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21 冒険者ギルド




 王宮を離れて城下町を歩く私ですが、目的地は決まっています。

 それは、冒険者ギルド。


 まず、この世界は魔物の徘徊や魔法という存在などが理由で未開の地が多く残されています。

 そんな未開の地にも、様々な資源はあります。むしろ、人が住めないような環境だからこそ、魔法的に優れた資源が数多く眠っているとも言えます。

 そうした貴重な資源を採取する為、そして何より魔物そのものを資源として狩る為、それを専門とする労働者が存在します。

 それが、冒険者という存在です。


 そして冒険者ギルドとは、元々はほとんどならず者同然だった冒険者をまとめ、管理し、規則をもって統率した組織のことです。

 好き勝手やっていた個人事業主を集めて契約し、決まったフォーマットで働かせることで効率化。そういうイメージで考えると分かりやすいでしょう。

 もっと言えば、フランチャイズのようなものです。冒険者だけでは困難な仕事を、ギルドという大きな組織が肩代わりする。その代わり、冒険者にはギルドが指定する一定のルールを守って働いてもらう。そして冒険者が上げた利益の一部がギルドのものとなる。


 ここで重要なのは、冒険者は元々ならず者のような存在だということです。未開の地に入り、魔物を殺し、貴重な資源を売り歩く。蛮族のような存在が、本来の冒険者だったのです。

 しかし冒険者ギルドは、そんな蛮族達を管理する必要がありました。その過程で必要だったことの一つが、身分証です。


 決まった街に滞在せずあちこちを渡り歩く冒険者は、ある街では信頼される冒険者だとしても、別の街では新参のならず者です。これでは実力のある冒険者が働く上で、極めて不合理です。一から信頼を築き上げるのは、大変な作業になるからです。

 そこで、ギルドが冒険者の身分、そしてその実力をランク制で保証します。するとその冒険者は、どの街に行ってもある程度の実力があることが一発で分かります。すぐに実力者向けの仕事を任せることが出来て、効率的なわけです。


 このシステムは、現代日本のフランチャイズ展開する企業でも見られるものです。

 ある店舗の従業員の技術を、企業がレベルやランクといった形で保証します。すると、例えば近隣の同じフランチャイズ店舗で人員が不足した時に、即座に応援に出し、穴を補えるわけです。

 もしもレベル制がない場合、応援は人と人の信頼を元に出す必要があります。そして信頼を築き上げるのは時間がかかりますし、広がりにも限度があります。一人の店員が持つ能力を活かしきる場所が狭まってしまうわけです。


 ちなみに、私の働いていたコンビニでも同様のシステムは存在しました。が、オーナーの方針でよそからの応援を受け入れないようにしていたので、仕方なく私が穴を埋めていました。応援をしない、されない以上、横の繋がりを持つ人間が存在しないため、店の人間だけで穴を埋めなければならなかったのです。


 とまあ、あまり良くないことを思い出している場合ではありません。

 考え事をしているうちに、冒険者ギルドに到着しました。


 ちなみに、場所については事前に調べてありました。それに、シュリ君のくれた餞別の中には王都の地図も入っていました。迷うはずもありません。


「おう、そこのおっさん! 邪魔だ退きな!」


 私が冒険者ギルドの看板を見て建物を確認していると、後ろから声がかかります。恐らく、入り口の近くで邪魔だったのでしょう。慌てて隅に寄ります。


「申し訳ありません、以後気をつけます」

「おう! えらく丁寧だなおっさん! 気にすんなよ!」


 声をかけてきた男――大柄で筋肉質な、いかにもという感じの冒険者さんは言います。そしてギルドの扉を開き、中へ入っていきました。

 背中には、狼のような生き物の死骸を背負っていましたね。恐らく、倒した魔物の素材を買い取ってもらいに来たのでしょう。


 さて、見学で満足している場合ではありません。

 今回私が冒険者ギルドに来た理由は二つ。


 冒険者になり、身分証を手に入れること。

 そして冒険者として依頼を受け、最低限の資金を貯めること。

 これを達成するために、冒険者ギルドまで足を運んだのです。


 全ての成否は、ここから始まり、ここで決まると言っても過言ではありません。


「よし。気合を入れていきましょうか」


 私は自らの顔を両手でパンっ、と挟み、気合を入れてから冒険者ギルドへと足を踏み入れます。

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― 新着の感想 ―
[一言] オトギンのコンビニのオーナー、自分からブラック化してそんなんじゃ長続きしない。てか、ブラック部分全部背負ってたオトギンいなくなったからさぞやな惨状だろうな
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