05 冒険者パーティ、勇なる翼
その冒険者パーティの名前は『勇なる翼』。我が乙木商事で働く召喚勇者の中でも、高い実力を持つ方々が集い結成された冒険者パーティです。
元々は趣味のような形で始まったパーティなのですが、今では活動も本格化しており、乙木商事と直接契約して素材採集の依頼を受ける場合もあるようになっています。
そして肝心のパーティメンバーですが、まずはリーダーであり『魔法無効化』のスキルを持つ仁科雪さん。
次に副リーダーであり、発起人でもある『絶対鑑定』の真山正蔵君。
お目付け役として、元教師でもある『完全回復』の鈴原歩美さんと、『暗殺術』の木下ともえさん。
最後に、なんとかつて我が乙木商事で数々の問題行動を起こした『魅了魔法』の涼野美沙さん。
この五人が勇なる翼の中心メンバーとなります。
「ほう、ただの冒険者ごときが我々を相手出来るとでも?」
何やら癇に障った様子で、サティーラさんが声を上げます。
「そうですね。私は、この五人であれば後ろの兵士の皆さんを相手にすれば十分に戦えると思いますよ」
「彼らは我が魔王軍のエリート達だ。一般兵などではないぞ?」
「ええ、それも把握していますよ」
むしろ、ちゃんと魔素量等を測定済みですからね。
その数値からどの順番で戦うかを決めてありますので、むしろ当然のこととも言えます。
そもそも、言ってしまえばこちらこそただの冒険者ではなく、召喚勇者ですしね。
「では、第一関門では冒険者パーティ『勇なる翼』対、魔王軍エリート兵士の皆さん、という構図で構いませんね?」
「ふん、望むところだ。人数差を理由に後から文句を付けるなよ?」
「もちろんです」
挑発的なサティーラさんの態度も、私は軽く流しながら答えます。
「では――双方、構えてください」
私が宣言すると、勇なる翼の皆さんが前に出てきます。
「ここで終わらせるぐらいのつもりで、やらせてもらうわ!」
自信ありげに語りながら、一番前に出たのは仁科さん。大きな盾と片手剣を構えており、パーティではタンクの役割を担っています。
「会長! 勝てば約束どおり、アレをよろしくおねがいしますっ!」
続いて前に出たのが真山君。装備はカッコいいから、と本人が言っていた理由により二丁拳銃。魔力を弾丸にして打ち出す特別製の魔道具です。
ちなみにアレとは、真山君用の新しい銃の制作です。彼は時折、こうして取引によって専用装備を手に入れています。現在装備している二丁拳銃も同様の手段で手に入れたものです。
「それよりも貴方たち、怪我しないように注意しなさい」
盛り上がる二人に忠告をしたのは、ヒーラーを担う鈴原さん。治癒の魔法を使うらしく、その系統の魔法を強化する杖を装備しています。
「まあ、私が後ろから守りますから。鈴原先生も安心して下さい」
そう言って、短剣を構え鈴原さんの前に出たのは木下さん。短剣の他にも複数の隠し武器を装備しており、パーティでは斥候や遊撃を務めています。
「いいとこ、見せるもんね!」
そして最後に言って杖を構えたのが、涼野さん。攻撃魔法を扱う後衛の攻撃力の要となっており、鈴原さんと同様にパーティの後方に立っています。
勇なる翼の五人が構え終わり、戦闘準備が完了したのと同様に、魔王軍側のエリート兵士達も準備を終えた様子。
前衛と後衛に分かれ、それぞれが装備を取り出し、臨戦態勢となっています。
双方の準備が整いました。いよいよ、第一関門開始です。
「それでは、勝負を開始して下さい」
私がそう宣言することで、いよいよ戦いが始まります。





