20 シュリ君とアレの約束
シュリ君の頭を少しだけ撫でたら、すぐに話に戻ります。
「で、その収納袋には少しのお金といくらか魔法に使う小道具、それにちょっとしたものが入ってるんだ」
「ちょっとしたものですか」
「うん。待ってね、今取り出すから」
そう言って、シュリ君は収納袋の中に手を入れて、がざがざと中を探ります。随分手を深く飲み込んでいますが、袋が変形することがありません。腕を動かしても袋は萎んだ形を維持しています。どうやら、本当に特殊な袋のようですね。
「あったあった、これこれ!」
そしてシュリ君は、一冊の本を取り出しました。表紙には手書きで『付与魔法 記録』と書かれています。それ以外は何もありません。
「これは?」
「ふふふ、聞いて驚くなかれ。これはこのボクが昔付与魔法を研究した時に調べたデータを纏めたノートなのだ!」
「ほうほう」
「ちょっとは驚いて! ねえ、オトギン素直すぎるよ!」
「はあ、でも驚くなかれと言われたものですから」
「言葉のあやってやつだよ!」
「では今後多少驚くように心がけます」
答えながらも、私はシュリ君から本を受けとって中身に目を通します。確かに、手書きらしい文字で複雑な付与魔法に関する情報がたくさん記載されていました。
「人に見せるつもりで作ったものじゃないから読みづらいかもしれないけど、これから付与魔法を頼りに生きていくオトギンには必要なものかと思ってね。特別にプレゼントするよ」
「いいのですか?」
研究者の研究結果を、こんなにあっさり渡してしまうのは良くないように思います。
「だから言ったでしょ、オトギンはボクの弟子だって」
なるほど。つまり、私は弟子という肩書きがあるので問題ない、ということでしょう。
恐らく、シュリ君は宮廷魔術師ですから研究内容も国の資産の一部です。となれば、情報統制もあるでしょう。迂闊に大事な研究結果を渡すことは出来ないはずです。
となれば、弟子という肩書きも必要なものになるのでしょう。
しかし、こんな私の為に大切な研究結果を一部分とはいえ渡してくれるなんて。シュリ君には、何とお礼を言えばいいのか分かりません。
「ありがとうございます、シュリ君。本当にお世話になってばかりで、お返しできないのが申し訳ないです」
「そう。だったらさ、一つお願いがあるんだけど」
シュリ君が顔を赤らめながら言います。
「何でしょう?」
「そ、そのぉ。ほら。オトギンって童貞って言ってたでしょ? も、もしその気があったらさ。よかったらボクと、そういうことしてくれないかなぁ、って? 思ったり? する感じだったり?」
「いいのですか? それは私にとってご褒美になりますが」
前のめりに訊いてしまいます。シュリ君はどう見ても美少女にしか見えないお爺さんです。となれば、私としては性行為に及ぶのもやぶさかではありません。童貞の歪んだ性欲を舐めてもらっては困ります。
「も、もちろんボクとしては、オトギンが嫌じゃなければ、なんだけど」
「嫌なわけありません。童貞を舐めてるんですか?」
「なんか変に自信あるね、オトギン。でも、嬉しいよ! ボクを最初っから受け入れてくれる人なんて、初めてだから」
顔を真赤にして照れるシュリ君。可愛らしいですね。お爺さんだということをつい忘れてしまいます。
「じゃあ、オトギン。またいつか、ボクの心の準備ができたら、ボクのお尻でオトギンの童貞を捨ててくれるかな?」
「もちろんです」
前のめりに即答します。
「ありがとう、オトギン! 約束だからね!」
「はい、約束します」
それが、最後の会話となりました。シュリ君は嬉しそうな笑顔を浮かべて、王宮の方へと戻っていきます。
「うへへ、三十五年モノのダメそうなおっさんの童貞。じゅるり」
シュリ君が何かを言いながら立ち去っていきましたが、残念ながらよく聞こえませんでした。
さて。シュリ君から素晴らしい餞別も頂きました。童貞を捨てる予約まで出来てしまいました。幸先が良い、順風満帆とはこのことですね。
私は気分良く、王宮から追放されて城下町へと歩いていくのでした。
本日の連続投稿分はここまでで終了です。
変態ショタジジイ、シュリヴァ君はいかがでしたでしょうか?
ちなみに、メインヒロインではありません。
サブヒロインです。
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