではある程度平常心で受け入れることが出来ます。
まあ、偶に平常心が失われるのはご愛嬌です。
入浴を終えて戻ると、仕事の連絡を受け取った有咲から話がありました。
「雄一。シュリヴァさんから連絡が来てたよ」
それは、私が頼んでいた重要な案件の連絡でした。
「内藤の遺体の、分析結果が出たって」
いよいよ、召喚者の謎に迫る時が来ました。





