13 破壊工作作戦決行
魔王城に到着した、その翌日。早速ながら、私達は破壊工作作戦の為、反乱軍の占拠した砦へと向かいました。
途中まではヴラドガリアさん率いる陽動軍と行動を共にし、砦が見え始めたところで私達破壊工作組、私と八色さん、ティアナさんとティオ君の四人が別行動に出ます。
一度隠れるように大森林自治区へと入り、迂回して陽動軍と逆方面へ向かいます。
私達が配置についたところで、通信機を取り出します。無線と似たような技術で作られた、短距離魔力通信機です。
「ヴラドガリアさん、聞こえますか?」
『うむ、聞こえるのじゃ』
「配置に付きました。いつでも作戦を開始してくださって構いません」
通信機から、僅かに歪んだ音でヴラドガリアさんの声が聞こえます。
『では、ゆくのじゃ!』
ヴラドガリアさんの声が聞こえた後、通信を終了。
そして直後、作戦にあったとおりの大魔法が発動します。
強烈な闇の魔法が、空に向かって打ち上げられます。太陽すら覆い隠す闇が、付近一帯だけを夜のような暗さになるほど広がります。
そして、轟音を立てて魔法が上空で爆ぜます。
威嚇の為に強大な魔法を使う、という作戦でしたが。それにしても、ヴラドガリアさんの使った魔法は強烈ですね。
そのお陰か、魔法による攻撃を警戒して、反乱軍が臨戦態勢を整え始めます。
私達は望遠鏡を利用し、反乱軍の動きを詳細に観察していますが、やはり陽動軍の展開している方面へと分厚く戦力を展開している様子ですね。
まあ、あれだけの魔法を見せつけられたなら、当然の反応でしょう。
「やはりこちらの方面はかなり守りが薄いようです。早めに作戦決行といきましょう」
私が三人に呼びかけると、三人とも頷きます。
早速、作戦決行です。まず、私達は用意した装備の一つ、ステルス迷彩機能を搭載したマントを羽織ります。
完全に周囲の風景に溶け込むというよりは、周辺の光を屈折させて姿を隠す装備なので、周辺の風景が滲んでボヤケたようになります。
マントの内側は全く見えなくなるのですが、周囲の風景がボヤケて滲み、違和感が出るので完全なステルス迷彩というわけではありません。
が、今回の作戦行動には十分な性能です。
私達は岩陰、草木の陰に隠れながら、ステータスに頼って素早い移動を続けます。ただでさえ風景に滲んで姿が消えており、見えづらいのに、さらにこれだけの高速移動を続ければ、視認するのは極めて難しいでしょう。
そうして私達は砦の壁面に到着すると、まずはティアナさん、ティオ君が先行します。
垂直な防壁を走って駆け上がり、一瞬にして上まで登ります。
見張りらしき魔物が複数居たようですが、反応する余裕も無かった様子。二人が一瞬で攻撃を繰り出し、全員の意識を刈り取ります。
そのまま二人は砦の内部に侵入し、暴れる予定です。言わば、破壊工作兼、第二の陽動ですね。
ティアナさんとティオ君の二人で砦の内部を破壊しながら駆け回り、混乱を広げます。そして程々の所で退散する予定です。
やがて騒ぎが大きくなり始めた所で、いよいよ私と八色さんの行動開始となります。
「では、行きましょう、八色さん」
「はい、旦那様」
私と八色さんが、本命の破壊工作員です。このまま侵入し、手薄となった砦を探索。重要物資等を中心に破壊して回ります。
隙を見せぬ三段構えの破壊工作、これで反乱軍の勢いを最大限削ってやります。





