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26 現代日本人は優秀




「新しい事業に手を付けるよりも。施設を作るよりも。商品開発をするよりも。管理職を任せられる人材を育てることの方が、ずっと難しく、時間がかかります。すでに乙木商事の従業員のうち、優秀な人材は各地で店長を努めていたりしますので。これ以上子会社を増やすとなると、最近入ったばかりの新人を管理職を任せられるまでに育て上げなければなりません」


 そうなれば、実際に子会社を設立するまでに一年や二年では足りないほどの時間が必要となるでしょう。


「そこで、今回のお話に繋がります。皆さんを、我が乙木商事の役員、あるいは管理職以上を務める職員として雇いたいのです」

「あの、質問があるんですが」


 手を上げ、声を出したのは仁科雪さんです。


「私たちは、日本では普通の学生でした。急に仕事をしてくれって言われても、出来るかどうか分からないんですけど」

「そこはご安心ください。現代日本で義務教育を受けた皆さんなら、間違いなくすぐに管理職として通用しますから」


 私は安心させるように言ってから、より詳しく解説します。


「まず、この世界の一般的な労働者のレベルは高くありません。三桁以上の四則演算が出来ない人も少なくありません。中には、文字の読み書きも怪しい人だっています。そんな状況下で、義務教育を終え、複雑な四則演算をすることも可能な皆さんは労働者としてとても優秀な部類に入ります」


 言うと、仁科さんは納得したような表情を浮かべます。


「それに、日本人ですからね。言われたことを、言われたとおりに、正直にこなす。それが出来るというだけでも、十分に優秀です。残念ながら、この世界の人達はかなり適当ですから。これから管理職になる以上、皆さんも苦労することになると思いますよ」


 私が冗談っぽく言ってみせると、ちらほらと苦笑を浮かべる子が見当たりました。どんな苦労をするのか、想像がついたのでしょうね。


「では、質問は他にありませんか?」


 私が尋ねると、特に誰も挙手することはありませんでした。ひとまず、ここまでは了解したということでしょう。


「それでは。ここからは、皆さん一人一人に適切な役職を割り振っていきましょう」


 こうして、各自へと様々な役職の割り振りが始まりました。

 中でも、食品事業についてはクラス担任であった木下ともえさんに任せることに。養護教諭であった鈴原歩美さんには、乙木運輸にて治療業務を統括してもらうことにしました。

 他にも様々な役職に、少年少女達を割り振っていきます。私の見覚えのない子達も新しく金浜組に入っていたので、そういった子についてはよく話し合ってから役職を決めます。


 ただ、残念なことに松里家君はどの役職も割り振ることが出来ませんでした。さすがに賢者スキル持ちともなると、王国が手放してはくれないようです。同様の理由で勇者の金浜君、聖女の三森さん、剣聖の東堂君は引き抜き出来ません。



 そうしておよそ二時間ほどかけて、この場に集った全員に役職を割り振り、引き抜きについての詳細をまとめ、本題は終了しました。


「さて。これで全員に役職を割り振りましたね。以上で今日は終わろうと思うのですが」

「すみません、乙木さん。少し待ってもらえますか」


 ここで、松里家君が声を上げます。


「実は、もう一人だけお願いしたい奴がいるんです。遅刻で、今はここに来ていないのですが」

「ほう、遅刻ですか」


 となると、二時間も遅刻していることになりますね。

 松里家君は心底申し訳無さげな表情を浮かべています。どうやら、相当な問題児なのでしょう。事実、この場に居ないというやらかしをしているわけですし。


「分かりました。その子についてはまた後日」

「ちぃ~っす! 遅れてごめんねぇ~」


 私が松里家君へと了解の旨を告げようとした時。突如会議室の扉を開け、軽い調子の声が響きました。

 まるで反省していない様子で入ってきたのは、一人の少女。派手な金髪にピンク色のメッシュが入っており、それをポニーテールに纏めているのが特徴的に見えます。


「おい涼野ッ! お前が参加したいって言ったんだろう! なんでこんな時間になるまで来なかったッ!」

「え~? いや、朝ダルかったし。起きらんなかったんだからしょーがないじゃん?」


 悪びれない少女は、松里家君の苦言も半笑いで受け流します。

 私の隣に座っている有咲が、その様子を見て声を漏らします。


「え、美沙じゃん。なんで?」


 どうやら、有咲とも関係がある人物のようですね。

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