28 勇者VS魔王
私の掛け声と同時に、金浜君と東堂君が前に駆け出します。
「援護します!」
その二人へと目掛けて、三森さんが支援の魔法を放ちます。これにより、二人の高い身体能力がさらに上昇します。
「ふむ」
駆け寄る金浜君と東堂君を前に、ヴラドガリアさんは余裕の表情を見せます。
そして最初に近寄った金浜君が剣を振りますが、ヴラドガリアさんはこれをなんと片手で受け止めてしまいます。
「なっ!」
「妾に支援魔法は無意味じゃ」
金浜君の剣は光の魔力を纏っており、さらに支援魔法による強化も入っていたのですが、それをヴラドガリアさんはあっさりと解除。結果、何の変哲も無い剣の一撃となり、ヴラドガリアさんの魔力と体力を貫くほどの攻撃にはならなかったのでしょう。
「だったら俺がッ!」
金浜君とヴラドガリアさんが向かい合うその横から、東堂君が切り込んでゆきます。支援魔法はすでに金浜君と同様に解除されていますが、彼は魔力に頼らない剣の一撃でヴラドガリアさんを攻撃します。
しかし、これもヴラドガリアさんには通じません。
「まだまだじゃ!」
東堂君の剣の一撃を、ブラドガリアさんは空いた片方の手で払い除けるだけで防いでしまいます。ヴラドガリアさんには傷一つ付いていない様子。それだけ高い魔力で自身の身を守っているのでしょう。
ヴラドガリアさんもそうですが、魔王軍の方々は魔力で身体を覆い鎧の代わりにする戦い方をすることが多いようですね。レオニスさんも、サティーラさんもそうでした。
私達人間の勢力は、たしかにそういう戦い方をする人も居ますが、基本は守りは防具頼り。魔力も自然と身体から溢れる分で防御する以上の防御はしません。
種族か、あるいは文化の違いか。何にせよ、こうして戦い方の違いが出るというのは興味深いですね。
私がそうこう考えているうちに、戦いは次の局面を迎えていました。
金浜君と東堂君の二人がかりでヴラドガリアさんに攻め込み、これをヴラドガリアさんが余裕そうに捌いていました。が、そうして作られた時間を使い、松里家君と三森さんが大規模な魔法を発動させます。
「これでも、喰らいなさいッ!」
まず、松里家君が大規模な攻撃魔法を放ちます。炎、雷、風、冷気の魔法をかけ合わせた、複雑かつ威力の高い魔法。
全く異なる属性を一つに集めた結果、魔力の爆弾のような状態になった塊が、ヴラドガリアさんへ目掛けて飛翔します。
「ぬう、中々よッ!」
さすがにこれだけの威力の魔法を消すのは一筋縄では行かないのでしょう。ヴラドガリアさんは金浜君と東堂君から距離を取りながら、松里家君の魔法を消す為に集中します。
「今です!」
そこで続いたのが三森さん。発動させたのは結界の魔法。味方の力を高めるのではなく、相手の力を削ぐ為の結界。
これにヴラドガリアさんを閉じ込めることで、魔力による身体の守りを弱体化させます。
つまり、これまで通らなかった攻撃が通るようになった、という意味でもあります。
「はぁッ!」
「喰らえッ!」
金浜君、そして東堂君が同時に攻め込みます。松里家君の魔法を消す為に集中しているのもあって、今は二人の攻撃に宿る魔力を消し飛ばす余裕の無いヴラドガリアさん。
「ぐぬっ」
悔しそうに表情を歪めると、次の瞬間には二人の攻撃が直撃。続いて攻撃を受けたことにより集中力が途切れたのか、消し切れなかった松里家君の魔法も直撃。
大爆発を起こし、辺りが見えなくなります。
「やったか?」
煙越しにヴラドガリアさんの方を睨みながら、迂闊とも言える発言をする東堂君。
それがフラグとなったのか、次の瞬間に爆発の余波の煙が吹き飛ばされます。
「なかなかやるではないか! 妾が魔眼の力による『手加減』を止め、魔法に集中しなければ防ぎきれぬ攻撃であったぞッ!」
どこか楽しそうにも聞こえる声を上げながら、煙を吹き飛ばしつつ姿を表したのはヴラドガリアさん。
その頬には、一筋の傷が付いていました。
「なんて、相手だ」
これは困ったな、とでも言いたげに、金浜君が苦笑します。
一挙連続投稿、七日目終了です。
もし宜しければ、ブックマークと評価ポイントの方を頂けると助かります。
また、ページ下部には今回の一挙連続投稿作品へのリンクも用意してありますので、是非そちらからお楽しみください。





