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22 その執念の意味とは




 私はヴラドガリアさんと入れ替わるように前へと出ます。

 そして、詛泥と瘴気を発動。シリアルキラーの周囲に展開。


「無駄無駄無駄ァッ! 効かぬ、効かぬぞォッ!」


 やはり、近い性質の力同士であるせいなのでしょう。あまりダメージは入っていない様子。

 しかし、デバフそのものはある程度有効なのか、動きは僅かに鈍っています。


 私は即座にダークマター製のカランビットナイフを生み出し、シリアルキラーの腕に沿わせるようにして刃を振るいます。

 鋭い刃によってシリアルキラーの腕の表面は切り裂かれます。


 ですが、大きなダメージは入っていない様子。切り裂かれた腕は即座に肉が溢れ、傷を埋め立て、修復していきます。

 正に怪物。化け物じみた能力ですね。


「ハハハハッ! 無力、無力だ人間よッ! このまま貴様を殺し、吾輩は大森林自治区の魔物共を引き連れ、人類の領域へと進軍するッ! シリアルキラーという神が率いる魔物の軍勢が、人類を絶望の縁に落とすのだッ!」


 メティドバンはこちらへと拳を繰り出し、反撃しながら語ります。

 その言葉に違和感を覚え、私は回避しながら言葉を返します。


「お言葉ですが。大森林自治区の方々は思いの外理性的です。わざわざ危険を犯して、人類へと喧嘩を売るようには思えませんが」

「フハハハッ! 馬鹿めがッ!」


 メティドバンは私をあざ笑い、そして語ります。


「神である我がシリアルキラーに従わぬのなら、力で従えるまでッ! それでもまだ従わぬと言うのであれば、脳にホムンクルスでも埋め込んで無理にでも大森林自治区から引きずり出してやろうぞッ!」

「それは、あまりにも身勝手では?」


 メティドバンの語る計画に、私は苛立ちを覚え、反論します。また、同時に詛泥の中からダークマターの弾丸を生み出し、シリアルキラーへと射撃。肉体を貫くことは出来ず、半ばまで埋まった所で弾丸は止まります。


「貴様ら人間が知ったようなことを語るなッ! あの悲劇を、人々が我が同胞を肉と見做し、下品な欲望に満ち溢れた目で刃を振るったあの日をッ! あの惨劇を知らぬ身でッ! 何を語るというのだッ!」


 メティドバンは怒りに任せ、拳を振るい、私を狙います。回避する私に対して、メティドバンは罵声を浴びせながら攻撃を続けます。


「死んだのだッ! 肉を割かれ、皮を剥がれッ! 美味い美味いと言われ、その身を人類に喰らわれてッ! 我が同胞は苦しみ死んでいったッ! 貴様らがわが同胞を家畜と呼んで、傲慢にも強制的な繁殖を試みたッ! 無残な実験で、数々の同胞がッ! 苦しみ、悲しみ、絶望の余り自害していったッ! その恨みをッ! 怒りを知らぬ貴様がァッ! 何を持って身勝手を語るッ!」


 メティドバンは言い切ると、拳を合わせ大きく振り下ろします。復讐心が溢れるあまり、動力に使っているエネルギーが腕にまで伝わったのでしょう。呪詛の力が拳を包み、床に打ち付けられた衝撃と共に周囲へと飛び散ります。

 これを浴びたら、私はともかくヴラドガリアさんは少なくないダメージを負います。私はダークマターの盾を生み出し、後方で魔力を集中させ、大技を狙っている最中のヴラドガリアさんを守ります。


 と、同時に私はメティドバンへと反論し、意識をこちらへ向けさせます。


「地中海の悲劇を、私は伝聞でしか知りません。しかし、私は知っています。大森林自治区に住まう者たちを。あの森に生きるゴブリン達を。彼らは彼らの哲学で、明日の幸福を夢見て、懸命に生きているのです。敵と闘うことよりも、強者に学び、より幸せを求める聡明さもある。我々人類とも、彼らは分かり会えるのです!」


 言い返しながら、私は詛泥と瘴気を両腕に纏います。呪詛の力を腕に濃縮し、密度を高めます。


「だというのに! 貴方の言うように、このまま人類との戦争になればッ! 大森林自治区まで巻き込んでの復讐劇が繰り広げられるのならばッ! 彼らまで、醜い争いの犠牲者になってしまうッ!」


 私は濃縮した呪詛の力を拳に込め、シリアルキラーへと殴りかかります。


「欲深き人間がァッ! 知った口で語るなァァァアアッ!」


 メティドバンは絶叫し、そしてシリアルキラーは拳を振るいます。

 私の拳と、シリアルキラーの拳が正面から衝突。私の呪詛の力が、そしてメティドバンの怨念が、互いに互いを侵食しようと鬩ぎ合います。


 ここが、今こそが踏ん張りどころです。

 負けるわけにはいきません。私の拳に宿るのは忌まわしき、呪詛の力ですが。それでも、ここで押し負けることは、きっと許されない。

 あのゴブリン達、ヴァの民の皆さんの未来の為にも。私はここで、押し通ります!

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