20 改良案
軍の兵士が整列する広場に出ると、既に話は伝わっていたようで、私と有咲さんは高周波ブレードを装備する突破部隊の方へと案内されます。
そして部隊長の方とも挨拶を終え、いよいよ本来の目的のために質問を開始します。
「それでは皆さん。まずは高周波ブレードについてなにか不満点や、目立ったトラブルなどはありませんか?」
私が問いかけると、まず一人の兵士が挙手して答えます。
「この高周波ブレードさあ、もうちょっと頑丈になんないの? 戦場でポキポキ折れるからさぁ、けっこうめんどくせえんだわ」
その兵士の言葉に、ほぼ一同全員が頷きます。やはり、強度の不安は大きいようですね。攻撃力の代わりに頑丈さを失った剣では、打ち合いで防御的な使い方をすることが出来ません。
当てれば強力な攻撃になるとは言え、やはり不満や不安が大きいのでしょう。
分かりきっていたことではありますが、やはりこの部分はどうにか対処しなければならないようです。
「強度に関しては、今後何らかの方法で対処する予定です。他にはなにかありますか?」
私が問いかけると、一人の気弱そうな兵士がおずおずと挙手します。
「あの。ちょっとこの剣、切れやすすぎて危ないっていうか。オレ、先輩の足にケガさせちゃったことがあって」
「そりゃおめえが下手くそだっただけだろ、他に怪我したやつなんていねぇっつーの!」
どこからか突っ込みが入り、それに反応して一同がどっと笑い声を上げます。
気弱そうな兵士は俯いてしまいましたが、これは重要な意見です。確かに、高周波ブレードは混雑する戦場での取り回しが想定されている武器です。切れ味が良すぎる為に、味方にちょっと掠るだけでも怪我を負わせてしまう可能性が高いというわけです。
使い手の技量でどうとでもなる問題ではありますが、逆を言えば使い手のミス一つで味方が怪我をするような危険な武器でもあるということです。
これについても、早めに対処をしたほうがいいでしょう。
そして、その後もいくつか兵士から質問と意見が出てきました。が、それらは全て高周波ブレードの取り扱いに関する話題で、私が丁寧に説明をするだけで問題は解決しました。
とはいえ、正しい取り扱い方が伝わっていないのは問題です。取扱説明書のようなものも付属させるべきなのかもしれません。
「さて、では次です。耐刃ローブについての不満やトラブルはありませんでしたか?」
私が聞くと、今度もすぐに手が上がりました。
「使いづらい! 普通の武器ならいいんだけどよぉ。俺らの高周波ブレードだと刃に絡まったり、ローブの端を切り裂いちまったりして不便なんだよ」
「そうそう、もうちょっと動きやすいっていうか、ひらひらしてない方がいいよな!」
確かに、耐刃ローブは身体に密着するような装備ではありません。戦闘中に翻った裾が邪魔になることも多々あるのでしょう。
これが普通の剣なら、ただ布の表面を刃が撫でるだけで終わるのですが。こと高周波ブレードに限っては話が変わります。振動する刃がローブを巻き取ってしまうことも、端を切り裂いてしまいダメにしてしまうこともあるでしょう。
「わかりました。では、今後高周波ブレードを扱う部隊の耐刃ローブについては形状を考慮して制作していきましょう」
その後も幾つか質問をしていきましたが、目立った問題はありませんでした。一通りの聞き取りは終わったため、広場を離れます。
聞き取り終了直後に、軍は進軍を開始。私が質問を交わした高周波ブレードの突破部隊もまた、前線へと向かいました。
現在は、基地内部の一室にて有咲さんと共に待機中です。
「なあおっさん。高周波ブレードと耐刃ローブ、どう改良するつもりなんだよ」
退屈しのぎも兼ねてなのか、有咲さんが質問してきます。
「そうですね、まだアイディア段階でしかないのですが」
「うんうん」
「チェーンソーを作ろうと思っています」
私が言うと、有咲さんは一瞬の間を開けた後。
「は?」
それだけを呟きました。





