19 第四関門
魔王軍の皆さんを引き連れ、第四関門へと進みます。
サティーラさんは、最初こそエリート兵の天使の肩を借りて歩いていましたが、次第に体力も回復してきたのか、気づけば一人でしっかりと立って歩けるようになっていました。
高いステータスを持つものは、自然治癒力も高いですからね。目に見えて傷が塞がるほどでは無いでしょうが、歩くだけなら支障が無い程度には回復出来たようです。
やがて第四関門に到着すると、そこで待っていたのは全身鎧に身を包んだ何者か。
ただ、全身鎧と言っても中世の騎士のような鎧では有りません。乙木商事の技術の粋を集めて作られた、最高傑作とも言える強化外骨格的なパワードスーツです。
デザインも近未来的であり、鎧と言うよりもヒーローアニメのキャラクターが装備していそうに見えます。
そして、そんな鎧を装備しているのは、これまた私の妻の一人。
「おまたせしました」
私が呼びかけると、鎧の人物は兜、というよりもヘルメットを脱いで顔を顕にします。
「そうでもないさ。今用意が出来たばかりだよ、雄一殿」
そう言って、私に微笑みかけてくれたのは、妻の一人であり、現在は『元』王国騎士団長という肩書きとなったマルクリーヌさんです。
マルクリーヌさんは私と籍を入れてマルクリーヌ・オトギとなり、王国騎士の身分は持ったまま騎士団長の座からは退きました。
今は乙木商事と国の折衝役、というポジションで仕事をこなしながら、時折元騎士団長としての縁から騎士団の方へと出向いて教官として指導をしています。
そんなマルクリーヌさんが着ている鎧が、乙木商事が作り上げた最高傑作。全身を魔道具の鎧で包む、強化外骨格型パワードスーツ。その名も『トランセンドアーマー』です。
身体能力の強化。ダメージを軽減し、魔法を逸らし弾くバリア。アーマーそのものの強度を補強する効果や魔法の威力を増幅し、発動を補助する効果はもちろんのこと。あらゆる特殊な作戦を想定した補助機能も盛り沢山。
さらには強化パーツと合体することで、目的に合わせた方向性に更なる強化も可能です。
ただ、欠点として量産が極めて難しいこと。そして整備や維持の手間もかかることが上げられます。
そうした理由から、今マルクリーヌさんが装備している一着だけしか存在せず、未だに開発途上にある装備でもあります。
なお、現在マルクリーヌさんが装備しているトランセンドアーマー、通称TAは一対一の戦闘能力に特化した状態であり、その為の整備や調整に時間がかかった為、用意が出来たばかりだと言っていたのでしょう。
「ほう、次の相手はその一風変わった鎧姿の者が相手なのじゃな?」
ヴラドガリアさんが、興味深そうにTAを眺め、呟きます。
「はい。この強化外骨格型パワードスーツ、その名もトランセンドアーマーこそが我が乙木商事の最高傑作であり、兵器としては最高戦力に該当します」
「ほう、これが最高戦力、と?」
「ええ。ただ、現在の技術力ではトランセンドアーマー、通称TAでも『耐えられない』程の負荷が発生する程度の実力者は存在しますので。乙木商事全体での最高戦力、というわけではありません」
私はヴラドガリアさんに説明しつつ、次の挑戦者であるはずのレオニスさんの方に視線を向けます。
「さて、次はレオニスさんの番でしたね?」
「ああ、その通りだ」
どうやらレオニスさんはかなりのやる気になっているらしく、ギラギラとした表情を浮かべています。
サティーラさんもかなりの実力者でしたが、レオニスさんはさらにその上を行く実力者のはずです。
何しろ彼は魔王軍四天王で最強だと名乗っていましたからね。ステータス換算で言えば最大でSS相当の実力を持っていると考えていいでしょう。
とは言え、対するマルクリーヌさんのステータスも以下の通りであり、負けてはいません。
【名前】マルクリーヌ
【レベル】92
【筋力】S
【魔力】S
【体力】S
【速力】SS
【属性】雷
【スキル】疾風迅雷
スキル『疾風迅雷』は速力を上昇させるパッシブスキルであり、このお陰もあってマルクリーヌさんは速力がSSに達しています。
さらにはTAによる補助もあるので、他のステータスもSSにギリギリ届く程度はあるはずです。
その圧倒的な速さと、振るう剣と共に放つ雷の魔法の光から『雷光』という異名で恐れられたものだ、と語って聞かされたこともあるほどです。
それだけマルクリーヌさんの戦闘能力、技術は高く、経験も豊富。決してレオニスさんにも負けてはいないはずです。





