11 八色の悩み
メティドバンさんのホムンクルス達を撃破した後、私達は何事もなかったかのように宴に戻ってきました。
「オトギ、カッタノカ?」
「ええ、もちろんです」
私が頷くと、ゴヴァゴヴァさんは嬉しそうに笑います。
「ソウカ! サスガダ、ツヨキモノ!」
豪快な笑い声につられて、私達も戦いの後の緊張感が完全に解されます。
そうして宴会に戻り、しばらくの間、私はゴヴァゴヴァさんとの会話を楽しみました。
「ソノ、オカネ、トイウノハ、ヒツヨウカ?」
「ええ。例えば、ゴヴァゴヴァさんが肉を手に入れます。でもゴヴァゴヴァさんは木の実が欲しい。なので、誰かの木の実と交換したい。でも、今日は誰も木の実を持っていません」
「ソレ、シカタナイ。ホシニクデモツクル」
「はい。ですが、お金があると違います。お肉が欲しいひとに、お金と交換でお肉を渡します。そして、木の実が余っている人が出てきた別の日に、お金で木の実を交換します。これで、ゴヴァゴヴァさんは欲しかった木の実を手に入れられるわけです」
「オオ! スゴイナ! ベンリダ!」
話の流れでお金の話をすることになり、かなり噛み砕いて一部分だけ話をしてみました。どうやら興味を持ってくれたようです。この様子だと、金銭を介した取引にもすぐに興味を示してくれそうです。
「旦那様。そろそろ、お休みになりませんか?」
そんなところで、八色さんが声を掛けてきました。確かに宴も、かなりお開きに近い空気が流れています。夜も遅いですし、明日に備える方が良さそうですね。
「では、すみませんゴヴァゴヴァさん。今日はこれぐらいで失礼します」
「ガハハ! オトギ、オモシロイ! マタ、イロイロオシエテクレ!」
「はい、またいずれ」
そんな約束を交わして、私は宴の席から離れます。
私は八色さんと連れ立って、装甲車の方へと向かいます。計三組の簡易テントが積んであり、そのうち一つが私と八色さんが眠る為の分です。
それを設営するため、装甲車へと向かう道中。ふと、八色さんが口を開きます。
「旦那様。聞いてもいいですか?」
「はい。どうしました?」
八色さんの表情を見ると、あまり浮かない顔をしています。
「私は、ちゃんと上手くやれているんでしょうか?」
「上手く、とは何のことですか?」
私が詳細を問うと、八色さんは少し躊躇った後に口を開いてくれます。
「旦那様には、私の他にも大勢奥さんがいます。皆さんいい人で、いつも旦那様を支え続けてきたんだなって分かります。私も、旦那様の、その、お嫁さんになったので。同じように、いっぱい旦那様を支えたいって思ってます」
そこで一つ息を吐く八色さん。
「でも、上手く出来ているか自信が無いんです。陰から見守るだけじゃなくて、一緒にいるようになって、とても難しいんだなって思うようになってきました。皆さん、本当に凄かったんだなって」
「八色さん」
不安げに語る八色さんを、私は肩を抱き寄せ、慰めます。
「旦那様。私は、お役に立てていますか? 旦那様の妻として、立派にやれているでしょうか?」
「ええ。八色さんはとても頑張っていますよ」
八色さんのことを肯定した上で、私は更に告げます。
「それに、八色さん。妻だからといって、頑張らなければいけないというわけではありません。結果や成果が無ければ、妻として認めないなんてことはありえません。貴女はもう、私の妻であり、大切な存在です。だから不安に思わないで下さい。どんな八色さんでも、私は大事にしますから」
そう言って、私は八色さんの頭を撫で、額にキスをします。
「ひゃう、だ、だんなしゃまぁ」
顔を真っ赤にして、八色さんは恥ずかしがります。
「八色さんの不安がなくなるまで、いくらでもこうしてあげますからね」
「ひゃ、ひゃいっ」
そんなふうにイチャつきながら、私と八色さんは装甲車に向かいます。
そうして私は八色さんとスキンシップしながら、テントを設営し、休むことになりました。
スキンシップが高じて、テントの中で何らかの行為に及ぶことになったのですが、それはまた別の話。





