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18 オトギンとシュリ君




「ボクがヨボヨボ老人で男だって聞いて、動揺しないとはなかなかやるねオトギン」


 何やらシュリヴァさんに感心されてしまいます。


「いえ、単に異世界ならシュリヴァさんのようなことも普通にあるのかな、と思いまして」

「ううん? 普通に珍しいけど?」

「そうなんですか。では以後驚くように気をつけます」

「どっちにしろ驚いておらんではないか乙木殿」


 マルクリーヌさんがツッコミを入れてきます。はて、私は何か変なことでも言ったのでしょうか。


「で、オトギンのお願いって何かな?」


 シュリヴァさんが、私の股間に胸を擦り付けながら無邪気な笑顔で訊いてきます。

 相手が男と分かっていても、この可愛い顔立ちは独身男性で童貞の私にはきついですね。


「実は付与魔法を教えていただきたくて」

「へぇ。付与魔法ねえ。不人気魔法なのに、何か理由でもあるのかな?」


 理由を問われたので、私は一部始終を話すことにしました。

 女神様に廃棄スキルを貰ったこと。廃棄スキルは人間向けではないので条件が満たせず、発動しないこと。付与魔法で物体にスキル付与すれば、有効活用できるのではないかということ。

 細かく話していくうちに、シュリヴァさんは真剣な表情に変わっていきます。やはり魔法が本職の方です。こうした話題には興味が引かれるのでしょう。


「なるほど。確かにオトギンが自称してる状況なら、付与魔法はとても有効だろうね。実はボクも昔、スキル付与を有効活用しようと試行錯誤したことがあってね。キミと近い発想で実験したことがあるんだ。高度な金属が持つスキルを、低俗な金属に付与する実験。結果は成功だったけど、魔法陣の構成の難しさと魔力コストから意義が低いと判断して、お蔵入りしたんだ」


 どうやら、私の発想は宮廷魔術師も一考するほどのアイディアだったようです。


「でもキミが自分のスキルを物質に付与するなら、それはとても低コストで難易度も低い。二日どころか、一日あればものにできるだろうね」

「おお、それは助かります」

「ついでに、付与魔法と似た体系の魔法陣も教えてあげるよ。きっと王宮を追い出された後も役に立つよ」

「ありがとうございます、シュリヴァさん」

「だから、そのかわりにね?」


 シュリヴァさんが、妖艶な笑みを浮かべて私に擦り寄ります。


「ボク、オトギンの童貞がほしいなぁ~?」


 媚びるような声で、シュリヴァさんがおねだりしてきます。


「はい、構いませんよ」


 私は取引を受け入れます。


 するとどうでしょう。話を聞いていたマルクリーヌさん。そして取引を提案した本人のシュリヴァさんでさえ顔を引き攣らせ、硬直してしまいます。


「あの、オトギン?」

「はい何でしょうか」

「えっとね、ボ、ボクはオトギンのさ、ど、童貞を貰おうって言ってるんだよ?」

「はい、把握しております」

「つまりだよ? オトギンはボクとえっちなことをするわけだよ?」

「そうなりますね」

「いいの? ボク男だよ? お爺ちゃんだよ? そんなあっさり男の尻に捨てていいの?」

「問題ありませんが?」

「なんでだよぉ!」

「私は恥ずかしながら、三十五歳にもなりながら未だ童貞でして。正直、そろそろ可愛ければ男でもいいや、という心境になりつつあります」

「なにそれ、想定外なんだけど!」


 シュリヴァさんが何やら怒っていますね。私は提案を呑まない方が良かったのでしょうか?


「乙木殿よ。お前のことを私は尊敬したほうがいいのか、軽蔑したほうがいいのかわからなくなってきたぞ」


 マルクリーヌさんまで私を非難します。どうやら、選択を間違えたようです。


「シュリヴァさん、不快にさせたのなら謝ります。申し訳ありませんでした」

「へっ? い、いや? 別にボクは気にしてないっていうか、むしろ嬉しいっていうか、そもそも少しも恥ずかしがってくれないオトギンに困惑してるっていうか」

「やはり私のせいですか。男女関係の情緒に疎いものでして。申し訳ありません」

「いや、そういう感じの話じゃないんだけどなぁ?」


 シュリヴァさんは困ったように唸ります。


「ひとまず、私では先程の取引条件ではシュリヴァさんを満足させることができないようです。申し訳ないのですが、新しい条件を提示していただければと思います」

「う、うん。わかったよぉ」


 シュリヴァさんは考え込むように頭を押さえます。やはり無理な提案をしてしまったようですね。もしかすると、付与魔法を学ぶのは望み薄かもしれません。


「じゃあ、新しい交換条件! オトギンはボクのことを、シュリ君って愛称で愛情込めて呼ぶこと! これで付与魔法を教えてあげるよ!」

「それだけでいいのですか?」

「うん、おっけーだよ?」

「ありがとうございます、シュリ君」


 私はシュリヴァさん、ではなくシュリ君の頭を撫でます。愛情を込めろと言われたので、行為でそれを示してみました。


「うへへぇ。ありがとオトギン!」


 満足げなシュリ君を見る限り、どうやら正解のようです。


 そこで急に、マルクリーヌさんがため息を吐きます。


「よく分かった。乙木殿。お前もシュリヴァと同じくアホで変態だったのだな」


 なんと。女神様に引き続き、マルクリーヌさんにまで変態の太鼓判を押されてしまいました。困りましたね。原因がよく分かりません。これでは撤回のしようもありません。


 仕方ないので変態の称号を甘んじて受けましょう。


「ありがとうございます、マルクリーヌさん」

「なぜ感謝するのだ! 本物の変態みたいではないか!」

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