06 尋問開始
捕縛した野村君を後方につれてゆき、乙木商事の方で設営した基地設備の中で尋問を開始します。
魔力圧、魔素量それぞれを測定する機材はもちろんのこと。様々な測定機材を持ち込んでいます。
これらの機材を使いつつ、野村君を尋問することで、より正確に内藤のスキルについて解析していきます。
尋問は私を含め、メティドバン、シュリ君、松里家君の四人で行います。
「では、始めましょうか。君の名前は野村浩一で間違いありませんね?」
「ああ、そうだよ! だからなんだってんだ、あぁ?」
拘束具によるデバフの影響で相当辛いはずなのですが、それでも強気な態度は崩さない様子。
私は他の三人に順番に視線を向けます。機材の反応を見てくれているのですが、全員首を横に振ります。どうやら、特に何の反応も無かったようです。
続けて尋問を続けましょう。
「今回の進軍。バロメッツ公国を中心としたルーンガルド王国への軍事行動は、内藤隆が主導したものですね?」
「あたりめーだろ! でなきゃこんな命がけの戦争なんてやりたくねぇよ!」
この返答も外れ。特に反応はありません。
「では、もう二度とルーンガルド王国に攻め入るようなことはありませんね?」
「やりたくねぇに決まってんだろ! でも、関係ねぇんだよ! 隆のヤツのスキルのせいでよぉッ!」
その言葉には、今度は反応がありました。魔力圧、魔素量共に変化している為、スキルの影響を受けていることに間違いありません。
また、やりたくないと言っているにもかかわらず、無理やりにでも暴れようと身動ぎし、拘束から逃れようとしています。
様子からして、意思に反する行動を強要されているように見えますね。
そうして、その後も尋問を続けました。
結果としては、ルーンガルド王国に対して敵意を示し、実際に行動に移すよう強要されているようだ、ということが分かりました。
また、行動が強要される条件は曖昧ですが、基本的にはルーンガルド王国への敵意を自ら否定するような意思を示した場合、敵意を強要されるようであると判明しました。
つまり、ルーンガルド王国へ攻め込む命令に従うなら問題なく進軍出来る。命令に逆らうならスキルの影響で行動を強要され、結局意思に反して進軍することになる、という仕組みのようです。
「という結果になりましたが、なにか意見はありますか?」
私が問い掛けると、まずは松里家君が口を開きます。
「チートスキルであることを考慮しても、強力すぎる効果のような気がしますね」
「そうだね。いくらなんでも、万単位の人間の意思を同時に捻じ曲げるなんて無茶苦茶すぎるよ。何か仕組みがあると考える方が自然だね」
松里家君の感想に、シュリ君が補足をします。
これに私も頷くと、続けてメティドバンが発言します。
「内藤とやらが、常にスキルで支配を継続しているというわけではないはずだ。精神支配スキルというものは、本来多大なコストを支払ってようやく成立する。常に軍全隊へと影響を及ぼしているとは考えにくい」
言うと、さらにメティドバンは自身の考えを語ります。
「故に、精神支配自体が条件付きで発動しているものと考えられるな」
「条件付き、ですか」
私が問うように言うと、これにはシュリ君が解説します。
「強い効果を発揮する代わりに、発動条件が厳しいスキルって多いでしょ? 多分内藤って人のスキルはそのパターンってことなんじゃないかな?」
「うむ、左様である」
シュリ君の言葉にメティドバンも同意します。
「恐らくは、特定の条件下で初めて精神支配効果自体を対象者に付与し、さらに条件付きで支配効果が発揮するように絞っておるのであろうな」
「それだけ厳しい条件下で発動するのなら、これだけ大人数へ同時に精神支配を掛けることも無理じゃ無いかもね」
メティドバン、そしてシュリ君の言葉で、私もさらなる可能性を見出します。
「だとすれば、その前提条件を崩すことが出来れば話が変わって来ますね」
「うむ。恐らくは精神支配効果自体が無効化されるであろうな」
どうやら、希望らしきものが見えてきたようですね。
「ボクたちはこのまま、あの野村っちを尋問してもっと詳しい条件について調べてみるよ」
「精神支配が発動した時の状況まで遡ることが出来れば、打破する手段にも思い至るはず」
シュリ君とメティドバンが、自らさらなる調査を買って出てくれました。
「分かりました。お願いできますか?」
「まっかせなよオトギンっ! 野村っち以外にも捕虜なんて幾らでもいるんだから、すぐに一から十まで全て解き明かしてあげるよ!」
シュリ君の自信に満ちた言葉に、メティドバンと松里家君も頷きます。
この三人にまかせておけば、問題ないでしょう。
となれば、私も私で出来ることをしていかなければなりませんね。





