04 スキル共有
「雄一が強くなれなくて、なんかの拍子に死んじゃって、アタシが一人だけ残されてさ。そんなの、何が幸せなんだよっ! ふざけんなよ! アタシのこと、幸せにしてくれるんじゃなかったのかよっ! そんなことになんない為に、アタシと雄一、二人で頑張るんじゃなかったのかよッ!」
一方的に責められている内に、だんだんと私も考えが変わってきます。
また、私は考え違いをするところだったのかもしれません。有咲を巻き込みたくない。犠牲にしたくない、というのは私の一人よがりな考えでしかないのです。
有咲にとって一番なのは、きっとリスクの無い人生じゃない。私と有咲、二人で力を合わせて、二人で幸せになろうと頑張ってゆく。
そんな、二人三脚のような未来を有咲は望んでいるのでしょう。
なのに、その有咲の望みを、私がただ有咲を巻き込みたくない、という独りよがりな理由で潰してしまうところでした。
これでは、まるで何も変わっていませんね。有咲を傷つけ、自分だけが納得できる選択ばかり選んで、逃げ続けていた時から、何も。
「有咲。本当に、いいのか?」
私は、有咲の覚悟を改めて問います。
「いいに決まってんじゃん。ちゃんと雄一が守ってくれるし、アタシのスキルが雄一のことを守ってくれる。その方が、絶対二人とも幸せになれる。そう信じて、力を合わせようよ。そんなことすら信じられないなら、アタシ達、夫婦になれないよ」
「そう、か。確かに、そうかもな」
有咲の言葉に、私もまた覚悟が決まります。
これから私は、二人で幸せになる道を探します。一番大切な人を傷つけるかもしれなくても。見ないふりをするよりは、しっかりとその可能性を受け入れた上で、そうならない為の最前を尽くしたい。
「分かった。やろう、スキル共有」
「うんっ!」
私は有咲を肩から抱き寄せ、有咲も私に体重を預けてきます。
そうしてお互いの体温を感じることで、心を落ち着かせます。少し、話し合いが過熱してしまいましたからね。
しばらく有咲と抱き締め合っていると、だんだん心も落ち着いてきました。頭も冷静に回るようになってきたので、いよいよスキル共有の魔法陣を書き始めようかと思います。
「よし、有咲。準備するか」
「うん。魔法陣はどこに描くの?」
「この魔法陣は、俺と有咲の身体に、同じ魔法陣を同じ場所へ描くことで成立するんだ。だから、一番いいのはお腹だと思う」
「そっか。じゃあ、雄一お願い」
有咲は躊躇う様子も無く、服をたくし上げてお腹を見せてきます。一瞬どきりとしてしまいますが、すぐに気を取り直し、言います。
「いや、まだ塗料も何も用意してないから、ちょっと待ってくれ」
「そ、そっか。気が早かったな!」
有咲は慌てて服を着直します。
その後、私が普段から魔法陣を描く時に使っている道具を用意し、改めて向かい合います。
「じゃあ有咲。お腹を見せてくれ」
「うん、ほら、どうぞ」
先程と同様、有咲は服をたくし上げてお腹を見せてくれます。腰周りに、水着の日焼け跡がチラチラと見えて、つい視線が吸い寄せられます。
が、ここは集中です。間違わないように、有咲のお腹へと筆を使って魔法陣を書いてゆきます。
「んっ、雄一っ! くすぐったいよぉ」
「悪い、有咲。少し我慢してくれ」
「わ、分かったけど、早く終わらせてくれよな」
顔を赤らめ、筆の走る感触に耐える有咲。ですが、早く終わらせようとして魔法陣を間違えてしまえば元も子もありません。慎重に書いてゆきましょう。
「あっ、んぅっ! もう、雄一っ! わざとでしょっ! ひゃうんっ!」
決してわざとではないのですが。今はとにかく、正確に魔法陣を描くのを優先します。





