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01 工場のあれこれ




 工場が、とうとう稼働開始しました。

 蓄光魔石が蓄えた魔力で付与魔法を施すという、単純な仕組みの工場ですが、既にいくつもの魔道具用のラインが完成しています。


 まず、一つが高周波ブレード用のラインです。といっても、流れは単純。規格に従って作られた金属板に、『貧乏ゆすり』と『ランディング』を順に付与するだけです。

 付与を確実に成功させるために、付与装置は業務用の食器用洗浄機のような形をしています。蓄光魔石が蓄えた魔力が供給され、付与装置の天板に施された魔法陣が起動します。


 そして天板の裏側には付与するスキルそのものを付与した『スキル板』が装着されています。『貧乏ゆすり』の場合は、それだけが付与された手のひらサイズの金属板です。

 このスキル板に付与されているスキルを、天板の下側にある物体に付与する、というのが付与装置の仕組みとなっています。

 この中に高周波ブレードの素材となる金属板を入れ、装置を起動すれば、十秒ほどで付与が完了します。


 その次に不良品検査。ちゃんと振動するか確認する必要があるので、検査用の柄に高周波ブレードを差し込み、起動。振動しているなら、次の工程へとブレードを流していきます。

 ちなみに、振動しないものは付与の工程に戻し、振動してすぐに壊れたものは廃棄品となります。


 振動の不良品検査が終われば、次はランディングの付与。別の付与装置でブレードにランディングを付与して、こちらも検査。

 ブレードを水平な状態で落下させ、下のスポンジへ垂直な状態でぶつかるようなら問題なし。

 これを三回ほど繰り返し、全て垂直に落下すれば問題なしとして次の工程に流します。ここでも、付与に失敗したものは再付与。壊れたものは廃棄という流れになっています。まあ、ここで廃棄になるブレードは皆無といっていいのですが。


 ランディングの付与も問題なければ、ようやく刃付けです。誰でも簡単に砥げるように『貧乏ゆすり』によって程よい速さで振動する砥石設置台を用意してあります。この台に砥石を設置し、魔道具として起動すれば、振動を開始します。

 そして振動する砥石で高周波ブレードを研ぎ、規格通りの位置に刃をつけて、完成です。


 このような魔道具制作のラインが、今は工場内にいくつもあります。

 高周波ブレードの場合は、柄と鞘も必要ですから、同じ建物のなかでそれぞれを作るラインもあるので、計三つのラインがあります。

 この建物を一号棟と呼んでいて、高周波ブレード用の作業のほとんどをここで済ませています。


 次に、二号棟と呼ばれる場所についてです。こちらでは、何かと消耗の激しい蓄光魔石を製造しています。

 魔力が空になったクズ魔石を冒険者ギルド等から引き取り、ここで付与装置を使い蓄光魔石に生まれ変わらせています。

 付与の終わった蓄光魔石は、一度屋外で陽に当て、魔力を補充してから不良検査を行います。というか、二号棟の敷地の三分の二ほどがこの魔力補充と不良検査の為に使われています。


 そして、三号棟では私の魔道具店でも使う魔道具の製造を行っています。

 まずは照明魔石。蓄光魔石に発光のスキルを付与するだけですので、こちらは非常に小さなラインで製造出来るのが良いですね。


 次に、耐刃ローブ。『形状記憶』に『衝撃吸収』、『耐刃』の三つを付与したものです。

 最近はローサさん達ローブ作り組の子たちの技術が上がり、おしゃれなローブが納品されてきます。一つ一つデザインや機能性にこだわりがあり、近頃の人気商品の一つです。

 軍に納品する分は別口で納品されるローブがあり、そちらは規格が揃ったものになっています。


 他には防護魔石や、携帯食料の保存容器も三号棟での生産品です。それほど数が必要なものではないので、どちらも手狭な範囲にラインがあり、付与装置のスキル板を差し替えて運用しています。


 四号棟では、食料品の製造をしています。具体的には防犯キャンディーと甘露餅の二つです。どちらも作るのが難しい食料品ではないので、四号棟の中で一から作って最後に付与を施しています。

 また、付与食品でない普通のお弁当もここで作っています。唐揚げ弁当やとんかつ弁当です。現状、お弁当の容器は店で回収して再利用する形になっていますので、数はそれほど多くありません。

 ですが、将来的には実際のコンビニと同様に、安価に大量生産可能な保存容器を開発して、より大量のお弁当を安価に提供できるようにするつもりです。


 そして、五号棟。ここで製造しているのは魔道具ではなく、高周波ブレード用の金属板です。

 ここには、金属板を大量に、しかも私が手伝わなくても形成できるようにする為の巨大な装置があります。


 具体的な仕組みとしては『鉄血』スキルの応用です。装置そのものがホムンクルスと呼ばれる魔法生物となっており、その内部を流れる疑似血液を介して鉄血スキルを使い、金属板を形成しています。


 元々、ホムンクルスはゴーレムと似た存在で、その違いは魔物であるか、それとも魔法で人為的に生み出したものであるかという部分にあります。

 そして、ホムンクルスは製造時に命令された通りの動作を繰り返す程度の知能しかありません。


 現在の魔法技術では、ゴーレムのように戦闘が可能なレベルで稼働できるホムンクルスは製造不可能となっています。

 しかし、簡単な動作の繰り返しであれば問題ありません。例えば、付与された『鉄血』のスキルを使い、金属を同じ形状で繰り返し生み出し続けることなどは造作もありません。


 そんなホムンクルスを使用して作り上げたものが、この五号棟の金属形成装置です。

 まず、冒険者ギルドに依頼を出して集めたアイアンゴーレムの素材を鉄血スキルで疑似血液に吸収します。これは、それ専用のホムンクルスが自動で行ってくれます。

 次に、この疑似血液が次の工程を行うホムンクルスの方へと流れていきます。


 この疑似血液を受け取った、形成担当のホムンクルスが、金属板を形成していきます。

 装置そのものをホムンクルス化しているからこそ、こうした疑似血液のやりとりが可能となっているわけです。


 ちなみに仕組みを考えたのは私ですが、細かい技術的な問題点はすべてシュリ君任せで作ってありますので、もしも壊れた時は直すことが出来ません。

 完全なブラックボックスなので、壊れないよう祈りながら日々運用しています。


 さて。こうして金属板の形成も完全に自動化出来てしまったので、私が工場でやることがほぼなくなりました。


 警備的な部分では、金浜組の勇者の誰かが毎日来てくれるので問題ありませんし。付与も鉄血スキルによる金属板の形成も自動化したとなれば、残るのは雇用や管理の問題のみ。

 そうした部分も、工場運営の為に雇ったパートタイムのおばちゃん達で最低限は可能な為、私が担当する必要がある部分は本当に少なくなっています。


 となれば、私はまた別のことに手を回すことが出来るわけです。

 まずはその為の準備をしましょう。

お久しぶりです。投稿を再開致します。

週二回程度のペースで投稿できるよう、頑張ります。



そして、投稿をお休みしている期間中に、当作品の書籍版の第二巻が発売されました。


挿絵(By みてみん)


こちらが二巻の表紙となっております。


本編側での告知が遅くなってしまいましたが、よろしければお手にとって頂ければ幸いです。

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マンガよもんが様にてコミカライズ連載中!
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― 新着の感想 ―
[一言] やっと、再開ですね! 毎週、楽しみにしてます。
[良い点] 更新お待ちしてましたっ!
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