表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
290/366

07 反転進撃




 シュリ君、松里家君、メティドバンの三人が内藤のスキルについて調べ上げている間に、私は本来やるべきことをやっておくことにしました。

 それは、侵攻してきたバロメッツ公国軍を押し返すこと。反撃、進軍してルーンガルド王国の国境から遠ざけることです。


 この争いはそもそも、内藤が起こしたものです。このまま守っているだけでは埒があきません。

 かといって、来る兵全てを無力化し、捕縛するというのも無理がある話。


 ですので、状況を変える為には内藤が居るであろうバロメッツ公国首都まで進軍。そして内藤自身を押さえる他ありません。

 それにはやはり電撃的な進軍により、援軍が来るよりも先に内藤へと到達するのが最も望ましいと言えます。


 ですので、私は乙木商事の防衛部隊を引き連れ、国境の守りにはルーンガルド王国の国軍のみを残し、進軍することにしました。


 野村君と共に攻めてきた軍勢は打倒しましたが、その先にも恐らくは防衛戦力として一般市民や召喚者が配置されているでしょう。

 それらも可能な限り順次無力化し、周辺から援軍が送られてくることによる無駄な争いが起こるよりも先に首都を目指します。




 そんな進軍を続けて翌日の野営地にて。

 私はここまで付いてきてくれた『勇なる翼』の皆さんと、金浜君、三森さん、東堂君の様子を見に向かいました。


 ここまで戦闘はありませんでしたが、もう少し進めばさすがにバロメッツ公国の軍と接敵するでしょう。

 そうなると、皆さんには体力的な面以上に、精神的な負担をかけることになります。

 ですので、もしも気負い過ぎているようなら何らかの手段で慰めるか、あるいは酷い様子ならば待機するよう指示するつもりで顔を出します。


 皆さんが寝泊まりするテントの近くまで来ると、先にある人物と顔を合わせることになりました。


「乙木さん? どうなされたんですか?」


 木下ともえさん。皆さんの教師であり、数少ない大人組の一人です。


「こんばんわ、木下さん。皆さんの様子を見に来たのですが、どうでしょうか?」

「はい。乙木商事の防衛部隊であれば一般人の方々を無傷で拘束出来ると分かっていますから。以前よりは、だいぶ顔色も良いと思います」

「以前よりは、ですか」


 となると、やはり負担は感じているのでしょうね。


「もしも辛いようでしたら、ここからの戦いで前線に立つ必要はありませんよ」


 私が言うと、木下さんは首を横に振ります。


「いいえ。少なくとも私は、前に出なければいけません。戦わされている人々の中には、私の生徒たちも居るんですから」


 どうやら覚悟が決まっている様子。木下さんは、そのまま心情を語ります。


「生徒同士で争うなんて、本当ならあってはならないこと。けれど状況が許さないのであれば、せめて私が前に出て、みんなを守りたいんです。生徒たちの心が傷つくぐらいなら、代わりに私が」

「それは俺たちだって同じ気持ちですよ、先生」


 木下さんが語っているところに声を挟んできたのは、テントから出てきた金浜君でした。


「先生が傷つくぐらいなら、俺たちだって頑張りたいんです。だから、みんな帰ろうともしなかった。ここまで付いてきたんです」


 金浜君は言いながら、木下さんの肩に手を置きます。


「それに、クラスメイトと戦わなければいけないからこそ。その責任や苦しさを、他の誰かに肩代わりしてもらおうなんて思えない。俺たちは、俺たち自身でこの戦いを終わらせないといけない。だから、先生だけに頑張ってもらおうなんて、誰も思っていません。みんなで、頑張っていきましょう」


 金浜君の言葉に、木下さんは瞳を潤ませながら頷きます。


「はい。そうですね。私達は、仲間ですから。一緒に頑張りましょうっ!」


 どうやら、この様子を見る限りであれば、大丈夫そうですね。

 少なくとも、ただ辛い、苦しいという思いばかりで押し潰されるようなことにはならないでしょう。


 とは言え、苦しいことには変わりないはず。

 こんな戦いは、一刻もはやく終わらせたい。そんな気持ちが、改めて湧き上がるのを感じます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マンガよもんが様にてコミカライズ連載中!
6mhv82sb21f83lsdkkow3af4fucd_1bmn_28e_35p_nrgt.jpg

マンガよもんが様へのリンクはこちら

小説家になろう 勝手にランキング
ツギクルバナーcont_access.php?citi_cont_id=602222539&s


☆Narrative Worksの新連載!☆

異世界チーレム転生できたけど、ヒロインが全員ギャグ漫画の世界の登場人物なんだが?
著者:亦塗☆さくらんぼ



☆Narrative Worksの連載作品一覧☆

無能は不要と言われ『時計使い』の僕は職人ギルドから追い出されるも、ダンジョンの深部で真の力に覚醒する-仕事が回らないから戻れと言われても今更もう遅い、SSS級冒険者として自由に生きていきます-
著者:桜霧琥珀

クラス転移に巻き込まれたコンビニ店員のおっさん、勇者には必要なかった余り物スキルを駆使して最強となるようです。
著者:日浦あやせ

盾持ち令嬢の英雄譚
著者:雨降波近

蒼炎の英雄-異世界に勇者召喚された少年は、スキル『火傷耐性』を駆使して成り上がる-
著者:稲枝遊士

吸血鬼な悪役令嬢に転生した私がSSS級国際指名手配犯となり最強チートスキルで婚約破棄王子や元クラスメイトの勇者などを倒していくお話
著者:稲枝遊士

ツルギの剣
著者:稲枝遊士

ゴブリン・コンバット-異世界のゴブリンに転生したので、地上最強の生物を目指してみようと思う-
著者:殿海黎

池袋ボーイズ(大嘘)
著者:亦塗☆さくらんぼ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ