14 呼び出し、そして追放
ステータスの確認と記録が終わると、勇者たちは解散となりました。それぞれが部屋を与えられているらしく、謁見の間から自室へと戻っていきます。
そんな中、私だけは呼び止められ、謁見の間に残されました。
「さて、乙木君。おおよその事情はマルクリーヌから聞いた。お主は異世界転移の秘術に巻き込まれ、望まれてもいないのに女神様の領域へと至ってしまった。その罰として女神様から不要とされたスキルを与えられ、この世界へと落とされた。相違無いな?」
国王の言い方は、かなり悪意のある方向に捻じ曲げられています。さすがに、このまま頷くわけにはいきません。
「女神様のいる場所に至ったことは事実です。しかし、私が貰ったスキルは罰として与えられたわけではありません。この世界で生きる為の力として、女神様から正式に与えていただいたものです。確かに勇者様たちには不要なスキルでしょうが、何も持たない私のような者には必要でございます」
私がどうにか国王の発言に反論すると、国王は嫌そうに眉を顰めます。
やはりこの人は国王と呼びたくありませんね。ご年配の方です。それもたちの悪い方。
「ではこうしようではないか。勇者に不要なスキルを得たお主もまた、勇者にとっては不要な存在である。よってこの王宮から追放処分とし、今後勇者に近づくことを一切禁ずる。良いな?」
正直、かまいません。が、ここであっさり引くと不自然です。それにできれば、王宮でしか知ることの出来ない情報を少しでも多く集めておきたい。
いくらか反論を返しておきましょう。
「それは、困ります。私はまだこの世界のことを何も知らぬ身です。いきなり野に放り出されたとなれば、生きてゆける保証もありません」
「だが、生きてゆく為に女神様からスキルを授かったのだろう? 何の問題もあるまい」
確かに国王の言う通りです。女神様から貰ったスキルを罰でないと語るために言った言葉が仇となりました。
しかし、反論の材料はもう一つあります。
「女神様の意図が第一とおっしゃるのでしたら、この身が確かに勇者様と同じ場所、王宮へと送り届けられた事実も鑑みて頂きたい。それが女神様による慈悲の一つであるとすれば、嬉々として私を追い出すのは女神様への冒涜とも言えます。違いますか?」
この言い分は、正直半分以上が賭けに近いものです。この世界でどの程度、女神様が信仰されているのか。あるいは、女神様を祀る宗教団体がどれだけの力を持つのか。それによって、国王に対する牽制としての効果がまるで変わります。
私の言葉に迷いを抱いたらしく、国王は何人かの側近を呼び寄せ、耳元で囁くように相談を始めました。
そして数分の間を置いて、ようやく私の処遇が決まったようです。
「お主の主張も分かった。しかしやはり、お主のスキルが勇者様にとって不要であり、場合によっては害となる可能性も考えると、手厚く保護するというわけにもいかぬ。よって、追放処分は確定。しかし執行は一週間後とする。その間、お主にはマルクリーヌを監視役としてつけ、王宮での活動を許す。市井での生活手段を整えるなり何なり、自由にすると良い」
おおよそ、望んだ通りの展開です。ただ一週間という期限は少し短いですね。寝る間も惜しんで情報を集めなければいけなさそうです。
「感謝致します、国王陛下」
私は仰々しく、国王への感謝の意を示す為に頭を下げました。