22 オダ・スタイル
「マルクリーヌさん。もしもこの高周波ブレードを使用するのなら、これまでとは異なる用兵が必要になります。しかし、用兵のやり方によっては、折れたブレードを付け替える隙を埋めることも可能になります」
「ほう、それが本当でしたら、ぜひ教えてもらいたいものですが」
マルクリーヌさんが興味を示して下さったようなので、このまま一気に説明してしまいましょう。
「簡単なことです。隙が生まれるのであれば、それを補えばいいのです」
「補う? 高周波ブレードにはこれ以上のスキルが何か付与されていると?」
「いえ、そういう訳ではありません」
私は首を横に振ります。
「ではどうすると?」
「織田信長ですよ」
「はい? オダノ?」
マルクリーヌさんが首を傾げます。まあ、さすがに地球の戦国武将の話を理解しろ、というのは酷でしょう。詳しく解説します。
「私の世界に存在する、有名な騎士の話です。彼は強力な兵器を戦場に導入しましたが、威力は高いものの使用後に大きな隙を晒すものでした。そこでその隙を埋めるために、ある戦法を用いました」
「その戦法とは?」
「三段撃ち、と呼ばれるものです」
織田信長が導入した火縄銃と、その運用法。それこそまさに私が今回の高周波ブレードに応用しようとしているものです。
「仕組みは単純で、三人で一連の動作を繰り返すだけです。まず一人目が兵器を使用します。そして、そのまま他二人の後方に下がります。この間に、後ろに控えていた二人目が前に出て、兵器を使用します。二人目が兵器を使用したら、また他二人の後方に下がります。そして三人目が前にでて、兵器を使用します。これまでの間に、最初に後方へと下がっていた一人目が兵器の再使用の準備を済ませておきます。そうすると、三人目がまた後方へと下がる頃には、一人目がまた兵器を使用可能になっているわけです」
私の説明に、マルクリーヌさんは何度か頷き、そして答えます。
「なるほど。それと同じ運用方を、この高周波ブレードでも行えばよい、ということだな?」
「ご明察です」
本当に、理解が早くて助かります。
「高周波ブレードと織田信長の兵器では違いがありますから、完全に同じ運用ができるとは限りません。ですが、三人一組でブレードの付替えという隙をフォローするという発想は悪くないのではないかと思いますが、どうでしょう」
「ああ。そのオダ・スタイルで運用するなら兵士でも高周波ブレードを有効活用できるだろう。武器の威力、そして交代制による体力の温存を考えれば、なかなか実用的かもしれんな」
言いながら、マルクリーヌさんは何かを考え込み、そして意を決したように頷きました。
「よし! いいだろう、まずは試験運用から始めてみよう」
「ありがとうございます。では、武器についてはこの高周波ブレードを製造する方向で行かせてもらいます」
これで、一つ確実に売れるものが決定しました。
「ところで、乙木殿。今回持ち込んだサンプルはこの高周波ブレードだけなのか?」
「いえ、他にも幾つか用意させて頂きました。『形状記憶』に『衝撃吸収』、『耐刃』の三つのスキルを付与したローブは、既にご存じですね?」
「ああ、もちろんだ」
「こちらを大量生産して兵士の標準装備とすれば、剣と剣の戦いでほぼ敗北はありえなくなります」
私は言って、ボロ布ではない布で作ったローブを取り出します。
「このローブを、ひとまず耐刃ローブと呼びましょう。これに加えて私の魔道具店で売っている防護魔石と同じものも量産します。これら三点セットを標準装備とすれば、それだけで兵士の戦闘力は桁違いに跳ね上がります」
「なるほど。そうなれば、魔族との戦いにおいて、兵士達が受け持つ戦線が大きく有利に傾くだろう。これまでは防戦、撤退戦ばかり繰り広げていたが、これからは違ってくるだろうな」
マルクリーヌさんは、嬉しそうに頷きながら言います。
「よし、乙木殿。是非その方向で工場での生産を進めてくれ」
これで、マルクリーヌさんとの擦り合せも出来ました。帰ったら、早速工場の稼働目指して行動開始ですね。





