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20 武器交渉




 シュリ君と松里家君との話が終わった後は、マルクリーヌさんの所へと向かいます。

 というのも、せっかく会えるのですから、今のうちに私が工場で何を作り、どのように卸すのかについて話し合っておきたいのです。


「というわけで、相談に参りました」

「相変わらず突然なんだね、乙木殿は」


 マルクリーヌさんは、自分の執務室で席に座ったまま、溜息を吐きます。


「で、何の相談かな?」

「はい。私の工場でどのようなものを作ろうか、ということを考えておりまして」

「そんなもの、乙木殿が自分で考えればいいだろう?」


 眉を顰めるマルクリーヌさん。まあ、そういう反応も仕方ないでしょう。工場と直接関係があるわけではないのですから。


「ですが、どうせ軍に卸す武器を作るのですから、軍でより求められるものを作る方が合理的かと思いまして」

「ふむ、まあ一理あるな」


 言って、マルクリーヌさんは考えるような仕草を見せます。


「しかし、急に言われてもな。そもそも乙木殿がどの程度のものを作れるのかさえ分からぬ状況だ。こちらとしても答えようが無い」

「はい、そう仰られるかと思いまして、サンプルを幾つかお持ちしました」


 行って、私は収納袋から幾つかの魔道具を取り出します。


「まずはこちらの剣です」

「ふむ、見た所普通の剣だが」

「ええ。しかし魔力を流すと」


 言って、私は剣に魔力を流します。

 すると、剣は微細な振動を開始します。


「このように、微細な高速振動をするようになります」

「それに何の意味が?」

「このような意味が」


 そして私は指を少しだけ切り、傷口から『鉄血』スキルで鋼のインゴットを一つ生み出します。

 これを空中に投げ上げ、落下の軌道上に振動する刃を差し出します。すると、落下してきたインゴットは刃に接触した途端、豆腐のように綺麗な真っ二つとなりました。


「なるほど、理屈は分からんが良い切れ味だな」


 どうやら、マルクリーヌさんは意味を理解出来たようです。

 この剣には、私のスキル『貧乏ゆすり』が付与されています。その効果により、超高速振動する剣は最高の切れ味を発揮するようになります。


「しかし、騎士団では採用出来んな」


 そう言うと、マルクリーヌさんは次の瞬間、姿を消します。そう勘違いするほどの高等技術と身体能力で席を立ち、私の正面に立ったのです。

 そして高速振動する剣の根本を軽く叩きました。すると、途端に剣は根本からパキリと折れてしまいます。


「耐久性に難ありだ。騎士の剣がこうも容易く折れるようでは、文字通り『名折れ』というものだろう?」


 マルクリーヌさんに言われ、私は頷きます。


「確かに、騎士団では採用できないでしょう。そこで、この剣は『兵士』に支給すると良いかと考えているのですが」


 騎士と兵士。どちらも国の軍を構成する戦力ですが、それぞれ違いがあります。騎士は国が雇う常設軍であり、兵士は言わば民兵のようなもの。普段は普通の一般市民として生活していますが、国の要請に応じて徴兵される戦力です。

 ですので、基本的には騎士の方が兵士より強く、王都や主要都市など、重要な土地を守る為に配置されます。


 また、騎士と兵士では装備の質も違います。鎧も剣も騎士が装備するものの方が高価で、高性能です。

 それ故に、剣に求められる性能も全てが高水準になります。高速振動する剣なら、切れ味という点では合格でしょう。しかし、耐久面に問題があります。少し使っただけで壊れる剣には、継戦能力に大きな問題あり、と言えるでしょう。


 刃を頑丈にすれば継戦能力も改善出来るでしょう。しかし、巨大化で耐久面を強化すれば重量が大きくなりすぎ、取り回しに問題が発生します。金属の質を高めて改善すれば、武器としては完成しますが、高価すぎて騎士団全体に支給することが不可能となります。


「何を言っているんだ? 騎士にも支給できないものなら、兵士こそ支給することは不可能と言えるだろう」

「いえ、そうとも言えないんです」


 そう言って、私はもう一つ魔道具を取り出します。


「それを説明するために用意した試作品が、こちらです」

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