04 第一関門
乙木ビルの地下へと通じる階段を下り、さらに進むと真っ白な廊下が続く空間に出ました。
「ここからが、乙木ビル地下の戦闘を想定したエリアです」
私が言うと、ヴラドガリアさんは感心したように周囲を眺めながら語ります。
「ほう、ここがそうなのじゃな? 白く美しい、見たことの無い素材じゃが」
「ええ。我が乙木商事が開発した、新素材セラミックスです」
「せらみ、なんちゃらというものは分からぬが。汝らが生み出したというのじゃな?」
「そうですね」
私は頷き、さらに説明します。
「ここで使われているセラミックスは、魔素を分散させながら浸透させる効果を持っています。簡単に言えば、魔法の無効化ですね」
「ほう、無効化とな?」
「ええ。容量に制限があるので、無限にとはいきませんが。この先にある、関門エリアでは私が全力で攻撃をしても平気な程度には容量を確保してあります」
質量に応じて魔素を分散吸収する素材なので、鎧などには使用できない素材です。しかし、この地下エリアのような、激しい戦闘を想定した空間では、魔法に対する高い破壊耐性を持つ優れた建材となります。
「なるほど。では、試しても問題は無いのじゃな?」
「ええ。ヴラドガリアさんの攻撃は、さすがに廊下では遠慮いただきたいのですが。他の方であれば」
「では、サティーラよ」
「はっ!」
ヴラドガリアさんの指示を受け、サティーラさんが壁に向かって手をかざします。
そのまま光の魔法が掌の前に収束してゆき、十分なエネルギーが集まったところでレーザーのように輻射されます。
が、その魔法のエネルギーは壁面と衝突した段階で見事に霧散し、無効化されてしまいます。
「くっ」
「ほうほう、サティーラでも無理であれば、我が軍では妾以外には破壊不可能じゃろうな」
悔しそうな表情を浮かべるサティーラさんと、面白そうに壁を眺めるヴラドガリアさん。
また、サティーラさんの攻撃すら無効化されたことを見て、後ろに続く兵士達も驚きの表情を見せていました。
ちなみに、壁面に吸収された魔素はそのまま外部へと抽出し、別の場所にある魔素貯蓄施設へと送る仕組みとなっています。
太陽光やその他の手段でも集められた魔素は、全てこの魔素貯蓄施設に一度集められ、各施設で利用する為に再度送り出されます。
言わば、現代日本における発電所のような役割ですね。
そうした仕組みがあるため、この空間で吸収された魔素は再利用されますし、時間で飽和状態が解消される為、素材の張替えなども必要ありません。
このように非常に都合が良い構造をしている為、普段は戦闘訓練を行う為の施設としても利用しています。
「さて、そろそろ第一関門です」
私は、前にある大きな扉を見据えながら言いました。取っ手などの付いていない、恐らくはヴラドガリアさん等には見慣れない形状の扉です。
「ほう、これが扉なのじゃな?」
「ええ、見ていてください」
私は扉に近づくと、その脇に設置されている認証装置に掌を翳します。
すると、装置が私の魔素の特徴を読み取り、データベースと照合。一致している場合ロックが解除され、扉が左右にスライドして開きます。
「さあ、開きますよ」
そして認証が完了し、いよいよ第一関門の扉が開きます。
「ほう、これはなんと、面妖な」
スライドして開く扉を見て、その奇妙さに驚く皆さん。
ですが、本番はここからです。
「さて、お入りください。その後、第一関門の説明を致します」
私に促され、ヴラドガリアさん達はぞろぞろと第一関門の部屋へと入ってゆきます。
それに続き、私も入ります。
「では、第一関門についてですが。対戦相手は我が乙木商事とも契約を結んでいる冒険者パーティとの戦闘となります」
そう言って、私は部屋で先に待っていた冒険者パーティの皆さんに視線を送ります。
そこに待っていたのは、今となっては見慣れたメンツ。
「待ちくたびれるところだったわ」
そう呟いたのは、召喚された勇者達の一人であり、今回協力してもらう冒険者パーティのリーダーでもある仁科雪さん。
そしてその後ろには、同様に召喚勇者の皆さんが並んでいました。
一挙連続投稿、一日目終了です。
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