表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
308/366

02 三馬鹿




 開発中の土地を見回った後は、すでに施設の建築の始まっている場所へと視察に向かいました。

 ここでは力作業が多いため、警備部門から一部の人員が出向しています。


 そして同時に、内藤組との戦争で捕虜となったとある召喚者三人もここで働いています。

 また、監視の意味で実力のあるジョアンさんが三人の指揮をしています。


 今回は、その様子を見る為もあってここに来ました。


「ほーら、次はあっちの資材をここまで運んできて! 三人とも、休むのはまだ早いからね!」


 声を上げて、三人を指揮するジョアンさんが真っ先に見つかりました。

 そして近くには、視察の目的でもある三人の召喚者がぐったりとしています。


「ち、ちくしょう。人使いが荒すぎるっつうの」


 一人は野村浩一君。肩で息をしながら、倒れ伏した状態で悪態をついています。


「ここで立ち上がらなきゃ、漢じゃねぇっ」


 もう一人は神崎竜也君。野村君と同様に肩で息をしていますが、しっかりと立ち上がっています。


「はぁ、せめて指導者が屈強な男性だったらなぁ」


 最後の一人は加藤淳也君。膝をついた状態で、他の二人と同様に肩で息をしています。が、意識は全く関係ない方向へと逸れている様子。


 そんな三人とジョアンさんの方へと私は歩み寄ります。


「あっ、ダーリンっ!」


 そして真っ先に私のことに気づいたジョアンさんが飛びつくような勢いで抱きついて来ます。

 それを受け止めると、そのままジョアンさんが私の頬に頬ずりしてきます。


「今日はどうしたの? もしかして、俺に会いに?」

「それももちろんありますが、そこの三人の様子を見ていこうと思いまして」


 私は言うと、ちゃっかりお姫様抱っこを求めてくるジョアンさんを抱きかかえたまま、三人の方へと向き直ります。


「調子はどうですか、皆さん」

「こんなもん付けてんだ、最悪に決まってんだろ」


 野村君が真っ先に言い返しながら見せて来たのは、手首に付いているバングルのようなもの。

 実はこれ、私が作った特製のデバフバングル。これを付けることで彼らのチートスキルと身体能力を抑制。急に暴れられてもある程度安全に対処出来るようになっています。

 この影響もあって、彼らはちょっとした力仕事をするだけで疲れ果てていたというわけです。


「捕虜である以上、仕方のない処理だと思って下さい。皆さんが真面目に働いていれば、いずれ取れますよ」

「そうあって欲しいもんだな」


 皮肉っぽく言いながら、加藤君が言い返して来ます。


 しかし神崎君が何か言いたげな様子で、加藤君を見ます。


「どうしましたか?」

「いや、なんでも」


 中途半端に否定してから、神崎君は首を横に振ります。


「駄目だな、黙ってるってのも筋じゃねえし。おっさん、コイツら態度は悪いけど、俺も含めて感謝してんだよ」

「おい、竜也!」


 口を開いた神崎君を、野村君が制止しようとします。

 しかし、構わずに神崎君が話を続けます。


「正直、今の待遇が最高だとは思わねえ。けど、俺たち戦争に加担して、結構な被害を出したんだろ? だったら、最悪殺されたって文句は言えねぇ。それが、コイツを付けてりゃあ働くだけで許してくれるんだから、本当は感謝してんだよ」


 神崎君の言葉を、加藤君と野村君は否定しません。バツが悪そうにしていますが、神崎君の意見には同意しているようでした。


「だから、俺らは俺らなりにやり直す。ちゃんと働いて、真人間になれるって証明してやるよ。だからまあ、こいつら文句ばっか言ってっけど、許してくんねーかな」

「許すも何も、別に責めてはいませんよ。君たちは捕虜になった。だから私は監視している。それ以上でも、以下でもありません」

「けっ、めんどくせーおっさんだな」


 私が言うと、最後に野村君が悪態をつきます。

 が、その言葉に、言うほどの悪意が乗っていないことぐらいは、私にも分かりました。


「さて。この様子なら、ジョアンさんに任せて大丈夫そうですね。これからもよろしくお願いします、ジョアンさん」

「うんっ! まかせてダーリン!」


 ジョアンさんを下ろすと、私の頬にキスをしてから離れて行きます。


「さあ、三人とも! 十分休憩出来たでしょ? 次の仕事だよ!」


 ジョアンさんの言葉に、三人同時に、三者三様の表情で嫌そうにしているのが、なんだか少し面白くて、私は笑ってしまいます。

 それを最後に、この現場を後にしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マンガよもんが様にてコミカライズ連載中!
6mhv82sb21f83lsdkkow3af4fucd_1bmn_28e_35p_nrgt.jpg

マンガよもんが様へのリンクはこちら

小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナーcont_access.php?citi_cont_id=602222539&s


☆Narrative Worksの新連載!☆

異世界チーレム転生できたけど、ヒロインが全員ギャグ漫画の世界の登場人物なんだが?
著者:亦塗☆さくらんぼ



☆Narrative Worksの連載作品一覧☆

無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する-仕事が回らないから戻れと言われても今更もう遅い、SSS級冒険者として自由に生きていきます-
著者:桜霧琥珀

クラス転移に巻き込まれたコンビニ店員のおっさん、勇者には必要なかった余り物スキルを駆使して最強となるようです。
著者:日浦あやせ

盾持ち令嬢の英雄譚
著者:雨降波近

蒼炎の英雄-異世界に勇者召喚された少年は、スキル『火傷耐性』を駆使して成り上がる-
著者:稲枝遊士

吸血鬼な悪役令嬢に転生した私がSSS級国際指名手配犯となり最強チートスキルで婚約破棄王子や元クラスメイトの勇者などを倒していくお話
著者:稲枝遊士

ツルギの剣
著者:稲枝遊士

ゴブリン・コンバット-異世界のゴブリンに転生したので、地上最強の生物を目指してみようと思う-
著者:殿海黎

池袋ボーイズ(大嘘)
著者:亦塗☆さくらんぼ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ