01 魔王登場
お久しぶりの投稿再開です。宜しくおねがいします。
乙木ビル、防衛対策本部。
アラームの鳴り響くその部屋に、私は入室してすぐに状況確認をします。
「何があったのですか?」
「未知の莫大な魔力反応が検知されました!」
報告を上げてくれたのは、我が乙木商事の防衛対策部門で雇用している職員の一人です。
タッチパネル操作の可能な無数の魔導コンピューターを操作しながら、状況の把握に努めているようです。
「規模は魔力圧、魔素量共にSクラス以上! 過去に無い規模の反応です!」
「なるほど、だとすると恐らくは」
「会長ッ!」
私が推測を口にしようとしたところで、また別の職員が報告を上げます。
「魔力反応ですが、非常に高速で移動を続けています! 進路予測は、七十パーセント以上の確率で乙木ビル本社と重なります!」
「では、もうほぼ確定ですね」
私はついに、革新的な言葉をはっきりと口にします。
「ついに、来たようですね。我々の最大の敵、魔王が」
その言葉を受けて、職員たちの間に一気に緊張が走ります。
「では、既に決めてあるとおりのオペレーションを実行します。各自、速やかに行動を開始してください」
私の指示を受け、職員たちは行動を開始します。
いよいよ始まるのです。私と、魔王の戦いが。
様々なシミュレーション、予測とプランニングの上で、これからは行動していきます。
今回の作戦、何が何でも成功させなければなりません。
私は魔王の到着予想地点、乙木ビル本社前にて一人待ちます。
今回の作戦、魔王と正面からの衝突を避けることに最大の意味があります。
もし仮に乙木商事と魔王が直接の戦闘を繰り広げた場合、その被害は計り知れないものになるでしょう。
ですからこうして、交渉と取引の為にまず私が矢面に立つ必要があるのです。
「来ましたね」
少し待っていると、遠くから複数の人影が空を飛びつつ接近してくるのが見えました。
その接近速度はかなりのもので、みるみるうちに距離は縮まり、すぐに姿の詳細が確認できるぐらいになりました。
「ほう、妾の接近を事前に把握しておったとは。中々にやりおるのう?」
そう声を上げたのは、接近してきた集団の先頭に立つ人物。長く輝くような美しい銀髪に、真っ赤な瞳を持つ少女。いえ、幼女と呼んでも差し支えないほどの幼い外見をしています。
ただ、人間の幼女と異なるのはその頭部。まるでオーガなどの魔物のような、大きな角が左右に一本ずつ生えています。
「魔王様、お気をつけください。魔王様の隠蔽を見破る程ともなれば、相応の術士のはずです」
次に口を開いたのは、魔王と呼ばれた幼女に続いて地面に降り立った女性。まるで天使のような翼を持った背の高い美女です。
「ほう、術士ならば吾輩の出番では無いな。つまらぬ小細工をされては興醒めだからな」
そう語りながら続いて降り立ったのは、獅子のような姿を持つ、恐らくは獣人と呼ばれる人種の男性です。
今回訪れた一同の中で最も体格が優れており、二メートルを軽く超える身長に、丸太のような太さの筋肉に包まれた手足を持っています。
そして、三人に続いて十数人の男女が降り立ちます。その姿は二番目に降り立った美女と同じく、天使のような翼を持つ者ばかりです。
さて、いよいよ交渉開始といきましょうか。
「ようこそいらっしゃいました。私がこの乙木ビルの代表者であり、乙木商事の会長を務めております、乙木雄一という者です」
「ほう? 本丸が自ら顔を見せるとは、随分と余裕があるようじゃのう?」
私の名乗りを受けて、魔王と呼ばれた幼女がニヤリと笑います。
ひとまず、すぐさま戦いが始まる、といった雰囲気ではなさそうで安心しました。





