05 野村浩一
飛び出してきた召喚者の情報を訊くため、車内に戻ります。
「金浜君。今飛び出してきたクラスメイトの名前は分かりますか?」
「もちろんです。野村浩一、スキルは技能模倣。一度見たスキルを何でも真似できますが、チートスキルなんかは模倣できず、数にも限りがあります。そして内藤組の筆頭とも言える、前の世界でも内藤と仲の良かった不良一味ですよ」
金浜君の言葉で、私も思い出します。
そういえば、この世界に召喚される時、有咲と一緒に私を囲んできた不良男子三人組。その一人が彼だったように思います。
「なるほど。敵としては厄介ですが、我々が出張れば問題ないでしょうか」
「はい、恐らく。僕ら四人のスキルは模倣不可能でしょうし、ステータスは彼自身のものなので単純な身体能力での制圧も簡単です。恐らく、彼はAランク冒険者と同等かそれ以下の実力しかありませんから」
金浜君の言葉に、一同が苦笑いを浮かべます。
「常識で言えば、Aランク冒険者というのも相当な実力者なのだがな」
等と、言葉を挟んだのはメティドバン。
「まあ、事実ではありますし。ひとまずは、彼を無傷で制圧、拘束することから始めましょうか」
そう言って、私達は軽く作戦を話し合った後、金浜君と共に前線へと向かいました。
前線では次々と着色弾を喰らいながらも前進してくる野村君に我が部隊が後退しながら応戦しているところでした。
恐らくは、魔力常時回復のようなスキルを模倣しているのでしょう。着色弾の吸収以上の魔力を常に保持している為、乾燥し硬化した着色弾の溶剤による拘束効果以上の成果は出ていません。
「野村ッ! これ以上は止めるんだ!」
真っ先に、金浜君が野村君の眼の前に出ていきます。
「うるせぇッ! オレだって止めてぇんだよぉオオッ!」
言うと、野村君は金浜君に向けて手を翳し、瞬時に次々と魔法を放ちます。
恐らくは様々な属性をスキル扱いでコピーし、同時に行使しているのでしょう。
無数の魔法の弾幕を見て、しかし金浜君は慌てません。
「ふんッ!」
余裕の表情で剣を一振り。その剣圧だけで、野村君の魔法は完全に無力化されます。
「実力差は明らかだ! 野村、大人しく投降しろ!」
「うるせぇぇえッ!」
野村君は自分の意思では行動を止められません。故に、目の前で分かりやすく敵対行動を取っている金浜君と戦闘行為を行わずにはいられません。
これが、精神操作、支配系スキルの弱点の一つ。命令に従うよう矯正する都合上、個人の思考による細かな状況への対応が出来ないため、釣り出し等が簡単に出来てしまいます。
身体能力をスキルで強化したらしい野村君は、金浜君に殴りかかります。
金浜君はその拳を手で受け止め、続くもう片方の拳も同様に受け止めます。
野村君の両手を掴み、抑え込むように拘束した所で金浜君が声を上げます。
「乙木さんッ! お願いします!」
その言葉で、私も行動を開始。
動きを止めた野村君の手足を囲うように、ダークマターを含む合金製の拘束具を生成。
デバフにより著しく身体能力を落とした野村君は、あっさりと手足の自由を奪われます。
「う、ぐぅ。や、やめてく、れぇ」
最後まで戦いを嫌がりながら、野村君は倒れます。デバフと拘束具の重さにより、行動不能となったのです。
こうして無事、野村君の無力化、確保に成功しました。
これで内藤のスキルの影響について詳しく調べられるはずですね。





