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04 聖女の行方




 さて、次は沙織さんへの用事です。


「もうひとつ用事があるのですが、沙織さん」

「スンスンスン、あ、はい?」

「嗅いでないで、すこし真面目に話を聞いてくれますか?」

「分かりました」


 お願いすると、ちゃんと沙織さんは嗅ぐのを止めて一度離れてくれます。


「ルーンガルド王国から、行方不明の聖女について質問状が届きました」


 私が言うと、沙織さんはようやく真剣な表情をしてくれます。


「ついに、ですか」

「はい」

「じゃあ、こうしていられるのも終わりですね」


 寂しそうに言う沙織さん。

 ですが、私は首を横に振って否定します。


「いいえ。こちらもまだ聖女様を発見出来ていないという旨を返信しておきましたよ」

「えっ?」

「ですので、これからも側に居てくれますか、沙織さん」


 私が言うと、沙織さんは少しだけ涙ぐみ、そのまま笑顔を浮かべます。


「ありがとうございます、雄一さん」

「当然のことです。貴方はもう、私の妻なのですから」


 言って、私は沙織さんを抱き寄せます。


「ただ、王国が沙織さんの力を頼りにしているのは事実です。そして私が疑われているのも事実。なので、この問題は少しずつ解決していかなければなりません」

「はい」

「ゆっくりと、王国との間で妥協案を探っていきます」

「はいっ」

「なので、安心してください。絶対に、王国には帰しませんので」


 涙を流す沙織さんを、私は抱きしめたまま宥めます。

 沙織さんが泣き止むまで、そのまま沙織さんを抱きしめ続けました。




 その後、沙織さんが泣き止んだので話を続けます。


「一応、今後王国との取引材料を色々と用意してから沙織さんの存在について公表するつもりです。王国にとっては自国の利益の方が大事でしょうから、相応のものを用意すれば認めてくれるはずです」

「そうですね。王国が躍起になって取り込もうとしていたのは、治癒の力を持つ私よりも、戦う力のある三人の方でした。特に金浜君に固執していたので」

「ええ。とはいえ時期が悪い。戦後復興のタイミングなので、聖女という治癒能力の高い存在は政治的なアイコンとして便利に使えると考えているのでしょう」


 私の予想する、王国のスタンスを話に挙げます。


「なので、復興が落ち着いた頃に王国との交渉に入るつもりです。この話は金浜君にも通しているので、協力してくれるはずですよ。勇者として順調に、王国内で発言力を高めているようですし、力強い味方になってくれるはずです」


 最近の金浜君からの連絡や乙木商事の支社が拾ってくる情報から推察すると、間違いなく金浜君の地位は向上しています。

 単なる力ある一個人から、王侯貴族の一員として。順調に、段階を踏みながら足場を固めていっているようです。


「ですので、今は安心してここに居てください、沙織さん」

「はいっ!」


 嬉しそうに、笑顔で頷く沙織さん。

 こうして笑ってくれるなら、王国を相手に立ち回るのも悪くはありませんね。

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