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01 召喚者の再雇用




 内藤が起こした事件から、そして内藤が亡くなってから半年が経過しました。

 内藤によって荒らされた三国の戦後処理も落ち着き、また乙木商事はこの機会に便乗して店舗や工場等を三国に展開していきました。


 そうして多国籍企業となった乙木商事ですが、現在は魔王領の大森林自治区へと『魔王領本店』という建前のもと、本拠地を少しずつ移転し始めている段階です。

 森林の外縁部、エッジに広がるように施設を建設し、現在は最低限の技術開発部門と生産工場が大森林自治区へと移転してきています。


 当然、私と私の妻たちも全員がこちらへと移転しています。


 ようやくルーンガルド王国に依存しない業務形態が実現されつつあります。




 また、乙木商事の移転とは別に、多くの召喚者が大森林自治区へと移ってきました。


 内藤組との争い。戦争を実際に体験し、戦いに関わる仕事を嫌がる召喚者が一気に増えた為です。

 戦後のどさくさに紛れて、全員の身柄を乙木商事が確保。そして戦争に関わらない仕事、つまり大森林自治区での新本拠地の開発を手伝って貰っています。


 こうして多くの召喚者は、一般人として働くことが出来るようになりました。




「おーい、かいちょーっ!」


 開発中の土地を視察して回っていると、私を呼ぶ声がありました。

 振り向くと、そこに居たのは涼野さん。未だに召喚者としては珍しく、冒険者として戦いに関わる活動を続けている人物の一人です。


「どうなさいましたか?」

「ウチのパーティメンバーの話なんだけど、少し時間ある?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「じゃあ、歩きながら話そ!」


 涼野さんに誘われるまま、開発中の森林を散策しながら話をすることにします。


 密集しすぎていた木々を適度に間引くように伐採した結果、以前よりも明るくなった森林を歩きながら、涼野さんは口を開きます。


「ウチ以外のみんなが、これからも冒険者を続けるかは保留にしてたの、覚えてる?」

「ええ、もちろん。涼野さんが、自分だけは冒険者を辞めないと直接言いに来てくれたこともちゃんと覚えていますよ」

「うへへ。ありがと、かいちょー」


 照れたように笑う涼野さん。

 ですが、すぐに表情を引き締めます。


「結論からだけど、ウチのメンバーは全員冒険者に復帰するってさ」

「そうですか」


 その決意に対して、私から掛けるべき言葉が見当たらず、少し淡白な言葉を返してしまいます。

 ですが、涼野さんは気にせずに話を続けます。


「正蔵がさ、言ってたんだよね。『戦うって、全然カッコいいことじゃない。でも、だからこそ今さら投げ出したくない』って。意地張っちゃってさ」

「そうですか。ですが、その決断を私は否定しませんよ」


 きっと、真山君にも複雑な感情があるのでしょう。ですが、それを飲み込んで冒険者として活動することを選んだ。

 戦争とは全く異なるとはいえ、暴力を扱う仕事を続ける決意をするのは大変なことだったはずです。


「かいちょーなら、そう言ってくれるって思った。正直さ、ウチも正蔵のこと言えないんだよね。昔のウチって、どうしようもないヤツで、最低だったけど。そんなウチでも恵まれてた。ウチと比べてもずっと辛い思いをしてる人がいるんだって思うと、やっぱダサくてもさ、助けになりたいって思っちゃったんだよね」


 恥ずかしそうに、頬を掻きながら言う涼野さん。


「多分、他のみんなもおんなじようなこと思ってると思う。で、それってやっぱりかいちょーが色々ウチらのことを助けてくれたからだっていう気持ちもあるわけ」

「それは、ええと、それほどでもないですよ」

「ふふっ。でも、ウチらはみんな感謝してるから。ありがとね、かいちょー! 今日はそれが言いたかったの!」


 そこまで言うと、涼野さんは駆け出し、仕事に戻ります。冒険者として、開発作業をしている人を魔物から守るために。


「じゃあね、かいちょー!」

「ええ、頑張ってください!」


 手を振って走ってゆく涼野さんを、私も手を挙げて見送りました。

お久しぶりです。


ある程度の話が書き上がったので投稿させてもらいます。

これからもコンビニおっさんをよろしくお願いいたします。


また、Narrative Worksの新作も同時に投稿が開始されています。

『異世界チーレム転生できたけど、ヒロインが全員ギャグ漫画の世界の登場人物なんだが?』という作品ですので、興味があればページ下部のリンクから読みに行って頂けると幸いです。

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