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03 魂の永続付与




「まず前提として、俺はあの時、付与魔法の新たな使い方を発見した。人の身体に直接魔法陣を刻むことで、魂に付与魔法陣が作用して、半永久的に付与魔法が持続するっていう使い方だ」

「へえ、そんな使い方があるんだ。でも、それって危なくないの? 直接身体に魔法陣を書くんでしょ?」


 有咲の疑いはもっともなものでした。


「魔法陣そのものには、副作用は無いんだ。元々、付与魔法で人にスキルを付与する時点で、魔法が人に作用しているからな。魔法そのものが身体に悪影響を及ぼす可能性はほぼ皆無だよ」

「そうなんだ。じゃあ、どうしてアタシの命が危険になるわけ?」

「問題は魔法そのものじゃない。付与魔法によって、魂レベルで二人が繋がることでリスクが生まれるんだよ」


 私の説明の意味が理解できなかったのか、有咲は首を傾げます。私は理解してもらえるよう、より詳しく説明を続けます。


「具体的には、二人の人間の間でスキルを共有する魔法陣を、お互いの身体に刻む。そうすると、二人の間にパスが出来る。このパスを通じて、たとえばAとBの二人がスキルを共有したら、Aの意思でBのスキルをBに使ってもらうことが出来るようになる。そして、その効果もパスを通じてAの側で発動することが可能になる。これが、俺の発見したスキル共有の付与魔法陣の詳細だ」

「で、それの何が危険なわけ?」

「そのパスを通じて、お互いの魂、のようなものにも繋がりが生まれる可能性が高いんだ」


 私が言うと、有咲はようやく理解したように頷きます。


「そっか、要するに、スキル以外の何でも共有しちゃうわけね」

「ああ。基本的には、お互いの思っていることが伝わりやすくなるとか、そういうメリットにも取れる効果が多い。だけど、例えば片方が命に関わるような傷を負うと、もう片方にもその痛み、苦しみが共有される。そして片方が死ねば、恐らくもう片方も死んでしまう」


 大まかに言うならば、二人の魂が一つに繋がってしまうから、一人の魂が壊れたらもう一人の魂も壊れて、共倒れになってしまうといった感じでしょうか。

 ともかく、自分の負傷が自分だけの問題で終わらなくなるのは間違いないことです。


「そっか、そういうことね」

「ああ。だから俺は、この魔法は使わないことにした。もし俺に何かがあったら、って考えると、それに有咲まで巻き込んで傷つけて、最悪殺してしまうなんてとてもじゃないけど耐えられない」

「うん、ようやく話が理解できた」


 私の話をしっかり理解してくれたようで、有咲は頷きます。

 そして、予想外の言葉を口にします。


「でも、それさ、やった方がいいと思う」


 その言葉に、私はつい唖然としてしまいます。


「ほ、本気か?」

「当たり前じゃん。そうすれば、雄一は最強になるんでしょ? それで怪我したり、死んだりするなら、何もして無かったら尚更危険ってことになるじゃん。それに、アタシが一人だけ生き残るなんてのも嫌。最後まで雄一と一緒がいい」


 理屈としては、有咲の言う通りです。命を共有することでより強い力が得られるなら、その方が外敵に脅かされるリスクも下がります。結果的に、二人共より安全に生きてゆくことが出来るはずです。

 それでも、私に何かがあった時に、有咲まで犠牲にしてしまうのは嫌でした。


「それでも、俺は認めたくない。何か事故があった時、有咲まで巻き込みたくないんだ」

「アタシ、一人だけ残されるぐらいなら雄一と一緒がいいんだけど。それでも?」

「ああ、それでもだ」


 私と有咲は、互いに見つめ合います。しばらくそうしていると、有咲がふと口を開きます。


「じゃあ離婚するもんね!」

「えっ? いや、それは困る!」

「うっさい! 雄一がまだ何にも分かってくれてないから仕方ないでしょ!」


 怒った有咲が、一気にまくし立てて来ます。


「ちゃんと話し合って決めようって言ったじゃんっ! それなのに、もう約束破るの? 雄一が、勝手にアタシの幸せを決めて、アタシの未来はこうなるほうがいいって思い込んで、アタシの言うことなんか何にも聞いてくんないじゃん! こんなの、前と一緒じゃんっ! 雄一が結婚してくれる前と、なんも変わってないっ!」


 そこまで言われて、ようやく私は有咲の気持ちを理解しました。

 なるほど、たしかに私は、自分の考えを有咲に押し付けているだけなのかもしれません。

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