13 他の者たちの素質
「Aが人間の限界で、Sがそれ以上ってことなら、ステータスの最大値はSなのか?」
金浜君は素朴な疑問を浮かべます。
「それについては、違うとお答えせねばなりませんな。人間の限界はAですが、魔物や魔族にはSやSS、つまりダブルエスといった能力を持った者がおります。さらには、歴史上にはSSSSS、つまりファイブエスという能力を持っていた龍が存在したという記録さえ残っております。よって上限はSではないのです」
記録担当の人の解説は為になりますね。ステータスはSになってもまだ伸びるということです。つまり、金浜君はまだまだ強くなる。そうなると、それこそファイブエスに到達してもおかしくないでしょう。
さすがはチートの中のチート。勇者スキルの持ち主です。
「金浜様だけではありませんぞ!」
盛り上がりに割り込むように、今度は別の記録担当の人が声を上げます。
「聖女三森様、剣聖東堂様、そして賢者松里家様も飛び抜けたステータスをお持ちのようですぞ!」
「ほう。三人とも、ステータスボードを拡大してくれぬか?」
傍観していた国王が急に口を開き、三人にお願いします。三人は頷きあって、ステータスボードを大きく拡大します。
私からも見える大きさになって、その凄さがよく確認できてしまいます。
【名前】三森沙織
【レベル】1
【筋力】A
【魔力】SS
【体力】A
【速力】A
【属性】光 水 治癒 支援 結界
【スキル】聖女
【名前】東堂陽太
【レベル】1
【筋力】SS
【魔力】A
【体力】S
【速力】S
【属性】闘気
【スキル】剣聖
【名前】松里家勇樹
【レベル】1
【筋力】A
【魔力】SS
【体力】A
【速力】A
【属性】炎 雷 大地 冷気 風
【スキル】賢者
三人のステータスも拡大されて、合計四枚のステータスボードが巨大化している状態です。誰もがその数値を目にして唖然としています。
これが勇者称号系スキルの力というわけです。圧倒的なステータス。そして、無数のスキルの効果が称号にはまとまっているのです。ここまでの違いを見せつけられたら、たとえ同じ勇者同士でも絶句する他無いでしょう。
けれどそんな中、不審な動きをする人影がありました。
有咲さんの友達であり、クラスの不良生徒の一人、野村浩一君です。
「おい、見ろよ! 金浜とは違う意味ですげえステータスのやつがいるぜ!」
野村君は言いながら、私を指差します。
確かに私のステータスは真逆の意味ですごいのでしょうけど。
「おいおっさん! お前のステータス見せてやれよ!」
「はぁ。まあ別にかまいませんが」
私は特に逆らうことも無く、ステータスボードに拡大、と念じます。するとステータスボードは金浜君たちと同じぐらいまで拡大されて、誰の目からも確認できるサイズになります。
そして、途端に勇者たちからあざ笑うような声が聞こえてきます。
「全部Gって何だよおっさん! おもしろすぎんだろバーカ、腹いてぇ!」
野村君はわざとらしいぐらい笑っています。確かに能力がGで揃っているのは面白いぐらいですが。そこまで笑うほどでしょうか?
しかしこれは、逆に都合がいいですね。
私の低すぎるステータスを見て、自信を過度に喪失していた子たちが元気を取り戻しています。自分より下の人間を見つけると、人は少しはマシな気分になるものです。
子供たちが変なストレスを感じていれば、そこから王国の人間に啓発、啓蒙されて洗脳されかねません。人を見下す形であっても、多少は元気のある今の方が安全でしょう。
それに、これだけ大々的にステータスの低さが露呈したのです。私は上手く行けば、王国の企みから逃れることが出来るかも知れません。
本当に、都合の良い展開になってきました。