18 乙木商事
魔導車の完成、販売開始から、さらに半年後。
かつて国から頂いた工場用の土地も手狭となり、更に新しく土地を買い、魔導車専用の工場まで立ち上げました。
そして、貨物輸送用の魔導車も多数導入したことにより、物資の輸送効率が劇的に向上。
私の魔道具店は、王都から離れた都市にも、次々と支店を展開していくことが可能となりました。
そうしてわずか半年の間に、事業が急成長し、さすがに私がすべてを管理し、把握するというのが難しくなってきました。
すでに工場のことはもちろん、魔道具店のことも自分が手を出す余裕が無い状態です。これに加えて遠方の支店のことともなると、さすがにキャパシティオーバーです。
そうした理由から、私はある決断をしました。
それは、事業の子会社化です。
例えば、工場と魔道具店それぞれ子会社の所有するものとします。そして、子会社の代表者にそれぞれを管理してもらい、その報告だけを上である私の方へと送ってもらいます。
そうして管理を効率化することで、事業全体を管理しながらも、さらに巨大化させることが可能となるわけです。
そして、それぞれの子会社を管理する、大本の事業。つまり私が代表者となる親会社の立ち上げもすることになりました。
名前は『乙木商事』です。単純ですが、こういったものは分かりやすさが大事ですからね。
そして工場の方は『乙木工業』、魔道具店の方は『乙木商会』という名前の子会社にしました。
乙木工業の方はシャーリーさんに、工場の方はマリアさんに経営を任せます。
そして店長の座が空いた魔道具店の本店では、ティアナさんとティオ君を店長に任命しました。
と言っても、店長の業務を任せるのは魔道具店でこれまで働いてきた店員さんです。お二人は冒険者としての活動がしたいということなので、本店の看板役として大いに活躍してもらう予定です。
ただ、経営の知識も学びたいとのことでしたので、一応は店頭としての業務もいくらか経験していく形になりそうです。
そして魔導車も使った輸送業、そして警備業の会社も子会社化します。孤児院の子たちも、ずいぶん成長しました。背も伸びて、一人前になった男の子も多いです。
冒険者を引退した方や、元騎士団の方なども雇っていましたが、中枢メンバーは孤児院出身の子たちで構成しようと思っています。
子会社の名前は『乙木運輸』。社長はジョアン君に任せ、経営のサポート役として魔道具店の本店の方から何人かの大人を引き抜く予定です。
が、ここで問題が発生しました。
なんと、ジョアン君と連絡が付かないのです。
どうやらここ最近、長期休暇を取得してどこかへ行っているらしく、誰も姿を見ていないというのです。
別に休暇明けに話をする形でもいいのですが、こうした連絡は早いほうがいいですからね。迷惑でなさそうなら、こちらから出向いて詳しい話をお伝えしておきたいものです。
というわけで、ジョアン君がどこに行っているのか、聞き込み調査を開始しました。
孤児院の子達によると、どうやら最近は松里家君と随分仲良くなり、交流していたのだとか。もしかすると、その松里家君であればジョアン君がどこへ向かったのか詳細を知っているかもしれません。
また、金浜組に所属する召喚勇者の皆さんにも色々と用事があります。なんにせよ、王宮の方には一度足を運ぼうかと思っていたところです。
そうした理由で、私は王宮に向かい、まずは松里家君を訪ねることとなりました。





