12 勇者の素質とおっさんの素質
「ステータスの確認は単純である。ステータスチェック、と念じればステータスが表記された『ステータスボード』が出現する。これに諸君の能力、レベル、スキル、他にも様々なことが表記されている。早速、確認してくれたまえ」
国王が言った途端、勇者たちは言われた通りのことを実行します。そして成功したらしく、全ての勇者たちの目の前に半透明の薄い板のようなものが出現しました。
板は浮遊しながら、勇者たちと適度な距離を保っています。そして板には、沢山の文字が書かれているようです。どうやらこれがステータスボードというものなのでしょう。
私も、早速試してみましょう。ステータスチェック。
【名前】乙木雄一
【レベル】1
【筋力】G
【魔力】G
【体力】G
【速力】G
【属性】なし
【スキル】ERROR
どうやら、あまり良くないのではないかと思えます。Gというのは、普通こういう表記の場合はかなり低い数値に使うものでしょう。下手をすれば、最低値です。
「では諸君。順番に担当の者が確認し、内容を記録していくので、そのままでしばらく待機してくれたまえ」
国王に言われたので、私も仕方なく酷いステータスを晒したままで立ち尽くします。
やがて、近くにいた担当の者らしき人が私のステータスボードを覗き込みます。そして眉を顰めて、手に持った紙にいろいろ記載していきます。
そうやって、多くの人の情報が記録されていきます。
これは正直、かなりヤバイのではないかと思います。この国はどうやら、完全に勇者を手中に収めたいらしいです。その能力でさえ管理し、把握しておこうというのでしょう。
戦争の道具として管理し、保管し、時に使用する。そんなことになれば、まさに兵器です。人間扱いではありません。
ステータスの記録は勇者たちの後方から順に始まったので、ようやく前の方に集まっている人の記録が始まりました。
つまり、勇者称号の四人の記録もです。
「こ、これはすごい! さすが真の勇者様!」
記録担当の人が、金浜君のステータスを覗いた瞬間に声を上げます。
「そ、そんなに凄いのか?」
「凄いに決まっています! どうぞ真の勇者、金浜様! 拡大と念じれば、ステータスボードは巨大化します。そのステータスをこの場で人々に知らしめて下され!」
「え、えっと、それじゃあ」
金浜君は目を瞑って念じたようです。次の瞬間、ステータスボードは巨大化します。最も後方にいる私でも文字が読める大きさでした。
【名前】金濱蛍一
【レベル】1
【筋力】S
【魔力】S
【体力】S
【速力】S
【属性】光 炎 治癒 闘気
【スキル】勇者
私とは大違いのようです。Sという表記は、こういうものだと最上級の数値を指す場合がほとんどです。
記録担当の人の驚き具合を見るに、私の推測は間違っていないでしょう。
「このSっていうのは、そんなに凄いのか?」
「もちろんですとも!」
金浜君が問いかけると、興奮した様子で記録担当の人が解説します。
「通常、人間はどのステータスにおいてもAが限界だと言われています。それがレベル1にもかかわらず、既にSへ到達しております。これはとんでもないことですぞ! しかも、属性は『なし』が普通であり、一つあれば魔法使いとして優秀、二つは天才、三つは奇跡とまで言われております! それを金浜様は一人で四つ! 奇跡を越えた奇跡でございます!」
記録担当の人の興奮した言葉のお蔭で、金浜君の凄さがよく分かりました。確かに、それだけ図抜けていれば興奮もするでしょう。
なにしろ、そんなとんでもない人間兵器を手にしてしまったのですからね。