01 未来予想図
あれから私と有咲は、王都に帰ってから魔道具店のご近所さんに挨拶へと向かいました。私と有咲が結婚することになった、と。
どうやら、色々な人が根回しをしてくれていたようで、上手く行ってよかった、などと安堵する人が多く居ました。
その後は、助けてくれた人たち全員にお礼に向かいました。特に、色々と面倒をかけてしまったルーズヴェルト侯爵、金浜君、三森さんには何度も頭を下げました。
そうして一通りの後始末が終わった後、ようやく私と有咲は、役所に向かい、手続きを済ませ籍を入れることになりました。
それがちょうど、今日のお昼過ぎのことです。
現在の時刻は夜。私は有咲の部屋で、有咲と二人きりで互いに向かい合い、椅子に座っています。
「有咲。今日から俺と君は夫婦になる」
「う、うん。そうだね。なんか、えーっと、照れるね?」
髪の毛を弄りながら、有咲は可愛らしい仕草で視線を逸しながら言います。何やら緊張している様子ですが、これから予定しているのは、恐らく有咲が想像しているようなことではありません。
「夫婦になる以上、大事なことが一つある」
「うん。アレ、だよね?」
「ああ。まずは、話し合いの時間が必要だな」
「へ?」
私の言葉に意表を突かれたのか、有咲は間の抜けた表情を浮かべて声を上げます。
「どうしたんだ、有咲?」
「い、いや! なんでもないっ! うん、大事だよな、話し合い! うんうんっ!」
そうして誤魔化すように言う有咲。どんな勘違いをしたのか、想像は難しく有りません。しかし、ここは黙っておいてあげましょう。
「俺たちは、ちゃんとお互いの考えとか、どう思っているだとか、どうしたいだとか。そういう話を全然してこなかった。最低限の、事務的なことしか共有できていなかった。だから、あやうく取り返しのつかないことになるところだった」
「うん、そうだな」
有咲も理解はしているのか、しっかりと頷いてくれます。
「だからこそ、これからはそんなことにならないよう、ちゃんと気をつけていきたいと思う。何をしたいか。どんなことを目標にしていくか。とにかくなんでも、自分が考えていることはお互いに伝え合って、共有していきたいと思っているんだ。どうかな、有咲?」
私が訊くと、有咲は頷いてから肯定してくれます。
「うん、いいと思う。アタシも、雄一がどんなことを考えてるか知りたいし、アタシのことも雄一にもっとちゃんと知っておいて欲しい」
「有咲」
可愛らしいことを言う有咲のことが愛おしくて、私はつい抱き寄せてしまいます。
「うひゃっ! ゆ、雄一っ?」
「本当に、可愛いやつだなあ、有咲は」
「ちょっ、まって、恥ずいし! 今そういう感じじゃなかっただろっ?」
有咲が照れているのか必死に抵抗するので、私も仕方なく手を離します。
「まあともかく、俺と有咲でよく話し合いたいっていうのは本当のことだから。今日のうちに、今まで話せなかった色々なことを話しておきたいんだ」
「うん、分かった」
そうして、この日の夜は私と有咲がお互いの好きなところや、直して欲しいところなど、様々な気持ちを言葉にして伝え合うこととなりました。
お久し振りです。投稿再開致します。
当分は隔日投稿を維持していけるよう頑張っていきたいと思っています。
宜しくおねがいします。





