07 鉄血スキルの応用方法
私は素早く戦闘中の場所へと駆けつけます。既に冒険者の男性は加勢しており、数体のオークを仕留めているようです。
「あんた、戦えるのか!」
どうやら私の方に気付いたようで、声を掛けてきます。
「オーク程度なら問題ありませんよ」
「なら頼む!」
そう言って、冒険者の男性は別の場所へと加勢に向かいます。
この場にはまだ三体のオークが残されていますが、それを任されたというわけです。
こちらは他に商隊の護衛が一名いますが、負傷していて十分な戦力とはいえません。どうやら、私の戦力はかなり大きく見積もられているようです。
まあ、実際はさらに大きく見積もる必要があるのですが。
「さて、手早く片付けましょう」
商隊に今のところは犠牲者らしい姿は見えませんが、時間の問題でもあります。素早くオークを始末してしまうに越したことはありません。
私は早速戦闘態勢に入ります。まずはスキル『疫病』で私の手の一部分に皮膚病を発症させます。すると、その部位のみが鬱血し、負傷します。血が出ることで、スキル『鉄血』の使用条件が満たされます。
今までも、戦闘で咄嗟に鉄血スキルを使う必要のある場面では、こうして疫病スキルを使い一瞬で血を流すことで対処してきました。今回もまた、素早い対応が求められるためこうして使っています。
戦闘態勢も整い、私はまず手近なオークに駆け寄ります。そして手をまるで鞭のように振り抜きながら鉄血スキルを発動。オリハルコンの刃を生み出しながらの一撃です。
単純に刃物を生み出しての攻撃も可能ですが、そこは工夫でさらに攻撃力を伸ばすことができます。今回、腕をしならせるのと同様に、生み出すオリハルコンの刃もしならせました。
鉄血スキルは自在に金属を吸収し、取り出しが可能なスキルです。この性質を生かして、金属の刃をしならせながら取り出す、という芸当をやってのけたわけです。
鞭打のような衝撃を伴った、オリハルコンの刃の一撃です。さらには斬撃の瞬間に鉄血スキルで刃を収納することで、ちょうど引き切りのような形になり、切れ味も増しています。
結果として、オークの身体は何の抵抗も無かったかのようにスパリと真っ二つになりました。
「なっ!」
私の背後で、商隊の護衛の方が驚いたような声を上げます。が、こちらとしては反応している時間も惜しいので次に取り掛かります。
仲間のオークが一瞬で殺されたのを見て、その場に居た残り二体のオークは激怒。間髪入れずに襲いかかってきます。
しかし、同時に襲われたとしても私の敵ではありません。片方をオリハルコンの刃で切り裂きつつ、もう片方はオリハルコンの大盾を生み出して攻撃を防ぎます。
ステータスに格差があるので、オークの一撃で私が体勢を崩すことはありません。そのまま大盾で押し返し、逆に体勢の崩れたオークをオリハルコンの刃で真っ二つにします。
「た、助かった」
「では、ここはよろしくおねがいします」
私は護衛の方の感謝の言葉も半ばに、次のオークを撃破するために駆け出します。
次々とオークを屠っていくと、一体の巨大なオークが姿を現します。
「群れのリーダー、でしょうか」
そう呟きながら、私は今までのオークと同様にオリハルコンの刃で攻撃を加えます。他のオークよりは良い反応で回避を試みたようですが、私の攻撃の方が早く、結局は真っ二つとなります。
「あ、あんた。強かったんだな」
冒険者の男性が、こちらへ寄ってきます。見ると、既に周囲のオークは全滅しており、残ったオークは敗走を開始して散り散りに逃げていきます。
既に勝敗は決したと思われるので、私は戦闘態勢を解除し、会話に応えます。
「ええまあ、一応は元冒険者ですので」
「そうだったのか。あの有名な魔道具店がなぁ」
驚いた様子で冒険者の男性が呟きますが、一方で納得もしている様子でした。冒険者が稼ぎを元手に一般の職業へと転職するのは珍しくもないため、それを加味してのことでしょう。
「にしても、ジェネラルオークを一撃ってのは相当だぞ。Aランク冒険者でも上位に入るんじゃないか?」
「そうですね。自分でも、それぐらいの実力があるとは自負しています」
「それで魔道具店を? 冒険者やった方が良かったんじゃないか?」
「いえいえ。Aランク冒険者よりも安全に、大金を稼いでますので」
「はぁ、そういうもんか」
「ええ、そういうものです」
こうして、冒険者の男性と雑談をしながら自分達の馬車へと戻ります。
そのついでで、この男性は冒険者としてはBランク上位、Aランク目前の実力者だということが分かったりもしたのですが、その後は引退後の選択肢についての話で盛り上がり、むしろ冒険者そのものに関する話題は出なかったりもしました。
そうして馬車に戻り、隊列の乱れた商隊が再出発の準備をするのを待っていると、商隊の護衛の代表者らしき人がこちらにやってきて、お礼とその気持ちとして金貨を数枚渡しに来てくれました。
これを遠慮せず受け取りつつ、ついでに何故オークに襲われたのかについても話を聞いてみると、原因も判明しました。
どうやら魔物を引き寄せるような品物を、十分な処置を施さずに運んでいた商人が居たそうなのです。それが原因で、森近くの街道を通った際にオークが引き寄せられ、街道のど真ん中で襲われる形になったのだとか。
そして、その原因とも言える商人は自分が運んでいた品物が原因と分かると、即座に一人で逃げ出したそうです。
恐らく、ここに来る途中ですれ違ったのがその商人なのでしょう。その話を護衛の代表者の方に伝えると、王都に到着すれば必ず報告し、その商人を捕まえると意気込んでいました。
とまあ、色々ありましたが、最後は何事もなく商隊の準備も終わり、塞がっていた道も空いた為、私たちもウェインズヴェールへと再出発しました。
商隊の方々から別れ際に再びお礼を言われつつの出発です。なぜか鼻高々に、有咲さんが笑みを零していたりもしましたが。その後は特に問題も無く、一日目の旅程を終了しました。





