20 正面衝突
ここに来て、ようやく内藤の狙いが分かりました。
なぜ首都に罠も無く、住人が一人も居なかったのか。
それはまさにこの瞬間、金浜君と全力で戦う為に。金浜君が住人の命を気にして本気を出せない、なんて事態を避ける為にやったことだったのでしょう。
「金浜ァァァアアッ!」
「内藤ォォオオッ!」
金浜君と内藤が、互いの名前を叫びながら激突します。
内藤が拳を振りかぶり、それを金浜君が剣で迎え撃ちます。
二人の攻撃が正面衝突して、強烈な衝撃波を発生させます。
それによって城は更に崩壊し、さらに二人は反動によって勢い良く吹き飛びます。
内藤と金浜君は、それぞれ反対方向へと吹き飛ばされ、首都の市街地ど真ん中へと墜落します。
ですが、これでも二人のステータスを考えると、大したダメージにはなっていないでしょう。
次の瞬間には、内藤が吹き飛んだ方角から、闘気属性の魔力の塊が、弾丸のように発射され、金浜君の墜落した付近へと飛んでゆきます。
雨のように降り注ぐ闘気の弾丸を、金浜君は飛ぶ斬撃で迎え撃ちます。
二人の攻撃は空中で交差し、爆発します。その余波で、首都の市街地はまるでジオラマか何かのように簡単に壊れていきます。
まさに内藤の狙い通り、住人が居ないお陰で、金浜君が全力で応戦出来ているようです。
弾丸と飛ぶ斬撃の応酬が終わると、内藤が市街地の建物を打ち抜きながら、金浜君へと突撃していきます。
「受け止めてみなァッ!」
勢いを乗せた拳の一撃。何らかのスキルの力が乗っているらしく、拳は濃い魔力を携え光っています。
これを金浜君は剣で受け止めます。
「ぐうぅッ!」
「オラどうしたァッ!」
鍔迫り合いのような状態ですが、内藤が僅かばかり優勢なようです。
ここです。私が加勢するならば、このタイミングでしょう。
「金浜君ッ!」
私は声を掛けてから、自分が仕掛けることを伝えます。恐らく金浜君なら、私が何をするつもりか把握出来ているでしょう。
私はここまで、内藤の取るに足らない存在だという認識を利用し、油断を誘っていました。
そしてここで、動きが止まっているこのタイミングでこそ、この油断を利用した奇襲は最大限有効となります。
私は瘴気と詛泥を生み出し、一斉に内藤へと浴びせます。
魔力とは異なる理によるデバフが、急激に内藤のステータスを低下させます。
「なッ!」
「ハァァアアアアッ!」
当然、鍔迫り合いの趨勢は変化します。デバフの影響もあり、体勢を崩した内藤を、金浜君が一気に押し返します。
そして剣の一閃と同時に吹き飛ばしました。
内藤に飛ぶ斬撃が直撃。そのまま内藤は城まで吹き飛ばされ、その城門へと衝突して止まります。
追撃をするべく、私と金浜君で急接近すると、どうやら内藤にかなりのダメージが入っている様子。
デバフも恐らくまだ残っているはずです。このまま行けば、私達の勝ちでしょうね。





