05 突入準備
翌日の早朝。私達は、大森林自治区に最も近い、乙木商事関連の商業施設に到着しました。
魔王軍との戦いの最前線にも近いことから、ここでは国の軍に向けた商品も販売しています。
つまり保存食や野営に必要な装備等。これから大森林自治区に突入する私達にとっても便利なものが販売されているわけです。
「では、ここで準備を整えてから行きましょう。お金に関しては私が出しますので、気にせず必要なものを買って下さい」
そう告げて、私は他の四人に準備を任せ、自分は大森林自治区の下見に向かいます。
車で一時間弱かけて移動すると、大森林自治区が見えてきます。
見た限りだと、比較的閑散とした森であり、車で通る余裕もある程度です。また草が踏みしめられた、獣道のようなものも見受けられ、そこを車で通っていくことも可能そうです。
地形もそう荒れてはおらず、むしろ荒野を突っ切り最速でここまで飛ばしてきた昨日のルートの方がよほど荒れていたと言えます。
深部まで入ると分かりませんが、ひとまずは自動車でも移動が可能そうに見えます。
そんな判断を下した後、私は商業施設の方へと戻ります。すると、予想外なものが準備されていました。
「旦那様っ! 有咲ちゃんの方から、通信で連絡がありました!」
嬉しそうに、八色さんが報告してくれます。
「事前にこちらの商業施設に連絡してくれて、森林でも無理やり突破できるぐらいに仕様変更した特別製の移動用の車両と、他にも様々な兵器を収納袋に仕舞って準備してあるそうですっ!」
「それは非常に助かりますね」
「はいっ! 有咲ちゃんにも、ちゃんとお礼を言っておきました!」
どうやら、先に有咲が手を回して準備をしてくれていたようです。
収納袋の中身を確認すると、なんと銃火器の類が大量に。他にもロケランやミサイルポッド、対物ライフルなど、何をするつもりかわからないレベルの兵器まで。
とはいえ、銃火器の弾丸は主に麻酔弾。そして武器の類もスタンガンを参考につくったスタンロッド、つまり剣と同じ取り回しが出来るスタンガンが入っており、相手の無力化を考えての装備であることは間違いないです。
あくまで大型兵器は何らかのトラブルに対する保険としての装備なのでしょう。
そして肝心の改造された特製車両の方は、もはや戦争で使われるような装甲車らしき外見をしています。前部には細い木々をなぎ倒す為のかなり分厚く重々しいバンパーも付いており、大森林自治区を無理矢理にでも抜ける意思が感じられます。
先程確認した大森林自治区の光景がずっと続くなら、この車両であれば何の不安も無く抜けられるでしょう。
「有咲には、本当に助けられてばかりですね。帰ったらお礼を言わないと」
「はいっ!」
そうして、私と一緒に装備の確認を済ませた八色さんの二人で、改めて有咲に感謝の気持ちを抱くのでした。
さて。その後は準備された装甲車に荷物を積み込み、いよいよ出発です。準備の時間もあり、昼前の出発となりました。
「では、行きましょう。大森林自治区に着けば、夜間の移動は控えめにして下さい。現地の民族を必要以上に刺激してしまう可能性がありますので」
「わかりました、気をつけます」
イチロースズキさんの忠告を聞き入れ、いよいよ出発です。
森林仕様で重装甲の為か、少し速度が落ちた為、大森林自治区までは一時間と少し掛かりました。
いよいよ大森林自治区を目の前にして、改めて気合を入れ直します。
「ここからは、本当にルーンガルド王国の外であり、魔王軍も管理できていない部族が多数存在する危険区域です。本当に覚悟は出来ていますね?」
イチロースズキさんの最後の確認に、私達は頷きます。
「当然です。さあ、行きましょう」
私はアクセルをしっかりと踏み、大森林自治区へと入り込みます。
さあ、ここからが本番です。





