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02 乙木の帰還




 その後、無事に私達は乙木商事の本社へと帰還しました。

 そして到着すると即座に、ルーンガルド王国の王都に向かいます。

 目的は王城。国王との謁見です。


 マルクリーヌさんが手配してくれたお陰もあって、謁見はすぐに出来ることになりました。

 私は一人、国王と向かい合います。この世界に召喚されて以来、二度目の対面です。


「国王陛下。この度は、お願いがあって参りました」


 私が言うと、国王は苦々しい表情を浮かべます。


「お願いとは、白々しい。早く言え」


 どうやら、私は国王陛下にあまり好かれていない様子。

 まあ、当然でしょう。今では、ルーンガルド王国の流通のほぼ全てを抑え、資産、技術力でも国に匹敵するものを持つ乙木商事。その代表が私なのです。

 国の長としては、あまり気分がいいものでも無いのでしょう。


「では、単刀直入に言わせて頂きます。現在、戦争関係にある三国との国境に配置されている軍の動きを、防衛にのみ集中していただきたいのです」

「敵を討つなと? ふざけたことを言うな」

「であれば、仕方ありません。乙木商事からの、軍への物資供給が滞る可能性がありますが。こちらも無理は出来ません」


 要するに、軍に物を売らない、という脅しです。

 そこらの商会がそのような事を言っても戯言に過ぎません。しかし、乙木商事はあらゆる面で条件が違います。


 そもそも、軍の扱っている兵器等も乙木商事が技術を提供して作ったものが多いのが現状です。私が首を横に振れば、それだけで機能停止しかねません。

 それだけ根深く、この国の細部まで乙木商事は手を広げてきました。こういった時に、こちらからの要求を否と言わせないために。


 私の言葉を受けて、国王は長く沈黙を貫いていました。

 が、ようやく重い口を開きます。


「分かった。専守防衛に努めることを約束しよう」

「ありがとうございます、陛下」


 私は頭を下げると、続けて『対価』を口にします。


「では、こちらの都合で軍を動かして頂くお礼として、乙木商事からも防衛部門の隊を率いて、この度の戦争終結に向けて協力致しましょう」

「もういい、好きにせよ」


 お礼とは名ばかりの、私にとって都合のいい提案にも、国王は拒否することは出来ませんでした。


 許可も出た以上、これから乙木商事は正式に国の要請に従って前線に向かうことが出来ます。

 これで軍に一切の邪魔をされることなく、前線で活動できるようになりました。


 こうして無事、謁見を通して目的も達成したので、私は王城を後にします。

 そのまま乙木商事の本社に戻り、三国に送る戦力の手配を進めます。


 数日後には、ジョアンさん率いる防衛部隊も本社に帰還し、全隊が揃います。

 隊員の休息、物資の補給に一日を費やし、ようやく準備が整います。


「じゃあ、行ってくる」


 出発直前。私は妻達を前にして言葉を交わします。


「行ってらっしゃい、雄一」


 まずは有咲が寄ってきて、互いに抱き合います。

 すぐに離れて、次はシャーリーさん。


「無事に帰ってきて下さいね」

「ええ。任せてください」


 シャーリーさんとのハグも終え、次はマリアさん。


「ティアナとティオはこちらで面倒を見ておきますから、心配しなくてもいいですよ」

「はい、お任せします」


 今回の作戦には、ティアナさんとティオ君は連れて行きません。他にもジョアンさん、八色さんも乙木商事にて待機となります。現在は、遠征の疲れを癒やす為にも各自休息を取っています。

 魔王軍の援軍で同行して貰った皆さんには、今回は本社の守りとして残って貰います。


 代わりと言ってはなんですが、今回はマルクリーヌさん、そしてシュリ君が同行することとなっています。


 そうしてマリアさんとのハグも終え、いよいよ出発の時です。

 遠征続きて、妻達には寂しい思いをさせてばかりですからね。なるべく早く終わらせて、帰りたいところです。

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