13 アナログ回路
そうして、魔導回路の開発に着手してからおよそ半月。私が当初予定していた部品の、全てが完成しました。
しばしばカルキュレイターの力に頼ることにもなりました。お陰で感情が増幅される副作用にも少し慣れて、今では十分近く発動し続けられるようになりました。
ちなみに、私が大学で機械工学系の知識を学んでいたからこそ、カルキュレイターを使って解を得ることが出来ました。なので、この部分は有咲には任せることは出来ませんでした。自分一人で開発しなければならず、なかなか大変な作業では有りました。
ともかく、そうした経緯にて、無事魔導回路は完成しました。
まあ、正確に言えば、魔導回路に使うような主要な素子の開発が完了したというだけなのですが。
これからも、必要に応じて新しく素子を開発することはあるでしょう。
そして現在、完成した素子のお披露目会です。
「さて有咲。完成した魔導回路の素子がこいつらだ!」
有咲にも、完成品について知ってもらう必要がありますからね。こうして、お披露目会をする必要もあるわけです。
「結構たくさんあるんだな。一つずつ、説明してくんない?」
「ああ。まずはこいつ、回路に使う魔素導線だ。導魔鋼だと高価すぎるから、安価な金属を使って代用した。表面に魔力絶縁体のコーティングをしてある」
言って、私は魔素導線を持ち上げて見せます。
「ちなみに、こういったコーティングが可能な導線には安価な金属を使うんだが、難しいもの、例えば微細導線なんかは導魔鋼を使うことで対処するつもりだ」
「なるほどね。導線の種類を、用途に合わせて変えるってことね」
ふむふむ、と有咲は頷きながら魔素導線を見つめます。
「次にこれが『魔力抵抗器』だ。基本的には、魔素と反発する性質のある金属『ドラグナイト』を含む物質で作ってある」
かつて私が発見した、ドラグナイトと名付けられた金属。これが抵抗器を作る上で都合が良い物質でしたので、使わせていただきました。
基本的には、ドラグナイトの含有量によって抵抗も上がってゆきます。
そして、抵抗の高さによって違う色の線を表面に描いており、ひと目見て抵抗の高さが分かるようにもなっています。
「で、こっちにいくつかあるのが、コンデンサー。魔力圧コンデンサーと、魔素コンデンサー、そして両方を蓄積する魔力コンデンサーの三種類がある」
「三つ以上あるけど、何の違いがあるわけ?」
「それは構造や素材の違いだな。それぞれ微妙に異なる性質を持っていて、用途によって使い分ける。あとは魔力容量にも違いがあるな」
「へぇ、なるほど」
納得した様子で頷きながら、有咲はコンデンサーを次々と確認してゆきます。まあ、この辺りは実際に使わなければ違いが分からない部分です。一つずつ詳しく説明するとキリがないですし、これぐらいの説明で一旦は十分でしょう。
「そして、これが魔素ダイオードと魔力圧ダイオード」
私が次に手に持ったのは、比較的大きめの二つの素子です。
「なんか、他よりも大きいね」
「ああ。ダイオードの持つ性質を再現するために、幾つかの構造と、魔法陣を内蔵してあるからな。どうしても大きくなってしまった。今後は小型化や、用途に合わせて機能の削減、分離をしたものも作るつもりだよ」
ダイオードに関しては、言った通り再現に手間がかかりました。整流作用の再現は簡単に済みましたが、他の作用を再現する為に工夫が必要となったのです。
結果、ダイオードはどうしても巨大化してしまいました。今後、実際に回路を組む時は、目的に沿って必要な機能だけを分離して使うことになるでしょう。





