24 コンクリ防壁、完成
女性陣から不評な強化コンクリですが、その性能は素晴らしいの一言に尽きます。どれぐらいかと言えば、高周波ブレードで切れない程度です。硬すぎて、切る前にブレードが折れてしまうのです。
これなら、生半可な魔物の爪や牙ぐらいなら容易く弾き返すことでしょう。
というわけで、強化コンクリートを鉄骨に流し込んでいきます。鉄血スキルで鉄骨の周囲に壁の型を作り、そこへ流し込んでいきます。完全に乾くまでは一日かかりますので、次々新しく型をとってはコンクリを流し込みます。
そうした単調作業と並行して、魔物除けの魔道具も設置していきます。防壁の外側に、蓄光魔石にスキル『加齢臭』を付与したものを埋め込みます。日光を浴びて貯めた魔力で異臭を放ち、魔物を追い払うという仕組みです。
なお、臭いに関してはひどすぎない程度に調整します。強すぎれば、魔物だけでなく従業員にもダメージがありますからね。鼻の効く魔物なら少し嫌がるだろう、という程度の臭いに設定してあります。
そうして防壁作りは順調に進みました。二週間ほどかけて、土地全体を覆う防壁は完成しました。と言っても、強化コンクリの壁にはところどころ隙間が存在します。型として置いてあった仕切りの分の隙間です。それを撤去した今、壁には無数の隙間が等間隔で並んでいます。
この隙間にも強化コンクリを流し込んで、ようやく完成です。
防壁の内側には階段をいくつか作り、壁の上に登れるような形にしてあります。そこから上に登り、壁の周囲を観察します。
見事に防壁は外部から魔物が侵入することを防いでくれています。加齢臭を放つ魔石の効果でそもそも魔物があまり近寄りません。そして、硬い壁があると分かった魔物はすごすごと引き返していきます。
「よし、これで計画通りですね」
私は結果に満足し、独り言を呟き何度も頷きます。
ここからの作業は、しばらくは単純なことばかりです。冒険者ギルドにも依頼を出して、まずは防壁の内側にいる魔物の駆除。そして荒れ放題の土地を整地していきます。岩や枯れ木、雑草を処分し、土地の凹凸を削ったり埋めたりで均していきます。
私は多くの力作業を冒険者の皆さんに頼んだまま、別の作業も続けていきます。
主に、高周波ブレードの開発です。魔道具としてはすでに仕上がっていますが、問題はライン作業で作り上げられるような構造を考えなければいけないという点です。
今の構造では、ほとんど手作業。スキルの付与だけが工業化という、工場を建ててまでやるようなことではありません。あまりにも、非効率的です。
というわけで、連日連夜、高周波ブレードの構造を考案しては試作します。
柄をいくつかのパーツによる組み立て式にすることで、パーツを作る労働者、組み立ての労働者で仕事を分担する予定です。
仕事を工程ごとに小さく分けることで、一つ一つの作業の品質と速度を上げるのにはそれが最も手っ取り早く、合理的です。完全に機械化するのは今の段階では夢のまた夢ですし、何よりコストが高すぎます。
現代日本でも、手作業による組み立てを必要とする製品が同様の手順で大量生産されています。これは、機械化の難易度や維持費、取り扱いの難しさなどが関係しています。
そうした要素を考えれば、現代日本より技術力、教養レベルの低いこの世界で、完全機械化された工場を作るのは到底不可能と言えます。
といったことを考えながら、より合理的な高周波ブレードの製造ラインについて考察していたある日のことです。
私の元に、魔道具店の方から厄介な連絡が届きました。
それは、なんと。
孤児院の子供達が、ダンジョンに潜っているという話だったのです。





