21 涙の絶叫
「これで、終わりだ」
その場に倒れ伏したままの内藤に、金浜君が告げつつ剣を向けます。
ですが。金浜君はまだ覚悟が決まりきっていないのか、剣を構えたまま、迷うような素振りを見せます。
それを見た内藤が、ギリ、と歯を噛み締めます。
「おい、ふざけんなよ」
怒りの滲む声で、内藤は言います。
そして同時に何らかのスキルを発動し、今まで以上の力を身体から溢れさせ、赤く禍々しい光を放ち始めます。
「テメェは勇者だろうがッ! 戦って、殺し合うのが役割じゃねぇのかよッ!」
そして内藤は、私の掛けたデバフすら上回るバフ効果によって、無理やり立ち上がります。
「甘ったれてんじゃねぇッ! ちゃんと俺と殺し合えッ!」
「グッ!」
そして立ち上がった内藤は、金浜君に襲いかかります。拳の連撃で金浜君を追い詰めていきます。
「この期に及んで舐め腐りやがってッ! 殺し合わなきゃあ、嘘だろうがッ! それがテメェの役割だろうがッ! 今更、ふざけた真似してんじゃねぇッ!」
怒りのままに叫びながら、内藤は金浜君に連撃を加えます。その瞳には、僅かばかりの涙すら浮かんでいました。
金浜君は防戦一方となっており、戦況は一気に不利に傾いてしまいます。
「金浜君ッ! 私が代わります!」
私は苦戦する金浜君と入れ替わるように飛び出し、内藤の拳を受け止めます。
そして返しの蹴りで内藤を吹き飛ばし、距離を取ります。内藤は瓦礫の中へと突入し、土煙の中へと姿を消します。
「私がやりますから、金浜君は援護に集中して下さい」
「っ、分かりましたッ」
金浜君の代わりに、私が内藤を殺す。それを暗に伝えます。
「やるじゃねぇか、おっさん」
瓦礫の中から身体を起こしつつ、内藤が姿を見せます。
「アンタが代わりに殺し合ってくれるってんなら、大歓迎だぜェッ!」
凶暴な笑みを浮かべながら、内藤がこちらに向かって突撃してきます。
「乙木さんッ! 援護しますッ!」
すかさず、金浜君が私に対してバフを掛けてくれます。勇者によるバフ効果は相当なものらしく、私自身の身体能力が飛躍的に向上するのを感じます。
「感謝します」
それだけ言うと、正面から内藤を受け止めます。
重い拳の一撃を、私も同様に拳を出して撃ち合います。
魔力がこもった拳は、バチバチと光を弾けさせ、反発しあい、お互いに吹き飛びます。
ただ、勢いの乗った内藤の拳を、私は咄嗟の一撃で迎え撃ち、互角でした。恐らく、金浜君のバフのお陰もあり、今は私の方が内藤の力を上回っているようです。
これ以上、内藤がスキルでパワーアップする前に決着を付けましょう。





