12 魔王城に到着
翌日。私達はテントを片付けると、ゴヴァゴヴァさんに挨拶をしてから出発します。
「それではゴヴァゴヴァさん。お世話になりました」
「オトギ、マタアオウ! オマエ、イイヤツ!」
「ありがとうございます。機会があれば、またいずれ」
そうして再会の約束のようなものを交わし、私達はゴヴァゴヴァさんと別れ、ヴァの民の集落を出発しました。
早朝からの出発であったこともあり、この日はかなりの距離を移動することが出来ました。
そうして日が沈むよりも先に、大森林自治区を抜けることに成功。
「ここからは、私の案内に従ってお進み下さい」
と、イチロースズキさんが案内を申し出てくれたので、言葉に従って進みます。
やがて日が沈み、完全に暗闇が空を包む頃。私達の正面に、巨大な砦が見えてきました。
「見えてきました。あれが我々魔王軍の本拠地である、魔王城です」
イチロースズキさんは魔王城と言いましたが、やはり城というよりは砦と呼んだほうが正確ですね。堅牢そうで高く築き上げられた防壁が全方位を囲んでおり、守りは万全、といった様子。
そんな砦の正門前で装甲車を止めると、ちょうど門が開きます。
「よく来たのじゃ、乙木殿よ!」
門から出てきたのは、なんと魔王、ヴラドガリアさん。直々に出迎えてくださるとは、少々驚きました。
私はイチロースズキさんと共に一度装甲車から降りると、ヴラドガリアさんに挨拶に向かいます。
「お久しぶりです、ヴラドガリアさん」
「うむ。ゆっくりと話をしたくもあるのじゃが、今はそうもいかなくてな。早速じゃが、状況を説明したいのじゃ。司令室に来てくれぬか」
「そういうことでしたら、分かりました」
私はヴラドガリアさんの言葉に頷きます。
そうして、私はまた装甲車に戻ると、車を進め、魔王城の中へと入ります。広場のような場所に一旦停車し、車を降りると、ヴラドガリアさんの案内に従って城内を進みます。
そうして到着した一室、司令室にて、状況説明が始まります。
「まず、戦況についてじゃ。イチロースズキがそちらに向かってから、さらに状況が悪化しての。妾らが強硬手段に出れぬと踏んで、むしろ反乱軍の方が強硬手段に出たようじゃ。元より奴らは大森林自治区に最も近い砦を占拠しておったのじゃが、今は挙兵の準備を進めており、どうやら大森林自治区を抜け、ルーンガルド王国へと向かうつもりのようじゃ」
「それは、かなり切迫した事態ですね」
ヴラドガリアさんの言葉に、私は顔を顰めます。
「時間の猶予は、どれほどのものになりますか?」
「そうじゃな。恐らくじゃが、あと二日もあれば奴らの準備は終わるじゃろう」
「となると、私達の準備した増援が到着するかどうか、といったタイミングですね」
これはかなり危険な状態ですね。もし間に合ったとしてもギリギリのタイミングでは、完全に正面衝突することになりかねません。
そうなれば、両軍互いに犠牲が出ることを避けられません。
「となれば、何かしらの手段で敵の挙兵を遅らせる必要がありますね」
「うむ、そのとおりじゃ。そこで乙木殿よ、お主に頼みがあるのじゃ」
私の言葉にヴラドガリアさんが頷き、続けて提案をします。
「可能であれば、今回到着したお主を含む戦力で、反乱軍への破壊工作作戦に出てはくれぬじゃろうか?」
「破壊工作、ですか」
「そうじゃ。お主らの戦力を、奴らは正確には把握しておらぬ。かつ、お主らは妾らと違い、奴らを殺すという選択肢を取ることも容易な勢力じゃ。破壊工作による遅延と、人的損耗を警戒させての遅延。この二つで、奴らの行動を鈍らせるのじゃ」
確かに、ヴラドガリアさんの言う作戦には一理あります。
「ですが、砦に侵入しなければ破壊工作など不可能です。どのような手段を考えておられますか?」
「そこは、奴らが最も警戒する戦力を陽動に使うのじゃ。つまり、妾が正面から砦攻めをしてやるのじゃよ」
なるほど。確かに、ヴラドガリアさん本人が出れば、敵も反応をしないわけにはいきません。
「警戒の薄まった方面からであれば、お主ならどうとでも侵入できるのではないか?」
「そうですね。今回の私と共に来てくれた戦力であれば、可能かと」
私は八色さん、そしてティアナさん、ティオ君に視線を向けます。すると三人とも、自信有りげに頷きます。
「では、決まりじゃの。早速、詳細を詰めてゆくのじゃ。イチロースズキよ、委細は頼むぞ」
「畏まりました、魔王様」
こうしてこの後、私はイチロースズキさんと共に、作戦の詳細を話し合い、詰めていくこととなるのでした。





