02 対反乱軍会議
協力を約束してすぐに、私は乙木商事の幹部たる面子を呼び出しました。
正確には幹部ではなく、外部協力者や、単に私と縁深いだけの人物も含まれてはいますが。しかし、全員が乙木商事の運営に深く影響する人物であることは間違いありません。
「お集まり頂き、ありがとうございます。今回は、魔王軍内部で起こったトラブル。反乱軍に関して新たな情報が判明しましたので、それの共有。そして今後の我々の対応についての話し合いをしていきたいと思います」
私は、集まった全員を順番に眺めながら語ります。
面子は、まずは私の妻達。全員が現在は役職持ちですので、出席は当然の権利です。
次に、乙木商事で働く召喚勇者の皆さん。彼らも少々特殊な立場であるため、乙木商事で大きな動きがある時は詳細を伝えるようにしています。
そして金浜君、三森さんの二人。本当は東堂君や松里家君にも来てほしかったのですが、忙しかった様子。
同様に、シュリ君も忙しさからこちらには来れませんでした。ですので、金浜君に話の伝達をお願いしておきます。
「まず、乙木商事としては反乱軍の鎮圧に協力したいと思っています。ですが、それで不要な犠牲を出してしまえば元も子もありません。なので、魔王軍に出向してもらう戦力は上位から順に選ばせていただきます。当然、私も魔王軍の方に出向します」
私が言うと、一人が手を上げて発言します。
「雄一さんが出向するなら、その間の乙木商事の業務はどうするんですか?」
妻の一人、シャーリーさんが当然の疑問を口にします。
「申し訳ないですが、非戦闘員の皆さん中心になって回すしかありませんね。一応、しばらくは私がいなくても問題なく回るようになっているはずなので」
私が言うと、妻達が互いに顔を見合わせ、そして代表するかのように有咲が口を開きます。
「分かった。アタシらも、ここが踏ん張りどころってことね? 任せてよ」
「ああ。出来るだけ、早く帰ってくるから頼むよ」
「うん。ホントに早めに片付けて帰ってきてね」
「全力を尽くすよ」
ひとまず、これで私が居ない間の乙木商事は問題なく回るはずです。妻達は日頃から様々な業務に携わっているので、頼もしい味方となりますから。
「次に、乙木商事から反乱軍鎮圧の為に出向する戦力についてですが。向こうの要請に正直に従うなら、ウチの戦力の十数パーセントを出向させる必要があります」
十数パーセント、という数字に、皆さん驚きの表情を浮かべています。今の乙木商事は、ルーンガルド王国全域に展開していますからね。その十数パーセントとなると、相当な人数になってしまいます。
なので、その点をフォローするように私は話しを続けます。
「ただ、これでは人数が多すぎますし、実力の足りない末端の警備部門の社員を連れて行っても被害が広がるだけです。なので、末端の社員の数を減らし、代わりに幹部待遇の社員を中心に最高戦力の半数以上連れていきます。数字で言えば、ウチの戦力の十パーセント未満に人数を抑えるつもりです」
そこまで言うと、次に私は金浜君と三森さんの方に視線を向け、続きを話します。
「そして、可能であれば金浜君のパーティメンバー四名、そしてシュリ君にも協力をお願いしたいです。五人の力があれば、反乱軍の鎮圧も順調に進むはずです」
私はこの場で直接、金浜君に打診します。
すると、金浜君は私の想定外の答えを口にしました。
「申し訳ありません、乙木さん。今回ばかりは、協力出来そうにありません」
「ほう。それはどのような事情が?」
金浜君の表情から、何か問題が発生していることを察し、訪ねます。
すると、金浜君は重要な情報を口にします。
「実は、間が悪いことに、ついに内藤組が動き出したんです」
その言葉で、私も含め、この場に集った多くの人間に緊張が走ります。
特に、召喚勇者の皆さんは厳しい表情を浮かべていました。





