24 執念の賜物
膨大な魔力を持つシュリ君が放った、魔法陣から放たれる爆発の魔法。
属性などを介さない、魔法陣により細かに指定される魔法。通常は使いにくく、実戦的でないはずの魔法。
そのはずなのに、シュリ君は一瞬にして魔法陣を書き上げ、そしてレオニスさんを爆風で吹き飛ばしました。
それこそあまりにも一瞬の出来事であった為に、何の反応も出来ずに攻撃を受け、吹き飛ばされてしまったレオニスさん。
「ガフッ!」
壁にぶつかってようやく止まり、そして驚愕を隠せない表情でシュリ君の方を見ます。
「な、なにが起こったのだ」
「はい? そんなの見ての通りでしょ。ボクが魔法陣を書いて、魔法を発動した。それでそっちが吹き飛ばされた」
「ありえぬッ! 魔法陣を瞬時に描くなど、荒唐無稽だッ!」
レオニスさんの反応も当然でしょう。魔法陣は属性による魔法とは異なり、あらゆる情報を指定して初めて発動する魔法です。
それこそ爆発するだけの魔法ですら、例えばどの座標をどの程度の威力で、といった情報まで的確に書き込んでようやく発動します。
そんな複雑な情報を、瞬時に魔法陣に書き込み、そして発動する。
たとえ素早く魔法陣を描く能力があるとしても、書くべき内容を瞬時に判断し、正確に理解できなければ不可能な芸当なのです。
まあ、それをやってのけるのがシュリ君なんですけどね。
ただ、それを可能にする秘密の一つが、スキルにあります。
【名前】シュリヴァ
【レベル】48
【筋力】B
【魔力】SSS+
【体力】B
【速力】A
【属性】なし
【スキル】速記術
圧倒的に高い魔力と、それに比べれば遥かに低いその他のステータス。
そして属性を持たず、スキルは唯一つ『速記術』のみ。
シュリ君は元からこの『速記術』を使い、常人ではありえない速度で魔法陣を完成させる能力を持っていました。
そしてこの能力を戦闘に活かせるよう、我が乙木商事が開発した魔道具が光る羽ペン、その名も『スリーディーペン』です。
その名の通り、立体的に字を書くことが出来るのがこのスリーディーペンの効果。魔力を使い、光の線を空中に描けるのです。
これと『速記術』を合わせることで、シュリ君は瞬時に空中へと魔法陣を描き、魔法を発動可能になっているのです。
そんな常人離れした技術を目の当たりにして、驚いているのはレオニスさんだけではありません。
「まさか、そのようなことがありえるのか?」
声を漏らしたのは魔王、ヴラドガリアさん。
「ありえるから目の前で現実になってるんだし。ありえなかったらボクはここに居ないよ」
「そうか。つまりお主は、瞬時にその場で、適切な魔法陣を描く能力がある、と」
「そういうことだね」
シュリ君が肯定すると、ヴラドガリアさんが納得したように頷きます。
「ふむ。となると、そのようなことが可能な人物を、妾は一人しか知らぬ」
おや? 何やらヴラドガリアさんが妙なことを言い始めましたね。
「魔法の才に恵まれず無能と呼ばれたものの、瞬時に魔法陣を描き、状況に応じた適切な大魔法を行使し、戦場にて無数の敵を屠ったと言われておる古代の賢者。千年前に存在したとされる『エレメンタルマスター』にして『魔導の父』でもある『無能の大賢者』。レイモンド・シューリヴァリウス・マクスウェル。汝が、その本人であるな?」
聞き覚えのない名前が、突然ヴラドガリアさんの口から出てきました。
そして、シュリ君は楽しそうな笑みを浮かべます。
「へぇ。これだけの情報から、しかもそんな化石みたいな話から、よく気付けたね? その通り。ボクがその『無能の大賢者』と呼ばれた張本人だよ」
しかも、まさかの肯定とは。
私も知らなかった新事実が、ここで判明してしまいました。
一挙連続投稿、六日目終了です。
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