13 加藤淳也
ダークマター入りの合金による拘束の後、神崎君を後方に捕虜として送り、私と金浜君は敵兵の説得に再び向かいました。
そして、続けて運悪くも、敵からの妨害を受けてしまいます。
「これ以上、お前らの好きにはさせねぇ!」
言いながら、こちらに向かって襲いかかってきたのは金髪を長く伸ばした男。要注意人物の最後の一人。スキル『弱体化』を持つ加藤淳也です。
スキル『弱体化』は、不可逆なステータスの減少を引き起こすスキル。対象に触れている必要があるという欠点はあるものの、一般的には恐ろしいスキルです。
しかし、このスキルはデバフの一種である為、デバフに対する高い耐性を持つ者にはそもそも無効。ステータスの減少自体も、本人の能力を基準にする為、圧倒的な格上相手には髪の毛ほどの効果も発揮しません。
そして金浜君は両方の条件を満たしているため、彼に触れられたところで何の影響もありません。
加藤君の拳を普通に受け止め、呆れたように息を吐く金浜君。
「今度はお前か、加藤」
「なかなかやるじゃねえか、金浜! だが、オレにいつまでも触れていていいのか?」
問題ありません。が、どうやらそれを理解していない様子の加藤君。余裕ぶっています。
「そんなにお望みなら」
あえて金浜君は加藤君の挑発に乗るように、つかんだ腕をそのまま利用し、加藤君を投げ飛ばします。
「クッ! やるなッ!」
吹き飛ばされた加藤君はどうにか着地します。恐らく一割どころか一分にも満たない力しか使っていない金浜君を相手にこれなのですから、勝敗の結果は明らかです。
到底負けることが無いと理解しているためか、金浜君は加藤君との対話に入ります。一応、役割としては敵対者の説得ですからね。
「なあ、加藤。お前もまさか、内藤に支配されてるわけでもないのに、こんな馬鹿なことをやってるのか?」
「バカとはなんだ! オレにはなぁ、オレなりの夢があって内藤に味方してんだよ!」
ほう。どうやら加藤君には加藤君なりの理由があるようです。
「その夢ってのは何なんだよ」
呆れた様子で尋ねる金浜君。これに、加藤君は意気揚々と答えます。
「それはなぁ。男と男による、男だけの世界を作るためだッ!」
堂々と宣言する加藤君。ですが、その意味が分からず私と金浜君は同様に首を傾げます。
「なあ、加藤。それってどういう意味なんだ?」
「分からねぇか? そりゃそうだよなぁ。軟弱な女なんかと乳繰り合ってるてめぇなんぞにはなぁ!」
発言の節々から想像するに、なにやら悪い予感がします。
「オレはてめぇらみたいな軟弱者とは違うッ! 男同士で愛し合うことこそが、真の男ってやつなんだよッ! そのためには、既存の軟弱者共を支配し、理解させるしかねぇんだよッ! だからオレは内藤についてんだよ!」
なるほど、なるほど。
つまり、加藤君は同性愛者であると。
そして彼は男同士で愛し合う以外の恋愛関係を認めていない。故に男女という関係性を世の中から排除するために、内藤に与している、と。
「馬鹿だろお前」
金浜君が思わず漏らした言葉に、私も激しく同意です。





