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10 無念




 勇なる翼の五人は、残念そうに肩を落とします。


「あーあ、負けちゃったわ」

「まさか、ここまで強いとは思ってなかった」


 仁科さんと真山君が反省した様子で言葉を交わします。


「ほら、二人とも。反省より先に回復よ」


 そして、鈴原さんはすぐに気持ちを切り替え、『完全回復』で受けたダメージの回復を始めます。


「ごめんなさい、接近までは出来たんだけど」


 肩を落としたまま、四人の方へと戻ってくる木下さん。


「ううん、ともちゃんセンセーは悪くない、ウチなんか、なんにも出来なかったし」


 そして涼野さんが、悔しそうに言いながら木下さんをフォローします。

 そんな五人に私は近づき、励ましの言葉を送ります。


「落ち込む必要はありませんよ。戦力的に、あちらの幹部クラスの相手は厳しいと最初から分かっていました。むしろ、魔王軍のエリート兵士を相手にあれだけ圧倒したのですから。素晴らしい結果です」

「そっかな。えへへ、アリガト、かいちょー」


 照れた様子で微笑む涼野さん。かつての不良だった頃とは似ても似つかぬ、すっかり更生しきった様子に感心します。


「さて。五人とも、素晴らしい戦いを見せて下さったので、約束のご褒美はもちろん差し上げます」

「よっしゃあっ!」


 ガッツポーズをして声まで上げて喜んだのは真山君。そして、小さくガッツポーズをして喜んだのは仁科さん。

 ちなみに、真山君は新しい銃。仁科さんは温泉旅行のペアチケットがご褒美です。なお、仁科さんは三森さんを誘うつもり、とのこと。


 一方で、不安げな表情を浮かべたのは鈴原さんと木下さん。


「あの、本当にいいんでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」

「今さらですけれど、随分大胆にお願いしてしまった気がするのですが」


 この二人のお願いは、それぞれが乙木商事で担当する部署へのボーナス的な予算の増額です。かなりの額を要求されましたが、おそらくこの二人であれば有効活用してくれるはずですから、問題ないはずです。


「むしろ、個人的なお願いでなかったことにこちらが申し訳ないぐらいですよ」

「そうですか? では遠慮なくいただきますね」


 私が本心を告げると、安心したように鈴原さんが言います。同様に木下さんも安心した様子。


 四人分のご褒美は確定しました。ですが、最後の一人、涼野さんのご褒美は未だに決まっていません。


「では、涼野さん。ご褒美には、何をお求めになりますか?」

「えっと、そんじゃあ、かいちょーに、その。えっと」


 もじもじしながら、涼野さんは願望を口にします。


「頭を、撫でてほしいなぁ、って。頑張ったねって言ってほしい、っていうか」

「なるほど。それだけでいいのですか?」

「うんっ!」


 それぐらいならお安い御用です。私は涼野さんの頭に手を置き、優しく撫でながら言います。


「よく頑張りましたね、涼野さん。素敵でしたよ」

「う、うん!」

「貴方が今の貴方になるまでどれだけ努力したのか。私は、よく知っています。それも含めて、涼野さんの頑張りはとても尊いものだと思っています」

「えっと」

「本当に、よく頑張りましたね」

「うんっ。ありがと、かいちょー」


 涼野さんは、涙目になりながら笑顔を浮かべました。

 その後しばらく、涼野さんを撫で続けましたが、やがて涼野さんの方からこれぐらいで、と言って離れます。

 これで、五人分のご褒美は無事確定しました。


 さて。それでは今日の本題に戻りましょう。

 私は勇なる翼の五人から離れ、ヴラドガリアさん達の方へと近づきます。


「おめでとうございます、無事第一関門突破ですね」

「うむ。妾の配下は強いのじゃ。サティーラ、よくやったのじゃ」

「魔王様にご満足頂けて光栄です」


 満足そうにしているお二人ですが、申し訳ないのですが事実を突き立てて行きましょう。


「この第一関門が、我が乙木商事の所有する戦力の中では、一般兵の中でも最高クラスのものとなります。さすが魔王様の側近ですね。一般兵では相手にならない、といったところでしょうか」

「ほう、一般兵とな?」


 ヴラドガリアさんの視線が鋭くなります。

 事実、勇なる翼は召喚勇者である為ポテンシャルは高いのですが、普段から戦いに身を置いているメンツではありません。

 ですので、日頃から訓練を受け、鍛え上げられた乙木商事の警備部門に所属する社員とほぼ同格となります。


 さすがにチートスキルもある分、勇なる翼の方が有利ですが。それでも、警備部門の平社員であれば良い勝負をしてくれるでしょう。


「くっ、いい気になるなよ! 次の関門に案内しろ!」


 一般兵相手に自慢げな態度を取っていたことを恥じたのか、サティーラさんは顔を赤くしながら怒りの声を上げます。


「ええ、もちろんです。それでは第二関門に向かいましょう」

「ふふ、これはなかなかに楽しめそうじゃのう」


 ただ一人、楽しそうに笑うヴラドガリアさん。

 そんな魔王軍の皆さんを引き連れ、私は次の部屋、第二関門へと向かって歩き出しました。

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