02 この期に及んで
互いに思いを共有し合って、二時間近くは経過したような気がします。
話はお互いの個人的な事柄から、魔道具店など私が展開している事業の今後の展開についてのことにまで広がってきました。
「じゃあ、雄一はまだまだ新しい事業に手を出すのは辞めないつもりなんだな?」
「ああ。この世界が、俺たちにとって厳しい世界だってことは変わりない。二人の幸せを第一に考えるなら、やっぱりどんな力でも欲しいし、あって困るようなことは無いはずだよ」
「まあ、それにはアタシも同意するけどさ。でも、最近みたいに、アタシのことほったらかしで仕事ばっかりになるんだったら、それは嫌だからな?」
有咲はいじけるような口調で、これまでの私の行動に対して苦言を呈しました。確かに、仕事が忙しかったというのもありますが、いくらなんでも有咲のことを放置していた時間は長すぎます。
正式に夫婦になったのですから、これからはそんなことは起こらないように気をつけなければいけないでしょう。
「分かった、気をつける」
「うん、それでよしっ!」
「それに何なら、有咲も一緒に仕事をするか? 俺と同じ仕事をするんだったら、二人でいつも一緒に居られるけど」
「え、でも、アタシが役に立つのかな?」
不安げに言う有咲ですが、むしろ私からすれば大歓迎です。
「むしろ、有咲のスキルがあれば大助かりだよ。前に付与魔法を使って、俺がカルキュレイターを借りて使った時も、かなり色々なことが進展したからな。有咲は間違いなく役立ってくれるはずだよ」
「そっか」
有咲は満足げに頷いてから、さらに訊いてきます。
「ところでさ。その、雄一がアタシのカルキュレイターを使った時って、色々なことが計算できて、理解できたんでしょ? それって具体的に、どんなことが分かったの?」
ちょっとこの質問は、答えに困ってしまいますね。
「えっと、それはまあ色々」
つい、話を濁してしまいます。
「それより、具体的な仕事の話をしよう」
「いやいや、露骨に話そらしてんじゃねーよっ!」
とまあ、さすがに有咲からツッコミを入れられてしまいました。
「で、どんなことが分かったんだよ? 正直に吐きな? 楽になるから」
有咲が私の頭をグリグリと拳で撫でるようにしながら、自白を求めてきます。
こうして隠し事をしていることがバレてしまった以上、話す他無いでしょう。隠し事をせずに話をしよう、と提案したのは私の方なのですから。
「実は、あの時カルキュレイターが導き出した答えの一つに、俺が最強になるための手段が示されてたんだ」
「へえ、それは良いことじゃないの?」
「ああ。デメリットさえ無ければ、だけど」
私の言葉に、有咲は眉をしかめました。
「デメリットって、どんな?」
「簡単に言うと、有咲の命を危険に晒すようなものだよ」
「うやむやにしないで。ちゃんと説明して」
この期に及んで、私はまだ隠し事をしようとしてしまっていたようです。
はぁ、と一度ため息を吐いてから、ようやく全てを正直に吐く覚悟を決めます。
「実は、俺が有咲のスキル、カルキュレイターを自在に扱う方法が見つかったんだよ」
そう言ってから、私はかつてカルキュレイターが示した可能性、半永久的なスキル共有の魔法陣についての話を始めました。





