12 地上げ屋撃退
謎のイケメン男性がうんうんと唸っているところに、私は声をかけようか迷います。何やら立場のありそうな人物なので、話を聞いてみる方が良い気もします。
が、単なる変な一般男性という可能性もあります。その場合は無駄足です。
どうするべきか、と思案したところです。
「おう、邪魔するぜ」
トーフ蔵に、一人の荒くれ者が姿を現しました。見るからにガラが悪く、武器となる大きなバトルアックスを背中に背負った男です。
お客さんかもしれないと思い、お婆さんの方を見ましたが、どうやら違う様子。お婆さんは顔を顰めています。
「またですか。今日はどういうご用件ですか?」
「ああ? 寝ぼけてんじゃねぇぞババア。店畳む気になったかって訊きに来たんだよ」
「何度も言っているでしょう。うちは歴史があるんです。畳むつもりはありません」
「だからぁ、ババアの蔵ぁ潰して、代わりに新しいトーフの工場建てるだけだっつってんだろ。テメェでもうやってけねぇようになってんだから、よそに経営譲ってやるのが筋ってもんだろうが。ええ、コラ?」
突如現れた男は、お婆さん相手に凄みます。明らかに、真っ当な輩ではありません。
「ちょっと、そこの方」
私は男の肩をとんとん、と叩きつつ呼びかけます。
「ああん?」
そして男が睨みを効かせながらこちらを振り返ったと同時に拳を振り上げ、顔面に叩き込みます。
「がべッ!」
男は悲鳴を上げつつ、背中から倒れます。さすがに手加減はしてあるので、死ぬようなことはありません。せいぜい目が眩んで立ち上がれない程度のダメージでしょう。
「ああ、よかった。綺麗なお顔にハエが集っていたんですが、無事なようですね」
言いながら、倒れたままの男の胸ぐらを掴んで無理やり立ち上がらせます。
「まだ何か、用事はありますか?」
「い、いや。今日はもういい!」
私が笑顔で凄むと、男は本能的な恐怖を感じたのでしょう。そのまま慌てて逃げ帰るようにして店から出ていきます。
あまりにもの急展開について来れないのか、お婆さんはオロオロと私を、そして男の出ていった扉を交互に見回します。
「素晴らしい!」
そんな中、状況を静観していた金髪イケメンの男性が声を上げ、拍手喝采します。
「伝統あるトーフ蔵を守るため、武装した不審な輩に恐れることなく立ち向かうとは。お名前を伺ってもよろしいかな?」
「はあ。自分は乙木雄一という者ですが」
私が名乗ると、男性は何かに気付いたように顎に手を当てつつ言います。
「オトギユウイチ……というと、もしや近頃王都の方で話題の、魔道具店の方ですかな?」
「ええ、まあ。話題かどうかは分かりませんが、王都の方で魔道具店を営む乙木雄一なら、恐らく私のことかと思います」
「なんと! これは素晴らしい!」
金髪イケメンの男性はポンと手を叩いた後、被っていたフードを下ろします。
「申し遅れたが、私の名前はルーズヴェルト・フォン・ウェインズヴェール。この領都ウェインズヴェール、及び近隣一帯を治めている者だ」
そして、男性はまさかの名前を名乗り上げました。





