19 内藤の実力
剣を構える金浜君に、内藤は挑発するように言います。
「余裕そうじゃねぇか、金浜」
「当然だ。俺は勇者として今まで戦い抜いてきた。他人を支配して利用してきただけのお前は敵じゃない」
「それが自惚れだってこと、教えてやるよ」
言うと、次の瞬間に内藤は、今までに溢れさせていた魔力を遥かに超える量の魔力を垂れ流しにします。
それも、勇者である金浜君と同等か、それ以上の。
そして闘気属性の膨大な魔力を身に纏い。内藤は、金浜君へと襲いかかります。
「金浜ァッ!」
「なッ!」
金浜君も、私も予想外のスピードで内藤は距離を詰め、金浜君へと拳を振り下ろします。
咄嗟に金浜君は剣でこの攻撃を受けます。
しかし。圧倒的な威力で繰り出された攻撃に、金浜君本人はともかく足場が耐えられません。
衝突した瞬間、内藤の攻撃によって金浜君の足場が砕けます。
そのまま金浜君は、城の階下へと床をぶち抜きながら吹き飛ばされます。
「どうした金浜ァッ! 勇者様ってのはこんなもんじゃねぇだろッ!」
内藤は、煽る様に言います。
すると、次の瞬間。城の階下で、膨大な魔力が溢れ出ます。
恐らくは、金浜君が勇者のスキルを使い、本気を出したのでしょう。
そして同時に、階下から衝撃波が。剣を一閃した軌道そのままの魔力の塊が、内藤へと襲いかかります。
「ッハァ!」
内藤は、まるでこれを待っていた、とでも言うかのように、喜色を顔一面に浮かべながら、飛んできた剣閃を拳で受け止め、弾き飛ばします。
弾き飛ばされた金浜君の飛ぶ斬撃は、玉座の間を中心にして城を斜めに切り裂きます。
轟々、と音を立てながら、斜めに切り裂かれた城が滑り、崩れ落ちてゆきます。
そんな中、金浜君は階下から飛び上がって、玉座の間まで戻ってきます。
光、炎、治癒、闘気という、金浜君が持つ全ての属性の魔力を纏った状態です。恐らく、この状態が金浜君の全力なのでしょう。
風もないのに金浜君の髪は靡き、そして光を放っています。
そんな金浜君から睨みつけられている内藤は、嬉しそうに笑います。
「ハハハハッ! いいねぇ、最高だよ金浜ァッ!」
「内藤ッ! その力は何だ!」
内藤の力があまりにも強すぎる為に、金浜君は問います。正常な手段で勇者に匹敵する程の力を手に入れることなど、不可能です。
本気を出す前とは言え、それでもSSSSというステータスを持つ金浜君に匹敵している内藤の力は異常と言う他ありません。
「知らねぇのか? スキルってのは進化するんだよ! 俺のスキルは『洗脳調教』から『完全支配』に進化したッ! お陰で助かってるぜェ、何しろ、支配した人間が手に入れた経験値も、スキルも、あらゆるものを俺が回収できるんだからなァッ!」
「なっ!」
内藤の言っていることはつまり。
バロメッツ公国だけでなく。アデルタンド王国、サダルカーン王国、さらにはルーンガルド王国に居た頃に支配した人間も含めるとすれば。
「何十万人もの人間から回収した経験値とスキルのお陰で、俺は力を手に入れた! 見せてやるよ、金浜ッ!」
そう言って、内藤はステータスボードを表示、拡大し、私達に見えるようにして表示してきました。
その数値に、私も金浜君も思わず息を飲みます。
【名前】内藤隆
【レベル】487
【筋力】SSSS+
【魔力】SSSS+
【体力】SSSS+
【速力】SSSS+
【属性】闘気
【スキル】ERROR
数値上で言えば、内藤は私達を遥かに超えるステータスを持っています。
さらには。私以外の人間で、初めてのスキル欄のERROR表示。
私という前例を考えれば、内藤はそれだけ膨大なスキルを獲得している、ということになります。
「理解したか、金浜ァッ! 遠慮なく、全力で俺を殺しに来いッ! 俺は強ぇからなァッ!」
その言葉に偽り無く。内藤は、これまで私達が敵対したあらゆる存在と比べても、最も強力な敵であると言えます。
「それでも、俺は負けるわけにはいかないんだッ!」
金浜君は内藤のステータスを見て、さらに魔力を引き出し、自らを強化します。
ここからが、戦いの本番です。





