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04 非殺傷制圧




 私は金浜君たちとの話を終えた後、すぐに乙木商事の部隊の方へと戻り、急ぎ敵軍へと攻め込むことを決定しました。

 向こうはこちらが積極的に攻め込んでこないと高を括っている様子なので、最初のうちに可能な限り多くの捕虜を捕らえておきたいのです。


 敵戦力を減らすという目的もありますが。それ以上に、内藤のスキルがどのような働き方をしているのか、詳細に調べたいという目的もあります。

 言い方は悪いですが、人体実験の検体を確保したいのです。


 乙木商事の部隊と共に前線へと出るのは、私を含め八人。魔王軍から共にここまで付いてきてくれたメティドバン。乙木商事の部隊を率いるマルクリーヌさん。個人的に付いてきてくれたシュリ君。そして金浜君、三森さん、東堂君、松里家君という面子です。


 金浜君たち四人は、先に前線で戦っていた召喚者の中でも、数少ない疲労の残っていないメンバーです。

 ここからも続けて私達に協力したい、ということだったので、ぜひともお願いしました。


「それにしても、俺達も前線に出なくて良かったんですか?」


 私と共に、展開する部隊の後方に立つ金浜君が問いかけてきます。


「ええ。恐らく制圧だけならうちの部隊が持ってきた装備だけで可能です。私たちは、非常事態に備えてここで待機。全隊指揮を取ることに集中します」


 言って、私は望遠鏡を使い戦場を見渡します。

 戦闘向けの大型装甲車両の天井に乗り、戦場全隊が見える高さから一望する景色です。我が乙木商事の部隊だけでなく、その向こうに展開するバロメッツ公国の軍まで丸見えです。


「見たところ、突出した戦力は存在しないようですし。やはり問題なく制圧可能だと思いますよ」

「そうですか。それなら、ひとまずお任せします」


 金浜君は納得したように、装甲車両の車内に戻ります。私以外の七人が、これで車内に待機していることになります。


 さて、そろそろ準備も出来ましたし、作戦開始と行きましょう。


「全隊、進軍開始!」


 私が無線通信で全隊へと指示を出すと、同時に我が軍が進軍を開始します。

 一糸乱れぬ統率された進軍に、敵軍がざわつく様子が見られます。


 そうこうしている内に、こちらの射程距離の範囲内に敵軍が入りました。


「全隊、『着色弾』一斉掃射ッ!」


 そしていよいよ、私の号令で今回の作戦の要とも言うべき兵器による総攻撃が開始されます。


 最前線に立つ乙木商事防衛部隊の隊員が、バズーカ砲のようにも見える砲身を持つ兵器を抱えます。

 そして引き金を引くと、砲身の中から色とりどりな砲弾が射出されます。


 爆薬ではなく、魔法による空気圧による射撃。発射されたのは、カラーボール。現代日本のコンビニに、防犯アイテムとして配置されている物に良く似た砲弾です。


 この砲弾こそが、今回の秘策『着色弾』。乙木商事の全店舗に配備されている、防犯目的の魔道具です。


 開発経緯としては、最初は単純に、現代日本のコンビニのものと同じ機能、完全にカラーボールそのものを作り上げようとしていました。

 既存の溶剤としては速乾性の溶剤があまり製造されていない為、溶剤の開発からスタートすることになりました。


 これは極めて単純な魔道具化で解決。微量な魔力を吸い取ることで蒸発、乾燥する溶剤を作ることで、カラーボールと同様の魔道具は完成しました。


 しかし、この段階で有咲のアイディアが炸裂。


「なあ。もっと効率悪く、魔力を吸い取ることって出来ないか?」


 そのアイディアは、詳しく聴いてみればまさに画期的と言えるアイディアでした。


 付着した対象から微量な魔力を吸収して乾燥する溶剤を制作可能ならば。同様に膨大な魔力を吸収することで乾燥する溶剤だって制作可能なはずです。


 そうするとどうなるか。乾燥する過程で、溶剤が付着した対象は急激に魔力を吸収され、魔力切れを起こします。

 魔力切れの状態は非常に負担の掛かる状態であり、言わば全力ダッシュでスタミナ切れしたような状態そのものです。


 こうなれば、相手は瞬時に行動不能に陥るというわけです。

 当然、単純にすぐさま完成、とはいきませんでした。膨大な魔力を吸収し乾燥するとは、逆に言えば乾燥するまでに膨大な魔力が必要という意味にもなります。

 すなわち、僅かな魔力しか持たない相手に付着した場合、速乾性が失われることにもなります。


 この点を解決するため、溶剤はニ種類のものを使うことにしました。一つは従来の微量な魔力で乾燥する溶剤。もう一つが、膨大な魔力を必要とする粘着質な溶剤。

 最初に従来の溶剤が乾燥することで、第ニの溶剤が接着剤のような働きを持ち、対象の動きを拘束しつつ付着し魔力を急激に吸収し続ける、という設計になっています。


 こうして完成した乙木商事製のカラーボール『着色弾』は完成し、あらゆる店舗で従業員の緊急時の安全を守る魔道具として活用されています。

 当然、在庫の数も相当数存在していたため、今回はそれらをこの前線まで運び込み、敵兵の拘束手段として利用している、というわけです。


「さて。順調なようですね」


 敵兵は次々に着色弾の餌食となって倒れ、無力化されていきます。

 魔力に特化したCランク冒険者でもなければ、耐えることなど不可能な勢いで魔力を吸収するのです。複数着弾することを考えると、Bランク冒険者でも厳しいでしょう。


 結果として、敵軍は前衛から順番に、無傷で無力化されていきます。


「こうなると、敵軍は秘策の一つでも使ってくるかと思いますが」


 私が言うと同時に、戦場の一角が騒がしくなります。


「嫌だああァァあっ! 戦いたくねぇよぉオッ!」


 等と叫びながら戦う少年。私にも見覚えのある、召喚者が敵兵として前線に飛び出してきました。

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